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アルギニン(Arginine)とは
アルギニンは必須アミノ酸です。アミノ酸はどれも似た働きをするものが多い印象があるかと思いますが、アルギニンはアンモニアを尿素に変換して排出する回路の中間体となり、大変重要な役割を担っています。
その他にも代謝時に出る一酸化窒素が心臓病などにも有益であると考えられています。
アンモニアを尿素に変換するアルギニン
アルギニンは有毒であるアンモニアを無毒な尿素に変換する回路の中間体です。中間体とは目標とする化合物までに複数段階の合成を繰り返す途中の化合物のことです。
このためもしアルギニンが不足した場合には高アンモニア血症になってしまいます。
特に猫で重篤な症状になりやすい
高たんぱくな食事にはアルギニンが豊富に含まれている傾向にありますので、総合栄養食を食べていて欠乏することは考えにくいことです。しかし特に猫の場合ではアルギニンを全く含まないフードを与えた場合、1時間以内に高アンモニア血症を生じるともされています。猫の方がより重症になりやすく、2~5時間後には死に至る場合もあります。
また先天的な理由や肝不全などでも起こるため、必ず原因がアルギニン不足とはいえません。
アルギニン代謝時にできる一酸化窒素の有用性
アルギニンは一酸化窒素の前駆体で、代謝される時に一酸化窒素ができます。一酸化窒素は血管を拡張させる働きや、腫瘍の成長を妨げる働きがあります。
癌に効果的なアルギニン
がんとアルギニンに関する情報は多く、腫瘍細胞の成長や転移を抑制するだけでなく、創傷治療も促進します。齧歯類ではアルギニンの非経口摂取で癌の成長率や転移率が減少したことも確認されています。
アルギニンを含む食材
アルギニンは大豆、牛肉、鶏肉、卵、うなぎ、ニンニクなどに多いことがわかっています。
下記の表では大豆や小麦胚芽に含まれているようにみえますが、100gあたりの含有量ですので、実際に食べる量となるとやはりよく食べる肉類に豊富であることがわかります。
食品 | アルギニン(mg/100g) |
---|---|
全粒 黄大豆 国産 | 2,900 |
小麦はいが | 2,800 |
そらまめ 全粒 乾 | 2,400 |
ひよこ豆 | 1,900 |
若鶏 ささみ 生 | 1,600 |
若鶏胸 皮なし 生 | 1,500 |
あずき 全粒 乾 | 1,400 |
牛もも 赤肉 生 | 1,400 |
豚肩ロース 赤肉 生 | 1,300 |
真鯵 皮なし 生 | 1,200 |
あゆ 天然 生 | 1,100 |
うなぎ 養殖 生 | 1,100 |
めかじき 生 | 1,100 |
牛肩ロース 赤肉 生 | 1,100 |
豚もも 赤肉 生 | 920 |
オートミール | 910 |
鶏卵 全卵 生 | 840 |
参考:食品成分表2022(八訂)
アルギニンのペットフード含有量
AAFCOのドッグフードにおける基準値
AAFCO DOG FOOD NUTRIENT PROFILES BASED ON DRY MATTER
栄養素 | 乾物ベース単位 | 成長期&妊娠期 最小値 | 成犬の維持期 最小値 |
アルギニン | % | 1.0 | 0.51 |
参考:AAFCO DOG FOOD NUTRIENT PROFILES(PDF)
AAFCOの基準では子犬、妊娠期は1.0%以上、成犬の維持期は0.51%以上となっています。
AAFCOのキャットフードにおける基準値
AAFCO CAT FOOD NUTRIENT PROFILES BASED ON DRY MATTER
栄養素 | 乾物ベース単位 | 成長期&妊娠期 最小値 | 成猫の維持期 最小値 |
アルギニン | % | 1.24 | 1.04 |
参考:AAFCO CAT FOOD NUTRIENT PROFILES(PDF)
AAFCOの基準では子猫、妊娠期は1.24%以上、成猫の維持期は1.04%以上となっています。
まとめ
- アルギニンはアンモニアを尿素に変換する
- 欠乏すると猫で高アンモニア血症を生じやすい
- 一酸化窒素は血管を拡張したり、腫瘍の成長を妨げる働きがある
特に猫にとってアルギニン不足は重篤になりやすく注意が必要です。とはいえ総合栄養食のペットフードを食べていれば問題になることはないと思います。がん治療などでも有効性が示されているので普段から摂取することを心掛けてもいいかもしれませんね。