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まず始めに、令和、平成という時代に食品添加物が原因となる食中毒は発生していません
そうしたことが起こったのは食品化学が発達していない昭和の時代でその頃はまだ業界としても知識不足でした。
天然だから安全であるという信仰が強いのですが、実際には食中毒のほとんどは天然、自然の中に存在するなんらかの要因で発生しています。
反対に化学的なものでの食中毒はほとんど起きていません。起こった例としては例えば食器消毒のために塩素などを使用して、それが誤って摂取されたといったケースです。
これらを踏まえて考えていきたいと思います。
ジャガイモとミカンのビタミンCは同じもの?
※以下の話は天然、合成に限らず、製造で汚染が起こっていないことを前提とします。
添加物について天然がいいか合成がいいかは飼い主の関心が高い項目のひとつです。これについて現時点での私なりのアンサーを紹介したいと思います。
まずはビタミンCを例に挙げてみます。
ジャガイモにはビタミンCが豊富で芋類の中でも最も多いと言われています。特に新ジャガイモのにはビタミンCが更にたっぷり。その量はミカンにも匹敵すると言われています。ではジャガイモのビタミンCとミカンのビタミンCは同じものなのでしょうか?
うーん…同じものですかね?
ビタミンCとして分子構造が同じですから「全く同じもの」です。では合成ビタミンCはどうでしょうか。
天然と合成のビタミンCは同じもの?
分子の構造が同じなので、天然でも合成でも全く同じであり、機能が違うということはありません。
それでも天然と合成は違うという話は尽きませんよね。
そうした意見があるのであれば、どこでそうなるのか?ということです。
ミカンそのものに含まれるビタミンCと、ミカンから抽出した天然由来のビタミンC、合成のビタミンCの3つがあるとします。
当然全て化学式が同一であるのでビタミンCそのものの機能は同一です。しかし「若干違うもの」です。
どういうことですか?同じなのに違う…?
それは「ビタミンC以外の物質を摂取する」ことで「ビタミンC以外の物質が作用する」からです。
ミカンそのものに含まれるビタミンCはそのビタミンCを摂取するためにはミカンを摂取しなければいけません。ミカンから抽出したビタミンCにはその抽出によりビタミンC以外が完全に含まれていなければ合成のビタミンCと同一ですが、少しでも何か含まれていれば別のものと考えることができます。合成ビタミンCは化学式からも正確なビタミンCです。
ビタミンCだけを見れば同一ですが、それに付随して違う栄養素が含まれているので効果に違いが現れるということに繋がります。
天然と合成の添加物はどちらが良いのか?
安全性について
食品添加物においては1989年時点で天然と合成を分けることに合理性はないとされ、合成、人工の記載は必要がなくなりました。これには合成品は厳しい審査対象になった一方で、天然は十分な審査が行われず問題視されてきたことがきっかけです。
これによって天然、合成の区別なく、安全性が確認できたもののみを使用可能としました。
2019年の食品添加物表示制度に関する検討会では、人工や合成の文字は消費者の誤解を招く(天然の方が優れている、人工や合成の表示が天然より危険であるなような印象を与える)ことから削除が求められています。
天然でも問題があるものがあったとも聞こえますね。
その通りで天然だから安全というようには結びつきません。
天然、合成に区別なく審査が行われていますので安全性については区別はないものと考えます。
機能性について
機能的には全く同じですので、天然か合成かにはあまり意味はありません。それよりも他の栄養素とのバランスが重要です。
ここでもビタミンCを参考にしてみたいと思います。
ビタミンCは、活性酸素種を消去する強力なラジカル(遊離基捕捉剤)としての働きがあります。そのため、加齢性疾患の発症やその進行に抑制的に働くと考えられます。
上記のようにビタミンCは抗酸化作用、抗老化作用があると考えられています。
しかしこの抗酸化作用を期待する場合はビタミンE、コエンザイムQ10、リポ酸、グルタチオンの存在が欠かせないといいます。
