BHTの特徴
今回はペットフードに使用されることがある添加物のうち、BHTを取り上げようと思います。
BHTとはジブチルヒドロキシトルエンの略で、p-クレゾールとiso-ブチレンを化学的に合成してできる油溶性の芳香族化合物で、食品の酸化を遅らせて、色、臭い、味の変化を防ぐ効果があります。
BHTは水に溶けにくく油に溶けやすい「脂溶性」という特徴があります。ペットフードなどに含まれる動物性油脂等、ビタミンAやビタミンE及びカロテンは、種類によって多少の違いはあるものの基本的には酸化する性質があるので、BHTを使用することで酸化速度を遅くできるのです。
この理屈は食品だけでなく、油分を含むスキンケア化粧品やボディ、ハンドケア製品、日焼け止め、メイクアップ化粧品、洗浄製品、洗顔料、洗顔石鹸、ネイル製品にも同じことがいえます。
もともとBHTは石油の合成酸化防止剤として使用されていましたが、現在では次のような食品にも、風味や香りの悪化を遅くする目的等で使用されることがあります。
- バター
- 魚介乾製品
- 魚介塩蔵品
- 魚介冷凍品
- 鯨肉冷凍品
- チューインガム
- 乾燥裏ごしいも
BHTは安全なのか
BHTは変異原性があるとされており、さらに催奇形性の疑いもあることから食品に用いる酸化防止剤の多くはBHTからBHAに代用されています。
また、発がん性や、BHTとその代謝物であるTBHQ(tert-ブチルヒドロキノン)の染色体異常誘発性を心配する声も上がっていました。
BHTの発がん性について
懸念されている発がん性については、実験動物を用いた発がん性試験データにおいて有意な腫瘍の発生率を示したものは見当たらないとのことなので、現状のところ発がん性があるとする確たる根拠は乏しいといえます。
また、世界的に見ても下記機関においてBHTは発がん性の分類に記載されていません。
- IARC(国際がん研究機関)
- ACGIH(アメリカ産業衛生専門家会議)
- NTP(米国国家毒性プログラム)
- 日本産業衛生学会
- DFG(ドイツ研究振興協会)
酸化防止剤のペットフードとしての安全性
エトキシキン、BHA、 BHTなど酸化防止剤の上限値については、世界で次のような基準が設けられています。
- アメリカ:合計で200ppm(エトキシキンは150ppm、FDAアメリカ食品医薬品局では犬用75ppmを推奨)
- EU:合計で150ppm(犬用エトキシキンは100ppm)
これらに対して日本の上限値は、飼料安全法によると合計量150ppmで、犬用エトキシキンは75 ppmと設定されています。なお、この基準を満たしている飼料による家畜の健康被害の報告はないとのことです。
参考資料:愛がん動物用飼料の基準・規格案(pdf)
内閣府食品安全委員会事務局 平成 23 年度食品安全確保総合調査(pdfダウンロード)
まとめ
- BHTはジブチルヒドロキシトルエンの略
- p-クレゾールとiso-ブチレンを化学的に合成してできる油溶性の芳香族化合物
- 食品の酸化を遅らせて、色、臭い、味の変化を防ぐ
- BHTは変異原性、催奇形性の疑いがありBHAに代用
- 発がん性に関しては世界的に見ても各機関においてBHTは発がん性の分類に記載されていない
BHAに代用されたBHT。現在はほとんど使われていないかと思いますが、使われていたとしても上限値が設けられているということを知っておきましょう。