目次
メチオニンとは
メチオニンは必須アミノ酸のひとつで硫黄を含んだ含硫アミノ酸で疎水性のアミノ酸です。疎水性とは水に溶けにくく混ざりにくい性質のことです。メチオニンは動物性たんぱく質に多く含まれています。体内で作り出すことは難しい必須アミノ酸なので魚や肉などの食事から摂取します。
小麦などに含まれるグルテンにも含まれていますが、猫の場合はグレインフリーも多いのでグルテンから摂取することは少ないかもしれません。
メチオニンはグルタチオンや猫に必須のタウリンに変換されます。しかし猫は肝心のメチオニンとシスチンをタウリンに変換する酵素が不足しているため、結局食事からタウリンを摂取する必要があります。またメチオニンからシスチンを合成することもできますが、シスチンが十分に摂取されていればメチオニンはシスチンを合成するために使わなくてよくなるため、他の事に力を発揮することができます。
L-メチオニン(天然由来)とDL-メチオニン(合成由来)
メチオニンにはL-メチオニン(天然由来)とDL-メチオニン(合成)の2種類があります。
DL-メチオニンは飼料添加物として指定されています。これは人が食べる牛などの畜産に添加物として使用することができるということを表します。
人が摂取するものには厳しい基準が求められることから使用基準内の使用であれば安全が認められると考えられます。
L-メチオニンも飼料添加物としてアメリカ、EU、中国などで使用が認められています。日本では令和元年12月24日の飼料添加物の効果安全性について(案)の審議結果で飼料へ添加するこ
とが適当であると判断されました。
こうしたことからも飼料添加物ではDL-メチオニンの方が使用実績が多いため、基本的にペットフードでもDL-メチオニンが使用されています。
犬猫とメチオニン
DL-メチオニンはどのような効果があるんですか?
DL-メチオニンは犬猫の体内で代謝されて硫黄と分離し、尿のpHを下げることでストルバイト予防のペットフード療法食にも使用されます。
そもそも動物性タンパク質に多く含まれているので、肉食動物の場合は多くのメチオニンなどを摂取することで尿は酸性となっています。
それで野生の犬猫もストルバイトになりにくいようになっていたんですね!特に飼育下の猫はストルバイトになりやすいみたいですが、野良猫もそんなに尿路結石になっていたら尿毒症で死んでしまう猫が多発してしまいますよね。すると猫にとっての現代病みたいなものなんでしょうか…
そうなると飼育環境下の猫の食事が悪いように感じますが、決してそんなことはありません。
飼い猫の寿命は延びる一方です。ストルバイトは治療で治るもので、総合して食事(ペットフード)という面では犬猫の健康は年々改善されていっていると言っていいと思います。
尿路結石の療法食などに使用
メチオニンなどの含硫アミノ酸は硫黄を含んでいるため含硫といい、代謝されると硫酸が生じます。硫酸は尿に含まれて体外に排出される仕組みのため、尿を酸性に保つことができます。
尿路結石の原因となるストルバイトとシュウ酸カルシウムですが、これらは尿がアルカリ性に傾くことでできやすくなります。
肉食動物は肉を多く食べるため、含硫アミノ酸を豊富に摂取する傾向にあり、このおかげで尿が弱酸性となり尿路結石を防ぐ仕組みとなっています。
メチオニン、特にペットフードでよく使われるDL-メチオニンはこうした仕組みを利用して尿路結石を予防したり、療法食として治療の補助を行う目的でも添加されます。
被毛の健康維持
被毛の主成分であるケラチンになるため、犬猫の被毛の発達、健康維持が期待できます。
pHを下げる
上で紹介した、犬猫の尿を酸性化することでpHを下げる効果があります。
猫にはDL-メチオニンの摂取量に上限値がある
キャットフード・ドッグフードの規定に上限値がある原材料は少ないのですが、DL-メチオニンは猫の場合だけ上限値が設定されています。過剰摂取すると骨の脱灰、貧血を起こす可能性があります。
このため上限値が設定され、効果的といえる範囲内で使用されます。
療法食などでも使用されますので、もちろん使用を誤らなければ問題となることはなく、ペットフードにおいて過剰摂取が問題となることはないかと思います。
メチオニンを含む食材
動物性たんぱく質に多く含まれていますので、鶏肉、牛肉、豚肉、羊肉、卵、鰹、鰯、牛乳、チーズ、魚などに含まれています。植物性でも大豆や納豆、豆腐などにも含まれています。
全粒小麦などでも取り入れることができるので主食になり得る原材料に豊富に含まれているメチオニンは充足しやすい(不足しにくい)アミノ酸とも言えます。
しかしメチオニンはAAFCOの基準で猫にだけ上限値が設けられているため、猫用フードの手作りなどを行う際には過剰摂取に注意が必要です。
総合栄養食のペットフードを食べていて問題になるようなことはありません。
植物にも含まれているんですね!