ビタミンCは活性酸素・フリーラジカルと反応してその毒性を弱め、自身は反応性の低いフリーラジカル(酸化型)になりますが、これらもビタミンCやリポ酸によってもとの還元型抗酸化物質に再生されることが知られています。
つまり天然にしても合成にしても「完全なビタミンCだけ」を摂取してもその効果は弱く、他の栄養素と一緒になることで効果に差が現れてきます。
合成の場合はビタミンEなど相乗効果がある栄養素を配合することでより効果が期待できるようになってきます。
言いかえればミカンなどはバランスよくそうした状態が最初から作られているとも言えそうです。
それぞれ違う食品から同様のビタミンCを摂取したとしても、それぞれの食材にしか含まれていない栄養素もありますから、多数の食材を使用することにはメリットがあるといえます。
様々な原材料から同じ栄養素を摂取し、違う栄養素も摂取する
ビタミンCが豊富に含まれている野菜を確認してみましょう。
食品名 | 状態 | mg/100g |
---|---|---|
赤ピーマン/果実 | 生 | 170 |
めキャベツ/結球葉 | 生 | 160 |
ブロッコリー/花序 | 生 | 140 |
かぶ/葉 | 生 | 82 |
カリフラワー/花序 | 生 | 81 |
トウミョウ/茎葉 | 生 | 79 |
ホースラディシュ/根茎 | 生 | 73 |
ほうれんそう/葉/冬採り | 生 | 60 |
さやえんどう/若ざや | 生 | 60 |
スナップえんどう/若ざや | 生 | 43 |
西洋かぼちゃ/果実 | 生 | 43 |
キャベツ/結球葉 | 生 | 41 |
さつまいも/塊根/皮なし | 生 | 29 |
じゃがいも/塊茎/皮なし | 生 | 28 |
グリンピース | 生 | 19 |
チコリ/若芽 | 生 | 2 |
ひよこまめ/全粒 | ゆで/乾 | Tr/Tr |
参考:食品成分データベース
これをみてわかるように、上位の野菜はキャットフード・ドッグフードではほぼ使用されません。このように実はペットフードに使用できる食材でビタミンを多く含んでいる野菜は限られています。かつたくさん使用できる食材となると更に限定されてしまいます。
その多く使用できる食材の中でビタミンCが豊富なものがエンドウ、ジャガイモ、サツマイモあたりということになります。
それぞれの原材料から様々な栄養素を摂取することが大切
極端ですが、例えばジャガイモだけ多く使ってビタミンCを稼いではだめなのですか?
キャットフード・ドッグフードとしての完成品に十分なビタミンC量が含まれていれば問題はありません。
ジャガイモだけでビタミンCを賄うほど多く使用したことで、他の栄養素の供給源となる原材料を使うことができなくなったとしても、食品添加物を使用すれば、完成品としての栄養バランスは全く問題がないものが出来上がります。
しかし全ての栄養素を食品添加物で賄うわけではありません。食品添加物はあくまで製法上損失してしまいやすいビタミンなど栄養素を補填するものであって、それそのものに頼るべきものではありません。
また食べ物は栄養素のみではなく、食物繊維や食材そのものの香り、食感など栄養以外にも得られるものがあって初めて美味しい、楽しいといった感情が沸くものです。これらは食品添加物からは決して得られることのない部分であり、食材でしか提供ができない部分です。
キャットフード・ドッグフードはサプリではなく食事です。自然食で栄養を考え、足りないものを食品添加物で補うように考えるべきでしょう。
最後にこちらもご参考頂けましたらと思います。
まとめ
- 食品添加物は合成でも天然でも機能性は同じ
- 相乗効果のある栄養素と合わせて摂取することが大切
- 安全性は天然、合成の区別なく審査が行われており、合成や人工といった記載は行わない
- 現在では食品表示としても人工や合成という記載は人工や合成が天然より危険であるといった誤解を与える可能性があるため削除を求めている
天然でも合成でもそのものには差がないことがわかりました。天然か合成かよりも一緒に摂取する他の栄養素が重要で、相乗効果を考えた配合にすることが大切です。