犬の多くは乳糖を多く消化できない
昔はミルク(牛乳)を犬に与えていた時代もありましたが、現在では牛乳はどちらかといえば与えてはいけないものとされています。少しなら大丈夫なのですが、多く与えると下痢を起こしてしまいます。
下痢になる理由は、犬は牛乳中に含まれる乳糖を分解する酵素のラクターゼが少ないから。このラクターゼが少ないことが乳糖不耐症です。
人間も牛乳を飲むとお腹が緩くなってしまう人も同じ原理です。
ただし、哺乳類は全般的に乳児の時はラクターゼを多く持っており、徐々に減っていくことがわかっています。このため赤ちゃん、子犬で乳を飲んでいる間は問題がないものの、離乳するとラクターゼがぐっと減ってしまうため、乳糖不耐症になってしまうようです。
なぜ乳糖を分解できないと下痢になるのか
乳糖を分解できないとなぜ下痢になるのかを説明したいと思います。
ラクターゼが少ないことで乳糖が分解できないと、分解できなかった乳糖が消化管に残ってしまいます。乳糖は糖分なので水を引きつけます。消化管内に乳糖が多く残ると、乳糖が体の中から消化管内へと水分を引っ張り出してしまい、下痢が起こります。
乳糖不耐症による下痢で水分不足になるのは、このように体内から水分が引っ張り出されて体外に排出してしまっているからです。
これを浸透圧性下痢といいます。
乳糖不耐症じゃない犬もいるんですか?
乳糖を多く分解することのできる犬もいます。牛乳を与えてみてなんともない犬はラクトースを多く持っているかもしれません。
牛乳と犬乳の違い
牛乳には犬乳の2~3倍の乳糖が含まれています。これが乳糖不耐症による浸透圧性下痢を引き起こす理由です。
牛乳:タンパク質(29%)、脂質(28%)、乳糖など糖質(40%)、ミネラルなど(3%)
犬乳:タンパク質(33%)、脂質(42%)、乳糖など糖質(17%)、ミネラルなど(10%)
参考:飼い主のためのペットフード・ガイドライン(環境省)
犬乳には乳糖が少ない分、たんぱく質、脂質が多く含まれています。このため犬乳を牛乳で代用しようとすると下痢を引き起こすばかりでなく、低栄養で成長不良になる可能性があります。
ヨーグルトや乳製品はどうですか?
基本的にはヨーグルトも牛乳と同じ扱いです。チーズは犬が食べられるチーズも販売されていますが、そういったもの以外は基本的には牛乳と同じ扱いになります。
下痢の種類
乳糖不耐症による下痢を浸透圧性下痢といいますが、食あたりや食物アレルギーの場合は分泌性下痢、ストレスや暴飲暴食、冷えの場合は運動亢進性下痢といい、下痢のメカニズムが違っています。
浸透圧性下痢
乳糖不耐症が原因による下痢はこの浸透圧性下痢にあたりますが、この他にも砂糖の取り過ぎやサプリメントなどでも起こります。
分泌性下痢
食あたりや水あたり、食物アレルギーの場合は、体内(消化管内など)に細菌などによる炎症が起こります。これを修復しようと分泌液が大量に出ることで下痢を引き起こします。
運動亢進性下痢
ストレスや暴飲暴食、冷えの場合は、それらを理由に腸管の運動が高まり、動きが活発になることで便の通過が早く、便から水分を十分に消化吸収できないことで下痢を引き起こします。
まとめ
- 多くの犬はラクトースが少なく乳糖不耐症
- 牛乳に多く含まれる乳糖を分解しきれない
- 牛乳と犬乳では乳糖の含有量が違い、同じものとして考えてはいけない
- 哺乳類は基本的に乳児の時に乳糖を分解するラクターゼを豊富に持っており、離乳すると急激に減ってしまう
- 乳糖による下痢は浸透圧性下痢という
犬に牛乳を与えて下痢になってしまった場合は水分を良く取らせて脱水症状を防ぐように務めましょう。牛乳での下痢であれば体内の消化管から乳糖が全て排出されれば収まるようです。