最近は冷凍ペットフードも増えてきました。
私はもうひとつの会社でフレッシュペットフードの製造・レシピ開発も行っており、小規模ですが急速凍結設備も揃えています。
「冷凍してしまうならなんでも一緒なんじゃないの?」という疑問のひとつとして冷凍技術についてお話ししてみたいと思います。
目次
冷凍方法
冷凍庫はマイナス18℃が基本です。一般家庭の場合は凍らせたいものを冷凍庫に入れて凍結します。
しかし冷凍庫ではゆっくりと冷凍されるため、細胞内の水分が大きく凍り、細胞を飛び出して細胞を壊してしまい、味や色の劣化に繋がります。
これを少しでも抑える技術が急速凍結です。
急速”冷凍”じゃないんですか?
急速”冷凍”でも良いのですが、厳密には急速”凍結”というそうです。
最近は冷凍ペットフードも増えてきましたので、このあたりの技術についても学んでいきたいと思います。
エアブラスト
最もポピュラーな急速凍結方法で、エアブラストという方法を用いています。気体冷却とも呼ばれ、冷風を吹き付けてマイナス20℃まで急速凍結します。冷凍庫よりも早く凍結するため、素材の水分や色抜けを防ぎ、本来の状態を保ちます。
風で凍らすため、商品の状態にはあまり影響せず、鶏肉や野菜、フルーツなどをそのまま凍らせたり、ケーキなどのお菓子を凍らせることもできます。
バッチ式:ショックフリーザー
バッチ式のショックフリーザーは食品をのせたトレーを冷凍庫内に入れて、中で冷風を吹き付けて急速凍結します。
飲食店の通販でも使用できる程度の大きさのものもあり、入れておくだけで凍りますので、手間もかからず小さな現場でもよく利用されています。
最も小型で安いもので100万円弱で購入できます。一般家庭と同じ100V電源で動く製品もあります。
ブラストチラー
ショックフリーザーにはブラストチラーという機能を兼ね備えたものがほとんどで、ブラストチラーは90℃くらいの熱い食材を3℃くらいまで急速冷却します。こうすることで菌が繁殖する温度帯を一気に通過することができ、食の安全性、食中毒のリスクを減らします。
私はフレッシュペットフードの製造・レシピ開発を行う会社も行っておりますので、そちらではブラストチラー・ショックフリーザーを設置しています。弊社の場合はマイナス40度の風で急速凍結を行います。
トンネルフリーザー
トンネルフリーザーはショックフリーザーよりも大型のもので、ベルトコンベアなどに食品を置いてトンネル内を通過させます。
トンネル内で冷風を食品に吹き付けることでトンネルを出た時には商品が凍っている状態になっています。
大型食品工場などで使用されています。弊社協力冷凍倉庫ではトンネルフリーザーも設置しています。
ブライン
最近とても話題になっているアルコール急速冷凍などの液体を使用した急速冷凍を行う方法です。液体冷却とも言われ、低温でも凍らないアルコールなどを冷却し、その中にパウチした食品を入れることで冷凍します。
冷風よりも液体の方が直接食品に触れるので冷凍速度が早く、食品の状態がより保たれます。
デメリットもあります。基本的にはパウチしたものでなければ利用出来ないため、食品をそのままや、ケーキなどの加工品は凍らせることができません。
またひとつひとつは凍るのが早いですが、大量に凍らせたい場合は商品を出したり入れたりし続けなければいけないところが大変です。最も小さい機種で1~3kg/時間位しか冷凍することができません。10kg冷凍しようとすると3~4時間かかる上にひとりがつきっきりになってしまいますので、機種に見合った量を見極める必要があります。
アルコール急速冷凍機
テクニカン社の凍眠シリーズやTOEI社のリ・ジョイスフリーザーが有名です。
特に個人経営の飲食店など小さな店舗で、通販をアルコール急速冷凍機で行いたいという場合にはこの二択で、凍眠ミニかリ・ジョイスフリーザーRF1が選択肢になってくるかと思います。
ただ価格は安くなく、100万円台前半だったものが、2023年時点で100万円台半ばから後半に値上がってきています。
弊社の協力キッチンでは大型のアルコール急速凍結機を設置しています。
液化ガス
超低温で沸騰した液化ガスを吹き付けて凍らせます。
コストも高いため、ポピュラーではありませんが、構造がシンプルのため、コンパクトにでき、洗浄もしやすく、壊れにくいというメリットがあります。
しかし余りにも低温のため凍傷や爆発の事故に注意する必要があります。
冷凍の弱点
冷凍は鮮度が保て、しっかりと冷凍保管することで賞味期限も長くなり、メリットが大きい加工方法です。
しかしデメリットもあります。
食材を選ぶ
例えば生の野菜やフルーツは冷凍して解凍すると酵素分解が起こり、酵素の働きで水気が出て柔らかくなってしまいます。
どんな食材でも冷凍に合うわけではないという点には注意が必要です。
賞味期限は思ったより長くない
事実上半永久的に持つようなイメージのある冷凍商品ですが、水分が抜けてしまいます。マイナス18℃以下を保っていれば実際食べることはできるかと思いますが、美味しいかという観点ではそうもいきません。
そして冷凍はマイナス18℃を保つことが前提になっています。
しかし家庭用冷凍庫の場合は開け閉めがあります。するとマイナス18℃以上になる時間が増えてしまい、劣化していきます。
更に家庭用の冷凍庫では自動霜取り機能があるものがほとんどですので、冷凍庫内の霜を取る度にコンプレッサーが止まって温度が上がっています。
このため、賞味期限が1年位あったとしても、家庭用の冷凍庫で保管するようになったら2~3ヶ月で使い切るようにしましょう。
珍しくなくなった冷凍フレッシュペットフード
冷凍技術が向上したことで冷凍食品の品質も上がり、低価格の冷凍機器も出てきたことで冷凍フレッシュペットフードの販売も活発になってきました。
今の急速凍結した冷凍ペットフードは作りたての状態と大きな違いはなく、香りも重要となる犬猫でもよく食べるようになってきています。
更に急速凍結機の小型化によって、個人経営のペットフードショップでも冷凍ペットフードを作ることができるようになりました。
同じような冷凍ペットフードでも冷凍技術によって仕上がりが変わりますので、こういった点に注目してみるのも面白いと思います。