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輸入製品全般の輸送費用について紹介
以前は輸入ペットフードの方が手間暇が掛かるために価格が高い傾向にありましたが、最近は国産ペットフードが輸入ペットフードよりも内容量当たりの高いということも多くなりました。
このページでは輸入ペットフードの価格の適正について考えて行きたいと思います。
輸入製品は国産に比べて輸送費がかかりますよね!だから高いんじゃないんですか?
輸入に掛かる輸送費の内訳としては以下のようなものがあります。
- 工場から港までの陸上輸送費費用
- 輸出通関費用
- 海上保険費用
- 海上運送費用
- 輸入通関費用
- 港から倉庫までの陸上運送輸送費
細かいことをいうと、通関費用でも検査費用があったり、輸入の時期によってコンテナの返却時間を延長する料金があったりしますが、ザックリとこんな感じでしょう。
為替差額もあります。注文時期によってはそれだけで数万~十数万円は変わってきますので、商品価格に反映するほどではないと思いますが、違いはありますね。
輸入って結構費用項目多いんですね…
輸送費の面だけを言えば、当然距離によって船賃も違いがあるのですが、海上運賃よりも陸送の方が対距離で考えると高いんですよね。工場から港までや、港から倉庫までといったコンテナトラック輸送です。
このため、港まで遠い工場だと海上運賃と同等、または、それ以上のコンテナトラック輸送費がかかる場合もあります。
必ずしも実際の距離ばかりが影響するわけではないのですね!
このため例えばヨーロッパは日本からは遠いので海上輸送費だけみれば高くなりがちなのですが、アジアなど近隣の国であっても、工場から港までの陸送が長い方が価格も高くなるイメージですね。
とはいえ、一回のコンテナ輸送で運べる数は多いですから、「輸入商品だから運送費が直接販売価格に影響して高価になる」かといえば、あくまで複数の要因のひとつといえると思います。
ペットフードは輸入、通販に向いていない
ペットフードは輸入、通販に非常に向いていない商材です。
数量辺りの運送費が高い
というのも1袋あたりが2kgなど非常に大きいので、通販の主流である健康食品や美容家電と比べると数量辺りの輸送費が高くつきます。
健康食品や美容家電はペットフードよりも小さいものがほとんどですし、重量もひとつ数百g程度ですので、容積、重量のどちらで比べてもペットフードより多くの商品を積載することができます。
倉庫面積も必要でコストがかかる
商品が大きいため倉庫保管面積も広くなってしまい、コストがかかります。もちろんペットフードですが食品ですので保管にも気を使います。
動物検疫や輸入条件をクリアする必要性
これは輸入する物によってそれぞれ適用される条件がありますのでペットフードだけ条件が厳しいということではありませんが、肉を使っているペットフードは動物検疫の確認を受ける必要がありますし、条件によっては袋の仕様の検査も受けなくてはいけません。
大きさに対する販売額
販売額は平均3~4,000円と健康食品や美容家電と比べても安いので、非常に利益率の悪い商品です。
そう考えるとなかなか大変な商品なんですね!重さ、大きさといえば猫砂とかはもっと大変そうですね…
本当にその通りで例えば猫砂はペット用品通販の中でも最も販売が難しい商品のひとつと言われています。
その理由が大きくて重いのに価格が安く、送料や保管料の方が高く付いてしまうからです。
ではどうして販売しているかというと、猫砂は強制的に必要なものなのでリピート率が高く、同時購入をして頂くための商品として販売している(そうでなければ利益が出ない)という構図です。
ペットフードの方が猫砂よりは商品単価は高いですので同じではありませんが、似たような構図が成り立ちます。
こうした大きくて重い商品は、比較的輸送費の影響を受けやすい商品と言えるかもしれません。
国内輸送の場合
今回の解説とは少し話しがズレますが、国内輸送でも例えば1.5~2kgのペットフードの場合、宅急便の一番小さい60サイズでは1袋しか入りません。80サイズでは2袋~3袋(80サイズに入っても重さが上限を超えると100サイズ扱い)、それ以上は100サイズ以上となってしまいます。
100サイズとなると2,000円近くなる地区もあり、ペットフードのような商材では輸送コストは非常に大きいものとなってきます。
それらを理解した上で輸入しようとする場合、日本にはない、原材料から製造工程までレベルの高いものを選びたいのではないでしょうか。
売ることを考えると、口コミが広がって欲しいと考えますので、自信を持っていいと言えるものを輸入します。
そうなると自然とオリジナルレシピを考案し、製造することになります。工場によって違いはありますが、オリジナルレシピのMOQ(最小発注数)が例えば10トンなど小企業にとっては非常に多いので輸送費、保管費もかさみます。
自信を持っていいものだと言えるものでなければ輸入に踏み切ることができませんね。
原材料、製造コストが高い
人件費・製造コスト
人件費が安いと言われているアジアの工場で作られているキャットフードやドッグフードは愛猫家、愛犬家に人気があるとは言えません。北米、オセアニア、ヨーロッパが安全性、原材料、人気共に高く、この地域は人件費も安くありませんし、距離も遠く輸送コストがかかります。
海外生産というと安く作れるイメージがあると思いますが、ペットフードは安全なものを求め、原材料から工場の設備まで、むしろ高くなっている傾向にあります。
それでも海外で作るメリットはあるのですか?
