少しでも水分を取るようにしましょうといったアドバイスはありますが、どの程度の水量を飲めば良いのかの具体的な指標まではなかなか言われていません。
ここでは実際の飲水量について考察してみたいと思います。
目次
成熟した動物は体重の65%が水分
成熟した動物は体重の65%が水分です。この水分の20%が失われただけで死亡してしまう水は動物にとって最も大切なもののひとつです。
ちなみに体内のタンパク質を半分失ってもしなず、体脂肪の大部分を失っても死ぬことはありません。
それだけ水分が重要であるということがわかります。
これらの水分は細胞内液、細胞外液に分かれて存在しています。
細胞内液とは
細胞内液とは細胞の内側を満たしている液体のこと。なんと体内水分の2/3が細胞内液となっています。
細胞内液と細胞外液はその名の通りですが、細胞膜で隔てられています。
細胞内液は細胞の内側で細胞が機能するような環境を形成しています。あまりピンと来ないかもしれませんが、個々の細胞を満たしている水と考えればイメージがつきやすいのではないでしょうか。
細胞外液とは
細胞外液は血液やリンパ液のことです。こちらはピンと来る人がほとんどだと思います。これが体内水分の1/3ですので、細胞内液が非常に多いということがわかると思います。
細胞内液と細胞外液の区分
体重の41%が細胞内液です。例えば60kgの人の場合、24.6kgが細胞内液と考えると大変な量であることがわかります。
細胞外液は体重の24%ですので14.4%が血液やリンパ液などの細胞外液です。
合計では60kgの体重中、39kgが体液となっています。
イメージよりもかなり多いと思いませんか?私は実際にこうして表してみて驚きました。
総水分に対する割合(%) | 体重に対する割合(%) | ||
---|---|---|---|
細胞内液 | 63 | 41 | |
細胞外液 | 37 | 24 | |
間質液 | 27 | 18 | |
血漿 | 7 | 4 | |
細胞通過液 | 3 | 2 | |
合計 | 100 | 65 |
必要な水分量について
犬も猫もおおむね1kgあたり約40~60mlの水が必要と言われています。体重3kgで120ml~180ml程度になります。
猫の場合は乾物1gにつき、約2mlの水を必要とも言われ、例えば体重3kgの猫が50gのペットフードを食べる場合、100mlが必要となります。これは被捕食動物の体水分量と同量程度です。
猫の場合は水分量が少なくても尿細管から水を再吸収して尿を濃縮し、水分の体外排出量を最小限に抑えることができるため、少ない水でも耐えられるようになっています。
しかし尿結石が多発する原因でもあるので、耐えられるから良いということでもありません。
代謝水について
代謝水とは消化吸収された栄養素が他内で酸化される際に生じる水のことです。
実際にどれだけの水が発生するかということを明確にすることは難しいのですが、あくまで計算上は以下の量が生成されると考えられます。
代謝水(ml) | |
---|---|
可消化脂肪 | 107 |
可消化炭水化物 | 55 |
可消化粗タンパク質 | 41 |
これらは1日あたり必要水分量の5~10%程度になります。
実際の飲水量について
必要な水分量、代謝水について考慮したうえで、実際に犬猫はどれだけの水分を摂取するかという点ですが、ペット栄養学会誌で以下の通り紹介されています。
犬の場合
- イヌに水分含量73%の缶詰フードを与えた場合、必要水分の38%しか飲水で補給しなかった
- イヌに水分含量7%のドライフードを与えた場合、95%以上を飲水から補給した
猫の場合
- ネズミのような被捕食動物または缶詰フードだけを食べているネコは、気温が低い場合はほとんど水を飲まない
状況によって変わる
結局のところ、食べているものや気温、運動量などでも飲水量に変化が生じます。
このため犬猫に必要な飲水量は「できるだけ飲む」というなんとも明確ではない回答となってしまうかもしれません。
最も簡単な場合では以下のように覚えておくと良いかもしれません。
- ドライフードの場合は「体重×50ml」
- ウェットフードメインの場合は「体重×約20ml」
水分の代わりとしてウェットフードを使用しないように
上記の通りとするとウェットフードを水の代わりにして良いように受け取れるかもしれませんが、あくまで水は水、ウェットフードはウェットフードと考えてもらった方がよいと思います。
特に水を飲まない猫に対する水の飲ませ方こちらも参考にしてみてください。