目次
ビタミンAとは
ビタミンA(Vitamin A)はレチノールともいい、脂溶性ビタミンのひとつです。
動物性飼料にはレチノールやレチニルエステル(脂肪酸エステル)を含んでいます。
植物性飼料には動物の体内でレチノールに変わる可能性のある前駆物質のプロビタミンA(カロテン)などを含んでいます。
主な供給源としては乳脂、肝油、肝油、鶏卵、肝臓などがあります。
ビタミンAやプロビタミンAは酸化されやすく、添加する場合にはカプセル化や抗酸化剤を一緒に添加します。
ビタミンAの働きは?
ビタミンAは目や健康維持や粘膜を守ったり、骨や皮膚の代謝、抵抗力を強める働きがあります。夜盲症を防ぎ、暗いところで視力を保つ働くもあります。
ビタミンAの吸収と輸送
動物性のレチノールはそのまま吸収でき、レチニルエステルは消化管内でレチノールに変化し吸収することができます。
しかし植物性のプロビタミンAの場合は犬と猫でその状況がわかれます。
犬の場合
犬ではプロビタミンAを消化管細胞内でレチノールに変化することができます。
このためNRC飼養標準(2006)での犬のビタミンA推奨量はβカロテン量が加味されたレチノール当量として記載されています。
猫の場合
猫はレチノールに変化させる酵素活性が非常に低いため、プロビタミンAからレチノールをほとんど作り出すことができません。このためレチノールはレチニルエステルを与える必要があります。
キャットフードでは肉類などの動物性原材料が多い方が適している理由のひとつです。
このためNRC飼養標準(2006)での猫のビタミンA推奨量はレチノール当量として記載されています。
ビタミンAの主な機能、欠乏症
ビタミン | 機能 | 欠乏症 | おもな給源 |
---|---|---|---|
ビタミンA | 視覚・粘膜機能維持、成長、細胞分化・機能維持、骨代謝維持 | 夜盲症、眼球乾燥症、網膜の変性、粗毛、皮膚障害、脳脊髄圧上昇、腎炎、骨強度低下、食欲不振、体重減少、虚弱、免疫機能低下 | 乳脂、肝油、鶏卵、肝臓 |
参考:ペット栄養管理学テキストブック
ビタミンAはレチニルエステルとして肝臓に蓄積されるため、摂取しなかったからといってすぐに欠乏症になるようなことはありません。しかし貯蔵分が底をつけば欠乏症を生じます。
夜盲症、眼球乾燥症、皮膚障害が代表的な欠乏症です。
ビタミンAは脂溶性ビタミンのため、脂質と同時に摂取すると吸収率が高まります。その他ビタミンEや抗酸化剤も吸収率を高めます。
しかしペクチンなどの水溶性食物繊維はビタミンAの吸収を抑制してしまいます。
ビタミンAの過剰摂取による中毒
ビタミンAは犬猫に限らず動物で起こり得ます。
自然な骨折、骨の奇形、皮膚の肥大や角質化、赤血球減少、結膜炎、腸炎、肝臓機能低下、腎臓機能低下、食欲不振などがあり、どちらかというと犬はビタミンA中毒にかかりやすいと言われています。
ビタミンAの摂取量について
下記の表をご覧下さい。ビタミンAは珍しく最大値が設定された栄養素です。
AAFCO 2016 ドライキャットフードのビタミンA
栄養 | 単位 | 子猫・成長期 最小値 | 成猫 最小値 | 最大値 |
---|---|---|---|---|
ビタミンA | IU/kg | 6668 | 3332 | 333300 |
ペットフード公正取引協議会が採用している栄養基準を定めているAAFCO 2016のキャットフードの基準を確認するとビタミンAの最小値は子猫・成長期が6,667IU/kg、成猫期は3,332IU/kg、最大値は333,300 IU/kgとなっています。
AAFCO 2016 ドライドッグフードのビタミンA
栄養 | 単位 | 子猫・成長期 最小値 | 成猫 最小値 | 最大値 |
---|---|---|---|---|
ビタミンA | IU/kg | 5000 | 5000 | 250000 |
ペットフード公正取引協議会が採用している栄養基準を定めているAAFCO 2016のドッグフードの基準を確認するとビタミンAの最小値は5,000 IU/kg、最大値は250,000 IU/kgとなっています。
まとめ
- ビタミンAは脂溶性ビタミンであり、脂質と一緒に摂取すると吸収率が高まる
- 犬はプロビタミンA(βカロテン)からビタミンA(レチノール)を作りやすいが、猫は苦手
- ビタミンAは酸化されやすく、添加の場合はカプセル化や酸化防止剤と一緒に用いられる
- ビタミンAには欠乏症とともに、多くの動物で過剰症があり、犬はビタミンA中毒にかかりやすい
- ビタミンAは視力や粘膜、毛並みに影響する
多くの動物でビタミンA中毒があることに驚きました。過剰症の症状も多いですし、以下に多くの影響を与えているかがわかります。