レシピによって日本で作ることできる工場がなかったり、日本で海外と同じレベルの安全基準をもつ工場、原材料を調達して製造することはなかなか難しいものです。
日本で作れないものがあるんですか?
具体例をひとつ挙げるとすれば、いわゆるカリカリの場合は生肉の含有率が非常に高いドライフードは特別な設備を持つ工場でしか作ることができません。
日本で大型のペットフード工場を持っているのは大手企業だけなのですが、OEM生産をしていただけるわけではないので、我々のような小さな企業が国内で最先端の設備でペットフードを作れる工場はないと言っても過言ではないかと思います。
ヨーロッパや北米は歴史もあり、大型工場が多いのですが、オセアニアのニュージーランドやオーストラリアもペットフードを自国の産業として認め、国を挙げて取り組んでいる事業なので、その力は大きく、それぞれの自国の産物を生かしてしっかりと取り組まれています。
また日本では海外ほどの大型工場がないため少ないロットから作れるというメリットもある反面、大量に作ることができないので1袋当たりの単価は高くなります。このためオリジナルで開発した商品ではなく、同じ製品をパッケージだけ変更して販売しているところもあります。※これはペットフードに関わらず様々な商品で行われていて、特に珍しいことではありません。
海外の大型工場では原材料を大量に購入して原材料単価を下げ、かつ最少ロットでもかなりの量となるために1袋当たりの単価もその分安くなるというメリットがあります。
安全性・信頼性
キャットフード・ドッグフードを販売する時に最も注意する点のひとつが「安全性」「信頼性」です。動物愛護に敏感な法整備もされている国で、製造量、販売量が多い工場で製造されたペットフードの信頼性は、オリジナルでちょっと作ってみようというものとは実績に大きな差があります。
原材料の仕入れ価格の違いはどうですか?
仕入れ価格としては各国で得意不得意がありますが、工場が大きければ大きいほど一括で仕入れるため安くなります。また例えばEUの場合はEU内であれば貿易の面でも大きなメリットがありますので比較的安価で安定して仕入れることができますが、日本のように自給率が決して高くない国では海外からの輸入に頼らざるを得ない部分があり、コスト高になりがちです。
国産で同程度のものが作れた場合
もし日本に海外と同程度の工場があり、同じようなドライフードが作れたとしてもそれなりに高い価格になるかもしれません。
え!そうなんですか?