メチオニンはアミノ酸ですのでタンパク質が含まれているものには含まれやすいのですが、とはいえタンパク質が豊富な大豆にはメチオニン含有量はそれほど多くなかったりしますので、イメージ通りというわけにはいきません。
メチオニンのペットフード含有量
AAFCOのドッグフードにおける基準値
栄養素 | 乾物ベース単位 | 成長期&妊娠期 最小値 | 成犬の維持期 最小値 |
メチオニン | % | 0.35 | 0.33 |
参考:2016_Midyear_Committee_Reports_w_cover (PDFファイル)
AAFCOの基準では子犬、妊娠期は0.35%以上、成犬の維持期は0.33%以上となっています。
AAFCOのキャットフードにおける基準値
栄養素 | 乾物ベース単位 | 成長期&妊娠期 最小値 | 成猫の維持期 最小値 | 上限値 |
メチオニン | % | 0.62 | 0.2 | 1.5 |
参考:2016_Midyear_Committee_Reports_w_cover (PDFファイル)
AAFCOの基準では子猫、妊娠期は0.62%以上、成猫の維持期は0.20%以上、上限値は1.5%となっています。
犬と猫を比べると成猫の成長期・妊娠期が最も必要量が多くなっています。
メチオニンを補給するサプリ
ストルバイトになりやすい場合はメチオニンサプリで尿を酸性にするといった方法を試してみる場合もあります。
キャットフード・ドッグフードに栄養添加物として含まれている場合もありますが、原材料からのみでプラスには含んでいないものがほとんどですので、気になることがあるときはサプリを併用してみるのもいいかもしれません。
ベッツワン DLメチオニン 猫用
顆粒タイプなので振りかけたり混ぜたりと与える方法を選ぶことができ、比較的使いやすいかと思います。
ドライだと見た目にバレますので匂いが強めの猫缶などに混ぜると与えやすいかもしれません。
ナトリウム含有量調整タイプなのですが、ナトリウムの%の記載がありません。製品は2g×30包入りで、1包あたり塩分1.26mgとありますので、0.00126gとして、ナトリウムではありませんが塩分換算だと0.00063%といったところでしょうか。
原材料 | イヌリン、デキストリン、かつお節粉末、カキエキス末、DL-メチオニン、香料、リン酸三カルシウム、(一部に乳成分を含む) |
成分 | 粗たん白質15.5%以上、粗脂肪0.5%以上、粗繊維質0.1%以下、粗灰分1.5%以下、水分4.0%以下 |
1包当たり | DL-メチオニン400mg、カキエキス末40mg、かつお節粉末100mg、イヌリン1050mg、塩分1.26mg |
サイペット クランベリーPlus DL-メチオニン 犬猫用
こちらも粉末ですが人の粉薬のような分包がされているタイプ。
用途は猫用に限らず、犬猫用となっています。原材料から考えると嗜好性としては犬に向いているかもしれませんが好き好きがありますので候補としてはいいのではないでしょうか。
原材料 | 乳清(ホエイ)、乳糖(ラクトース)、蔗糖、ビーフ風味(大豆タンパク加水分解)、レバー風味(豚肝臓粉末)、クランベリーパウダー、エキナシアパープレア粉末、DLーメチオニン、オレゴングレープの根粉末、アスコルビン酸ナトリウム(ビタミンC)、クランベリーエキス、大豆油、ビタミンE |
成分 | 粗タンパク18%以上、粗脂肪4%以上、粗繊維質3%以下、水分3%以下、粗灰分9%以下、ナトリウム2.3% |
まとめ
- DL-メチオニンは必須アミノ酸である
- 尿を酸性化する作用があるので尿路結石予防に使われる
- アミノ酸なのでタンパク質が含まれているものに含まれやすい
- 肉類に豊富に含むが魚や植物にも含まれる
猫は水分の補給も少なく尿路結石になりやすいですが、特になりやすい猫はDL-メチオニンで予防を考えてみるというのもひとつの方法となるかもしれません。