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異物除去方法
前回ご紹介したリパックについて思わぬ反応を頂きまして、その中で異物除去についてご興味をもたれた方がいらっしゃいましたので、今回は異物除去の一例についてご紹介したいと思います。
異物除去は機械で行われるのですか?
異物除去は機械と手作業の両方が使われます。リパックの時は手作業であることが多いかと思います。製造時は製造ライン上異物除去機を設置して異物除去を行います。
しかし前回お話した通り、異物除去機は最先端の工場であっても実装されていない工場があるほど、日本のように当たり前とはなっていません。
異物とは
異物というと髪の毛など他のものがパッと思いつくかと思いますが、例えばペットフードなら製造工程で大きくカットされてしまったり、形がおかしくなってしまうものもあります。焼ムラで色が変わってしまうこともあります。
こうした正常商品と形や色が違うものも異物として考えます。
異物除去機について
どういった機械で異物を除去しているのですか?
基本的にはフードがベルトコンベアで運ばれてきて、いったん宙を舞います(笑)ここでカメラやレーザーで異物を検知し、検知した異物を空気で弾き飛ばして除去します。
全くイメージがわかないです…(笑)
そうですよね。それでは図で説明したいと思います。
このような感じで製造されたペットフードがサイロから移動してきます。ベルトコンベアで運ばれてきたものを落とした時にカメラやレーザーで色、形、大きさを確認し、エアソーター(エアガン)でシュッ!と異物を弾きます。
落下中に撮影するのが主流らしい
絵では落下中に撮影していますが、カメラやレーザーの位置はコンベア上で撮影したりと、各社の仕様によって違うようです。
一見全てコンベア上で撮影した方がいいのでは?と思うかもしれませんが、コンベア上で撮影すると落下前、落下中に場所が変わる可能性があることから独自の技術が必要であったりします。
エアソーター(エアガン)で異物を弾く
空気で弾くんですか!?凄いですね!どれくらいの精度があるのか…
それなりに大型の機械で価格もしますから、もちろんある程度精度はあると思います(笑)それにこの異物除去方法は一般的に採用されていますので特別なものではないので安心して下さい。
ですが、どのような異物除去機にしても100%除去するということは無理であるようです。
Satake BELTUZA Optical Belt Sorter
こちらにSatake BELTUZA Optical Belt Sorterの参考動画を紹介しますので見てみてください。
日立造船 大量処理型色彩選別機
2011年の動画ですが、日立造船 大量処理型色彩選別機の動画です。どういうものか参考になるかと思います。
凄い仕組みですね!ピンポイントで狙っていくんですね!
こうした除去機はトウモロコシなど色違いの多いものの選別や、海藻にエビが含まれてしまうので除去するなど広く使われているものです。もちろん日本メーカーもありますし、各社違いがありますので、見てみると面白いですよ。
ロニーキャットフードの工場の異物除去機
弊社製品を製造している工場のラインのひとつでは、ペットフードの異物除去機としてハイクオリティな製品をリリースしているTOMRA製の異物除去機を使用しています。
日々調整、チューニングをしてロット毎に除去率の改善を行っています。
TOMRA NIMBUS
これらの精度をより高くしていけるように定期的に最新型を導入したり、アップデートが日々行われています。
2020.1追加 篩い分け異物除去システム
異物混入0%を目指すべく、サイロの下部に新たに篩い分けシステムを新しく設けてより除去率を上げています。
他の方法の除去機もある
この他にも重たいものはすぐに落ち、軽いものは上に飛ぶ重さを利用して、重量で選別したりと他の方法で異物除去を行う機械もあります。
工場の規模、自社かOEMか、産地による違い
異物除去機など技術的なものとは違うのですが、工場の規模による違いでも異物の量は変わってきます。
大型OEM工場の場合
大型の工場の場合は、製造機が非常に大きく、サイロや乾燥機も相当高い天井まである位の大きさを誇ります。
これらのラインは1製品を製造後に清掃が行われてから次の製品が作られますが、完全に前フードや原材料の残りを取り除くことが難しいため、最終的に異物除去機で異物を除去しています。
こうした大型工場では何十社、何百社が共同で複数のラインを使用していますので、異物除去機などの対策は行われていますが、自社製品とは全く関係のない粒が存在する可能性があります。
小型OEM工場の場合
小さい工場の場合はシステムも小さく、手作業で行う手作り的な工程を多く含みますので、目で見ることができる部分も多く、異物の取りこぼしが少ないです。また、異物があっても目視でも取り除くことができます。
また最低ロットも大型工場に比べれば少なく製造できますので、そうした意味でも前の製造物の粒や原材料が残る可能性は低くなります。
自社工場の場合
大型、小型に限らず、自社工場でも異物に関しては同じですが、混入する粒や原材料は全て自社の製品であることはポイントのひとつです。
この場合例え入っていてもどの製品でどんな成分のものであるかすぐ把握することができるためです。
OEM工場でも追跡できますのでわかりますが、一応同製品の違うシリーズの粒や原材料なら多少は安心感はあるのではないでしょうか。
日本の工場の場合
日本人は異物に対する反応がとても大きいため、日本の工場では世界一と言っていいほど異物に対する意識が高いです。このため国産のものはそうした安心感があると思います。
海外でも髪の毛などが入っていれば問題ですが、同じフードの混入などは捨てるだけという考え方が一般的です。こうしたことから海外では、日本人が異物へ過剰な反応を示すと認識し、日本向けは製造ラインを別にしていることもあります。
もちろん皆がみんなそうではないと思いますが、海外の方と日本人では考え方、感じ方が違うんですね!日本の品質はそういう部分にも表れているんですね。
日本の工場でももちろん大小があります。しかし現状は国内のエクストルーダーを持っている大型工場のラインには空きがなく、長期順番待ちの状態です。(私が問い合わせできた工場の情報なので、知らない工場では空きがある場所もあるかもしれません。)
このため、自動的に小型工場がターゲットとなるのですが、目の行き届きやすい工場の規模に相まって、日本人気質もあり、異物除去に関してはかなり精度が高いと感じています。
今後こうした分野はどんどん発展していきそうですね。
いずれにしても現在の技術では100%の異物除去が難しいため、各所で目視、手作業での異物除去を取り入れたり、異物除去機のチューニング、調整を行い、発生率改善の努力をしています。
こうした点は他の工業施設と同じく、ペットフード工場でも機械化、オートメーション化が進んでいますので、どんどん改善されていくかと思います。
こうした知識は製造を知らないとわからないのでとても貴重なお話でした!
まとめ
- 異物除去はカメラで解析後に空気で異物を弾き飛ばして除去する
- 他の方法もある
- 100%除去することは難しい
- 空気による異物除去機は穀物や海藻など、人用の食品でも使用され、ペットフードでもそれに合わせてチューニングが施されたものが使用される
- 異物除去機は海外製だけではなく日本製もある
- 日本は異物に非常に厳しい国だが、海外では必ずしもそうではなく、最新設備の整った大型ペットフード工場でも異物除去機の設置がないことは珍しくない
- 日本の異物除去の精度は高く、国産ではそうした安心感がある
異物除去の仕組みについて一例を紹介してもらいました。100%除去することは難しいそうですが、各社がこうした取り組みを行ってより精度が高いものが生まれることを期待します。
また、製造時から異物ができない管理体制、製造精度向上にも期待したいですね!