海外の工場は国内だけがターゲットではなく、全世界を相手に商売をしています。このため原材料の仕入れ量も莫大なので安く仕入れることができますし、種類も揃えることができます。
これに対して日本国内の工場の場合は言葉の壁もあり、世界中を相手にすることは難しいこと(もちろん企業のスタンスにもよりますが)、また、原材料においても食糧自給率が決して高くない日本では、確保も難しい、もしくは確保できても価格が高くなるかと思います。
人件費の面でも、日本はいまや先進諸国と比べて人件費が高いということもありませんが、決して安いわけではありません。こうして考えると、輸入ペットフードは輸送費などの面を除いて、商品原価だけで考えれば品質に比較して安く作れていると言えるかと思います。
為替コスト
私が会社を始めた2016年頃は為替差が大きな影響を与えることはありませんでした。しかしコロナ禍、ウクライナ侵攻をきっかけに大幅な為替変動があり、1.3倍位変わってしまいました。
当時120円/ユーロ位まで円高が進んでいましたが、2023年末時点では約160円/ユーロです。
当然為替コストが1.3倍となり、例えば500万円で購入できていたものが為替変動だけで650万円になりました。
これにプラスして原料高、輸送費用高騰などによって原価自体の高騰、その他コストの上昇により、全体で7~800万円近いコストがかかるようになりました。合計すると原価が1.6倍ほどに膨らんだ計算です。
弊社では一度価格転嫁しましたが、それまでの取り組みが功を奏し、定期価格だけ元の価格に戻すことができました。しかし未だ円安は進み、このままだと値上げの可能性も出てきています。
当時これほどの円安は予想ができませんでしたが、こうしたリスクもあります。
袋などその他の製造コスト
袋の製造コストに関してはやり方によっては問題があります。
ペットフード製造が海外でも、袋は日本語表記ということもあって日本で作っているメーカーも多くあります。
しかしこの場合は袋を日本から生産国へ輸出しなくてはなりません。もしくは大袋で日本に輸入して日本でリパックを行う必要があります。
日本で袋を作って製品として輸入する場合には、製造する度に袋の輸出を行うことになりますね。
これを防ぐためにはペットフード工場と同じ国で袋製造業者をみつけて交渉しなくてはいけません。もしくはEU圏内の国でフードと袋を作ります。
ただし海外製造にすると発注する度に為替に左右されることになります。
指示が伝わらない…
そして何よりも細かい指示が伝わらない。何度言っても何回説明しても時間をかけても伝わらない。なんでなのかわからないほどに伝わりません。
また、伝わっていないのですから言った言わないになるので、私はできる限りメールでも同じことをやりとりするようにしています。
これは輸入ではなぜかどうしても起こることのひとつで、この点を考慮して例えば袋だけは国内で製造してペットフード製造国へ輸出しているメーカーもあります。
もしくは大きな袋に入れて輸出してもらい、日本で開封して日本で製造した袋にリパックを行うことになります。
商品管理コストの紹介
輸入の場合は一回の製造量が多くなる
輸入の場合、小ロットで作ってしまうと製造回数も輸送回数も増えてしまうのでとても現実的ではありません。
きちんと販売することができるのであれば、1本のコンテナ輸送で運べる限界まで製造して、輸送した方が輸入費用は安く済み、価格への転嫁を抑えることができます。
もちろんその分だけ多くの在庫を管理しなければいけなくなりますし、倉庫スペースも大きくなってきます。在庫管理も大変になりますし、棚卸しなどの手間もかかります。
例えば海外製造の場合は大規模工場となり、最低製造ロット(MOQ)が10トンなど大きい傾向にありますので、もし海外製造で輸入を始めようとした場合にはコンテナトラックを入れることができる大型倉庫が必要になります。
輸送事故のリスク
地味に効いてくるのが輸送事故のリスクです。例えば在庫ギリギリで回していた場合、輸送事故が起こって一回分の損失が出たとします。
この損失は保険で賄われるので金銭的なダメージはなかったとしても、肝心の在庫がなくなってしまいます。
事故の後に慌てて再生産をしたとしても、欧州から日本に着くには製造、輸送、通関、検品と考えれば2、3ヶ月の時間を要してしまいます。
こうした輸送事故を考えて輸送1回分以上の在庫は確保しておくべきであり、その分倉庫面積の拡大など管理コストは増加します。
国産の場合は小ロットで製造が可能
国産の場合はどうですか?
国産の場合は全く逆です。大規模工場は大手企業さんしか持っていませんので、国内でOEMでペットフードを作れる工場の場合はほとんどが小規模で、それほど多く作ることができません。
逆に考えれば小ロットで製造することができるので倉庫もいきなり大型を準備しなくても良いですし、参入障壁は低いかもしれませんね。
想像以上に多くの手間とコストが掛かることがわかりました。ありがとうございました。
まとめ
- 海外製造には大きなコストがかかる
- リスクを考慮するといいもの、販売実績のあるものを輸入するべき
- 検疫など通関時にイレギュラーなコストがかかる場合も
輸出入には思いの他手間とコストがかかります。安易に輸入で販売するにはとてもハードルが高いので、大きなメーカーでない限りは、自信をもって販売できるものが揃っているといえると思います。