目次
高齢猫、シニア猫用のペットフードの誤解
私がロニーキャットフードを販売していることから、「ロニーは高齢猫、シニア猫にはタンパク質が多いんじゃないか?」という質問をいただくことがあります。
これら高齢猫、シニア猫に対して「タンパク質を抑えた方がいい」という質問に対しては一定の誤解があるということをご存じでしょうか。
私もそれとなくタンパク質を抑えた方がいいのかと思っていましたが、それが誤解なんですか?
タンパク質を抑えるというのは「老猫にとって必要な分を摂取する必要がある」という意味です。
これをかみ砕くと、成猫よりもタンパク質量を抑えた方がいいということになりますが、必ずしもフード自体のタンパク質が低い物を選んだ方がいいという意味ではありません。
そうだったんですか!?
人も動物も、その人、その時の状態に合った量を食べます
人でも猫でも犬でもどんな動物でも同じですが、体力が落ちたり、歳を重ねれば、自ずと食べる量が減っていきます。
だからといって不健康になったわけではありません。これは高齢だけの話のように感じるかも知れませんが、若い方でも高校生の時と20代の時では食事量が変わっているのではないでしょうか。
確かに…私も老いたとは思ってないですけど、高校生の時に比べたら確実に食べる量は減っていますね…でも健康です。むしろあの頃より太ってます…
運動環境や成長に必要なエネルギーなど、基本的には人も動物も、その人、その時の状態に合った量を食べます。
つまり、食事を変えなくても自分で量を調節することができます。
1. 年齢を重ねても食欲が落ちていない場合
わかりやすく人で例えると、年齢を重ねて脂っこいものが食べられなくなったけど、食欲自体は落ちていない場合。また、そもそも食欲が落ちていない場合。
こうした場合には無理して重たい食べ物を食べるよりも、軽めの食べ物を、適正栄養の範囲内で満足できる量を食べてもらった方がいいですよね。
猫も同じで、高齢になっても成猫時と比べてもよく食べ(余り変わらず)、元気な猫にはタンパク質や脂質が抑えめのフードが活躍します。
2. 食事量が減ってきている場合
歳を重ねて食事量が減ってきている場合、これを「残した」と感じてしまう飼い主がいます。
しかし、重要なのは残したことではなく、まずは猫に合った食事量を見つけてあげることです。
量が食べられないのであれば、高タンパク、適度な脂質のもので、少量でもしっかりと栄養が取れる食事を与える必要があります。運動量も考えると高脂質である必要はないかと思います。
1でも2でも摂取栄養素量には大きく違いはない
上記1と2の猫の場合、恐らく1の猫の方が体は良く動かすでしょうし、元気である可能性は高いので、1と2では必要な栄養素量に多少違いはでてきますが、どちらにしても基本的に必要な栄養素量に大きく違いはありません。
つまり、食べる量が減ってきている猫に、タンパク質を抑えたキャットフードを与えていては、栄養素量が足りず、余計に体が弱ってきます。
これらはどんな方でも受講可能なペット栄養管理士などの講義でも言われていることで、決して珍しい考え方ではないのですが、一般の方には「高齢猫、シニア猫にはタンパク質が抑えめなフードがいい」という情報だけが一人歩きしている事実があり、一定の誤解に繋がっていると考えられます。
高タンパク質は腎臓にダメージを与えるという話の誤解
「高タンパク質は腎臓にダメージを与える」ということもよく耳にしますが、これも話だけが先行してしまっていて、一定の誤解が生まれています。
あくまで基本的にはですが、必要なタンパク質であれば毒素は発生しません。過剰に摂取したタンパク質、つまり、使用されなかったタンパク質が分解されることで毒となります。ただどのように摂取しても100%活用されるということはないので、そこは理解が必要です。
必要なタンパク質を与えることが最も大切なことで、ただ単純に減らすことが大切ではないということを覚えておいてください。
便利に使える年齢別のフード。でもそれを選んだから大丈夫ということではない
ただし、そうした事実を知らなくても便利に使うことができるのが年齢別のフードです。
必ずしもそこまで考えずとも、愛猫と末永く暮らしていくためには非常に考えられた便利なフードであることは間違いありませんが、高齢猫用を選んだから大丈夫ということではないということ知って欲しいと思っています。
これを知っていれば、高タンパク質のキャットフードだから高齢猫、シニア猫には良くないという考えにはなりません。
その子の食事量や生活、その子自体の体質に合うか合わないかが最も大切なことです。
食事量や栄養素量の数値化よりもその子(猫)を見てあげて欲しい
数値は基準を作るために必要です。このため数値自体は悪くありませんし、なければ困ります。しかしそこにとらわれると大変なことになります。
”「袋に書いてあるので、あなたはこの量は食べないといけません」という生活を強要し、残したら、「好きじゃないようなので食事を変えよう」”
わかりやすくするために、やや悪意がある書き方になりましたが(笑)基本的にはこれが飼い主と猫の関係です。
- 食べれなくなってきて残してもその食事が好きな猫がいます
- 小食でも痩せない健康な猫がいます
- 凄く食べる時もあれば、全然手を付けない時もあります
- 余り好きではないけどそれなりに満足はしている猫もいます
- 嫌よ嫌よも好きのうちという猫もいます
食べることは非常に大切なことで優先すべきことですが、残さず食べることよりも大切なのは「心身共に健康であること」です。
これらのことをすぐ、例えば一週間程度で判断するというのは非常に難しく、変化を待てないということであり、猫自身も体や気持ちを合わせることができなくなってしまいます。
猫と食事、猫と飼い主の関係には「待つ」「様子を把握する」ということもとても大切な要素であることを覚えておくといいかもしれません。
猫も人も変化する生き物であるということを頭に入れておきたいところです。
まとめ
- 高齢猫、シニア猫にはタンパク質を抑えること自体が大切なのではなく、食欲や体調に合わせて必要な栄養素量を摂取できるようにしてあげる
- 猫と食事、飼い主の関係には「待つ」、「様子を把握する」ということが大切
- 食べることは優先すべき大切な事項ですが、残さず食べることよりも大切なのは「心身共に健康であること」
大切なのは「心身共に健康であること」。なんかグッときました。毎日一緒にいると変化がわかりにくいですし、猫はずっと可愛いのでなんとなく見落としがちですが、人も猫も変わるものだという認識をしっかり持つようにしたいと思います。