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必ずしも食べ物だけが犬猫の体調を左右するわけではないという事実を知っておこう
愛する犬猫が湿疹が治らない、具合が悪そうなど様々な症状を訴えた時、最初に気になる部分は食事です。アレルギーなどが考えられますのでキャットフード、ドッグフードの改善から行うかと思います。
しかしながらその気持ちが強すぎてその他の原因を見逃すことになりがちですので、生活の中で影響を受けやすい科学物質についてお話したいと思います。
ハウスダストで蓄積する化学物質
カーテンや壁紙などに含まれるポリ臭化ジフェニルエーテル
ポリ臭化字フェニルエーテル(PBDEs)はプラスチックなどを燃えにくくする難燃性の工業化学物質です。家電製品や家具に使用されています。
過去30年に渡り使用されてきたPBDEsは熱や光によって毒性があるダイオキシン類を二次生成することが明らかとなっています。
しかしながら多くの製品に使用されてきたこともあり、カーテンや壁紙、ソファなどにも含まれているため、人や動物は室内空気やハウスダストなどから暴露しやすく、脂溶性のため体内に蓄積されていることが問題視されてきています。
参考:香港食物環境衛生署食物安全センター、「第1回トータルダイエットスタディ報告書(第3報):ポリ臭化ジフェニルエーテル類(PBDEs)」を公表
犬猫は特に吸引しやすいハウスダスト
人間や犬猫の体温は一般的に空気・大気よりも温かいため、温度の低い床から人や犬猫の体に沿って上昇気流が起こります。
人や犬猫は、呼吸する際に取り込む空気の1/3は鼻周辺の空気で、2/3が床周辺の空気になるという報告もあり、一定量のハウスダストを吸引していることがわかっています。
特に犬猫は床に近く、より吸引するリスクが高く、有害物質が蓄積しやすい状況であるということになります。
有害化学物質による症状
有害な化学物質が少しずつ体内に蓄積し、長期間経過すると、ホルモン作用への影響、発がんに加担、炎症など様々な症状の原因になることが指摘されています。
しかも人間よりも犬や猫の方が高濃度の化学物質が検出された結果もあります。
上記で紹介したポリ臭素化ジフェニルエーテルの他にもフライパンのテフロン加工などで使用されるフッ素樹脂・パーフルオロ化合物や、家電製品に使用されるフタル酸エステルなどもあり、暮らしの中には多くの化学物質が存在しています。
空気中に舞う食器用洗剤
ひとつの例ですが、わかりやすいもののひとつに食器用洗剤があります。
食器を洗った後にわずかに残った食器用洗剤が食事に移り、それを食べて体内に吸収されます。また洗っている際に空中に舞うことで吸引し、体内に吸収されます。
このように大気中に含まれる化学物質を避けることは難しく、長年の生活によって少しずつ取り込んでいくということになります。
暮らしているだけで化学物質が溜まっていくということですね…
新築で起こるシックハウス症候群
よくいわれるものの一つに、新築住宅で起こるシックハウス症候群があります。
これは建材や家具に含まれている有害な化学物質を吸い込むと起こる症状で、頭痛や鼻水、咳、蕁麻疹、湿疹、かゆみ、吐き気、めまい、倦怠感などがあります。
2003年の改正建築基準法でシックハウス規制法が制定され、ホルムアルデヒドを発散する建材の使用量規制、24時間換気システムの導入義務、クロルピリホスの使用禁止などが行われるようになったことで少なからず減少傾向にありますが、今でもこうしたシックハウス対策に配慮し売りにしている新築があります。
そしてこれらは犬猫でも同様の被害が報告されています。
住むだけで化学物質が…もう逃げられませんね…
室内濃度指針値の概要
化学物質 | 室内濃度指針値 | 主な用途 |
---|---|---|
ホルムアルデヒド | 100μg/㎡ (0.08ppm) | 合板、パーティクルボード、壁紙用接着剤等に用いられるユリア系、メラミン系、フェノール系等の合成樹脂、接着剤、一部ののり等の防腐剤 |
アセトアルデヒド | 48μg/㎡ (0.03ppm) | ホルムアルデヒド同様一部の接着剤、防腐剤等 |
トルエン | 260μg/㎡ (0.07ppm) | 内装材等の施工用接着剤、塗料等 |
キシレン | 200μg/㎡ (0.05ppm) | 内装材等の施工用接着剤、塗料等 |
エチルベンゼン | 3800μg/㎡ (0.88ppm) | 内装材等の施工用接着剤、塗料等 |
スチレン | 220μg/㎡ (0.05ppm) | ポリスチレン樹脂等を使用した断熱材料 |
パラジクロロベンゼン | 240μg/㎡ (0.04ppm) | 衣類の防虫剤、トイレの芳香剤等 |
テトラデカン | 330μg/㎡ (0.04ppm) | 灯油、塗料等の溶剤 |
クロルピリホス | 1μg/㎡ (0.07ppb) | しろあり駆除剤 |
フェノブカルブ | 33μg/㎡ (3.8ppb) | しろあり駆除剤 |
ダイアジノン | 0.29μg/㎡ (0.02ppb) | 殺虫剤 |
フタル酸ジ-n-ブチル | 17μg/㎡ (1.5ppb) | 塗料、接着剤等の可塑剤 |
フタル酸ジ-2-エチルヘシル | 100μg/㎡ (6.3ppb) | 壁紙、床材等の可塑剤 |
化学物質への対策
換気をしましょう
シックハウス症候群には24時間換気が有効であるように、換気がひとつの改善方法となります。
暑い夏、寒い冬もありますが換気を心がけ、常に綺麗な空気を取り込むように意識してみましょう。
化学物質対策がされている家具等を使用しよう
ホルムアルデヒドが出にくい建材を使用している家に住む、家具を使う。有害化学物質を使用していないカーテンや家電を使う。
全てをそうすることは難しいかもしれませんが、少しずつでも取り入れることで、毎日自宅で過ごす犬猫にとっては最終的には大きな差になるかもしれません。
自然由来の洗剤などを使う
生活必需品である洗剤などは替えの効きにくいものですが、キャンプなどが流行ったことにより、自然由来の洗剤も多く販売されるようになりました。
洗浄力は劣りますが、そうしたものを積極的に利用することもひとつの対策になるかと思います。
掃除を頻繁に行う
掃除を行うこと。これも確実にひとつの方法になります。私は床に寝転がれば犬猫の気持ちがわかるとよく言うのですが、床に寝転がれないような環境であれば、まずは掃除から!
掃除をすることで自ずとシックハウス症候群や化学物質対策になっていきます。
ただし掃除で使う洗剤には注意してくださいね!