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どこでも悪く言われてしまうビートパルプ
ビートパルプはどのサイトを見ても悪く言われてしまいがちなのですが、実際には機能も有するものですよ。
嵩増しとしてクローズアップされているイメージです。サイトによっては原材料として悪いものって扱いのところもありますよ!私もそういうのを見続けていたのでそう思っていました。実際にはどうなんですか?
ビートパルプはそもそも砂糖大根から砂糖を抽出したあとのガラです。副産物ともいいますね。この副産物という言い方で悪いものと感じる人も多いのかもしれません。しかしビートパルプには可消化エネルギーがちょうどいい塩梅で含まれている貴重な原材料でもあります。
因みに、時折”副産物はタダ同然”だという記述が見られたりしますがとんでもないことです。
ビートパルプで嵩増しなんて真っ赤なウソ。ビートパルプは多く配合できない
ビートパルプで嵩増しが最もクローズアップされているかもしれません。
言いたいことはわかります。確かに水分を含んで体内で膨らみますから、満腹感も得られるという効果もひとつあります。
しかし、そもそもビートパルプはキャットフード中に多く配合することはできません。
食物繊維を一定数配合してしまうと膨張し、詰まる原因になります。便秘程度ならまだマシですが、それを超えれば排出難となってしまいますので、平均してフードへの配合量も0.1%にも及ばないことがほとんどです。
そんなに少ないんですか!それなら嵩増しとは言えないですね…
0.1%程度の配合が嵩増しというのなら、嵩増しなのかもしれませんが、一般的にはそのようには思わないですよね。
また、「ビートパルプを嵩増しに使うなら他の原材料を嵩増しに使ったりするのですか」という質問も頂いたりするのですが、とんでもないことです。そもそも「嵩増し」するほどの原材料をひとつで賄おうとすれば、栄養素を整えることができなくなります。
それは人間でも無理です。トウモロコシを食べたくないから小麦で補うことはできませんし、じゃがいもとサツマイモですらそのまま置き換えることはできません。
もしそうしたことを現実的に考えるのであれば、逆に原材料をシンプルな構成にすることでひとつあたりの量は増やすことができ、結果足りなかった栄養素を栄養添加物で調整することで作ることができます。
ということで、ビートパルプで嵩増しはできません。また、ビートパルプも肉などメイン食材に比べれば安いですが、それでも意外と高いです。
可消化エネルギーが豊富なビートパルプ
可消化エネルギーってなんですか?
その名の通り、消化することができるエネルギーで、全エネルギーの中から糞へ排出される分をのぞいたエネルギーのことです。それではまず食物繊維というものを勉強してみましょう。
ペクチン、グアガム、大豆繊維、ビートパルプ、大豆の殻、セルロースと食物繊維が並んでいるとしましょう。主にペクチン側が発酵が早いもので海草などに多く、微生物が使うことができるもの。セルロース側が発酵が遅いもので、微生物すらも使うことのできないものです。
セルロースは腸内洗浄のための原材料として良く聞きますね。
そうです。セルロースに近づくほど微生物すらも分解することができず、繊維として腸内を綺麗にしながら通過し、排出されます。逆にペクチンに近づくほど微生物が分解することができ、腸の粘膜上皮細胞にエネルギーを供給することができます。
ビートパルプは真ん中なのでその両方の機能を持っているということですか??
厳密にはビートパルプはセルロースもペクチンも含まれたもので、ちょうど真ん中の効果があるといった感じです。
11年の研究の結果見つけたのはアイムスの研究員で、ビートパルプを初めて入れたレシピを作ったのはアイムスの創始者ポールFアイムス氏、また同社の研究者と言われています。少なくとも当初からビートパルプを配合したレシピを製造していました。
この時1960年代なのでどこまでビートパルプの有用性がわかっていたかはわかりませんが、効果的な原材料と考えてペットフードに使用したのではないでしょうか。
つまりビートパルプは食物繊維の機能を持ちながらも負担は最小限に、エネルギーとしても使うことのできる食物繊維として使われています。
それでもビートパルプは犬猫に必要ない?
食物繊維はペクチンやセルロース、ビートパルプなどその種類によって、体内を掃除したり、微生物によって腸の粘膜にエネルギーを供給するという仕事を持っています。またそれら微生物の餌や隠れ家にもなります。
量の問題ですか?
