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犬猫の口腔内ケアに有効なグロビゲンPG(リベチン含有卵黄粉末)
デンタルケアに最も有力なもののひとつがグロビゲンPGです。
(株)京都動物検査センターの歯周病罹患猫におけるグロビゲンPG(卵黄リベチン)の歯周病改善効果によれば、「5歳以上の口内炎を含む歯周病に罹患していて口臭が確認されたペルシャ、スコティッシュフォールド、ブリティッシュショートヘア、ロシアンブルーの6頭を用いて、抗人ジンジパインIgY含有卵黄粉末を被検サンプルとして0.1%添加した飼料を8週間連続給与する試験を行ったところ、4週および8週で歯肉炎スコアの改善がみられた。充血、出血、腫脹、歯根膜炎の歯肉炎も投与期間に伴って減少した。歯周ポケットも投与開始時2.9mmだったが、4週、8週で2.1mm、1.9mmと減少した。歯垢スコアも有意な歯垢除去効果が認められた。口臭スコアについては8週でやや減少したものの統計学的な差は見られなかったが、歯垢の減少と歯肉炎に対する効果が明らかなことからも、長期投与により口臭に対する効果が期待できると考えられる。副作用も観察されず、安全性に問題はないと思われ、摂取状況にも影響がなく、嗜好性も良いと認められた。」とされています。
抗ジンジパインIgY含有卵黄粉末を添加したドライフードの給与により、歯肉炎改善効果、歯垢除去効果が認められ、歯周病罹患猫のQOL向上に期待が持てることがわかっています。
ジンジパインとは
ジンジパインは、歯周病の原因菌であるポルフィロモナス・ジンジバリスが分泌する非常に強力なタンパク質分解酵素です。歯周組織やバイオフィルムのタンパク質を分解して、歯周病の進行を招きます。
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- コラーゲン、フィブロネクチンなどの細胞間質に存在するたんぱく質を分解して炎症を引き起こす
- フィブリノーゲンならびにフィブリンを分解して血液凝固を阻害して易出血性作用をもつ
- 免疫伝達物質のサイトカインの分解および、好中球に対する機能障害を与えて、宿主の免疫防御機能を低下させる
- 口腔内最近との共凝集作用をもち、バイオフィルム形成に寄与する
- 本菌の宿主細胞等への付着因子である線毛について産生機能を有する
口臭の腐敗臭成分は揮発性硫黄化合物や揮発性窒素化合物で、タンパク質を分解しながらジンジパインが増殖する過程で発生する匂いです。
また、脳の神経細胞を変性させてアルツハイマー型認知症を発症させることもわかってきています。
IgYは加熱処理を行うと機能が失活する
IgYは鶏卵抗体原料で抗体のため、加熱処理をおこなうと機能が失活してしまうという弱点があります。ドライフードやレトルト食品には使っても意味がないのですが、グロビゲンPGを加熱商品で使用されている商品は多いです。
- 免疫グロブリンY(IgY)は鶏卵中の卵黄由来の抗体
- 抗体はタンパク質で構造が繊細
- IgYは60℃で10分間加熱すると、抗体活性が約50%減少
- 70℃以上で急激に失活し、80℃でほぼ完全に失活
参考:Hatta et al., 1993, Journal of Immunological Methods
このためグロビゲンPG(リベチン含有卵黄粉末)を使う場合は、低温処理か非加熱商品が好ましく、原料をそのまま使用した粉原材料を添加した形が好ましいといえます。
ペットフードやサプリメントに添加する場合も、加熱工程後に混合するなどの工夫が必要です。
使いやすいものでは粉末系のふりかけタイプがおすすめです。
IgYは中性pHで安定性が高い
IgYは中性pHで最も安定性が高く、pH4以下になると急速に失活します。
ペットフードの場合はほとんどが弱酸性(pH6程度)ですので大きく影響することはありませんが、ミネラルなどはアルカリ性であったりと添加物には酸性、アルカリ性がありますので使用する原材料には相性があります。
- IgYの安定性は中性pH(pH6.5-7.5)で最も高い
- 70℃で15分処理 → 抗原結合能が30–40%低下
- 酸性(pH 4以下)や高温(>70℃)では急速に失活
参考:Kovacs-Nolan et al., 2005, Journal of Agricultural and Food Chemistry
卵アレルギーの犬猫は注意
卵黄粉末ですので卵アレルギーがある犬猫は使用しないようにしてください。
また、加熱商品であったとしても卵アレルギーの成分となるオボムコイドは、熱や消化酵素の影響を受けにくく、加熱でアレルゲン活性を失わない耐熱性タンパク質のため、注意が必要です。
まとめ
- デンタルケアにはグロビゲンPG(リベチン含有卵黄粉末)が有効
- 歯周病、口内炎、口臭に効果がある
- 非加熱もしくは低温処理でなければならない
- 卵アレルギーの場合は使用不可