毛の排出などで食物繊維が必要な犬猫もいます。このように食物繊維はむやみにいらないというものではなく、症状や状態に合わせて選べばいいものです。
長毛種であれば慢性的に胃の中に毛が存在しますし、そうなれば少量の食物繊維を常にとっていた方が調子のいい犬猫もいます。
闇雲に悪いものと決め付けない方が良さそうですね。
発がん性物質や肉副産物はいいと言えたものではありませんが、中には考えられて配合されているものもあり、ビートパルプはそんな材料のひとつと言えます。
毛玉ケア商品などのビートパルプは考えられて入れられているんですね。
実際に毛玉ケアをしようと考えた場合、整腸作用のある食物繊維を使わないことには効果を得られません。また、慢性的な下痢に悩む犬猫にも効果的な場合があります。
しかし単にセルロースだけを過剰に入れたのでは犬猫の内臓に負担を与えてしまいます。逆にペクチンでは効果が薄いものとなってしまいますね。
そこでビートパルプが活躍するんですね。キャットフード・ドッグフードは良く考えられて作られているんですね。
私もこの話はペットフードに詳しい獣医さんに教えてもらうまでは知らず、開発時のペットを想う気持ちを知りました。
ビートパルプもいい面ばかりではありません
ビートパルプを使わなくても製造可能
お伝えしたようになりましたが、マイナスに捉えられる面もあります。
例えば食物繊維は他にもあるので、繊維の豊富なサツマイモやじゃがいもを入れることで、ビートパルプを使わないレシピにすることもできます。
ただし、第一原料の次にじゃがいもやさつまいもを入れたとしても繊維量を多くは稼げません。それでいてコストもあがります。しかも不溶性食物繊維、可溶性食物繊維のバランスをとるという面では不十分な部分もあります。
なるほど、コストを上げて、繊維量も下がってもよければある程度までは代替することが可能なんですね。
ビートパルプに残る糖分や薬剤
また、ビートパルプは甜菜から砂糖を抽出したガラなので、糖分(上白糖)が残っています。この残った糖分が体に悪いと気にされる方もいますし、ビートパルプから砂糖を抽出する際に圧力で抽出ではなく、薬剤を使う場合があると言われており、この薬剤が残っていて悪影響を及ぼすという考えもあります。
ただ、甜菜から砂糖を作り出した1800年頃には甜菜から取り出した液汁を硫酸で精製し、木灰や石炭などで中和させて作る方法であったこと(参考:甜菜糖業の始まり 農畜産業振興会)や、上白糖を作る際に、硫酸を用いて精製することで白くするといった文献は見られますが、実際に硫酸で糖分を抽出するというものは見られませんでしたので、これが誤って伝わったのかな?とも考えられます。
難しいところですね…
ビートパルプの産地によって違う栄養素
そして同じビートパルプでも、国産とアメリカ産、中国産では栄養素が全く違うという実験結果も日本甜菜製糖株式会社により公表されています。この事実はほとんど知られていないのではないでしょうか。
国産 | アメリカ産 | 中国産 | |
消化率(%) | |||
乾物(DM) | 90.5 | 83.1 | 75.6 |
粗たんぱく質(CP) | 68.8 | 60.3 | 51.1 |
中性デタージェント繊維(NDF) | 93.1 | 87.5 | 77.2 |
栄養価(DM%) | |||
可消化養分総量(TDN) | 85.3 | 80.8 | 75.3 |
生産地によって栄養価や育て方も違うという点では、野菜やハーブ、肉と全く同じなんですね。
なんでも高ければいいものが作れるのは当たり前なのですが、できる限りコストを減らして安くいいものを作るためにも必要な原材料とも言えますね。
そして他栄養素に影響を余り与えずに食物繊維量を調節できる原材料でもあります。
インターネットの情報は事実とは違ったものもあります。しかし手軽に得られる情報であることもあり、時に間違った情報が正しい情報よりも前に出てきていることがありますので注意しましょう。
最後に少しビートファイバーのお話をしましょう。
食物繊維の機能に絞ったビートファイバー
ビートパルプに似た表記にビートファイバーがありますが、これはビートパルプから薬品を使わずに衛生的に食物繊維のみにしたものです。白灰色粉末で不溶性、水溶性両方の食物繊維が含まれています。ビートファイバーは欧州と日本の研究機関で開発された新しい形の天然食品素材として使用されています。
ビートパルプとビートファイバーは甜菜からとった食物繊維という意味では同じですが、絞ったガラがビートパルプ、薬品を使わずに精製、乾燥したものがビートファイバーです。
ビートファイバーはわざわざ研究機関で開発されたものなんですね!
一般的にビートパルプやビートファイバーは食物繊維という部分だけが注目されがちですが、陽イオン交換能力も大切な要素のひとつです。
というと陽イオンと陰イオンを交換するんですか?どういう意味ですか?
ビートファイバーは陽イオンを持つカリウムやナトリウムを吸着します。吸着すると今度は陰イオン交換能を持つようになり、胆汁酸、脂肪酸を吸着できるようになります。こうして胆汁酸、脂肪酸の排出にも役立ち、同時に体中にミネラルを供給する役割も果たしていると考えられています。
初めて知りました!食物繊維や満腹増長のためだけではないんですね!
まとめ
- ビートパルプは決して悪い原材料ではない
- 整腸機能がありながらエネルギーにもなる
- 配合物は愛猫に合わせて考える
マッサンの話を聞いて、ビートパルプが嵩増しだけのものではないことがわかりました。他にもこういった誤解をしている原材料や認識がありそうです。注意しながら勉強していきたいと思います。