弊社商品では使っていませんが、よくある相談のうちのひとつであるアボカド。
ペット栄養学会誌から「ペルシンはイヌにとって本当に有毒か?」という興味深い記事がありましたので紹介します。
参照:イヌへのアボカド給与について 日本ペット栄養学会 迫田順哉・佐向敏紀
目次
アボカドミールのペルシンは分解される?
ペットフードに使われることがあるアボカドミールやアボカドオイル。原則としてペルシンが中毒成分であるかがはっきりしていません。
その上で、とあるアボカドミールからはペルシンが検出されず、熱加工などで分解していると考えられています。また、消化率や血液検査でも異常がみられず、繊維源として活用すればよいという提案もなされています。
その他の情報でもイヌ、ネコへの毒性は軽微であるとするものが中心です。
2023年時点で積極的な給与は非推奨
ただし、2023年の植物中毒に関して行われたEUのレビューでは「イヌ、ネコはペルシンの影響は受けにくい」「イヌへの臨床症状mildな消化器症状」「大量に食べた場合には、膵炎、呼吸促迫、心膜水腫、死亡の可能性がある」ことが説明されています。
生アボカドを主食並みに大量に食べた場合は膵炎のリスクもあり得ます。
重篤な問題が起こる可能性は低いと考えられますが、現状では毒性量を設定することは困難のため、積極的な給与は非推奨です。
大変興味深い各組織の見解
種子による異物閉塞のリスクは高いが、ペルシンの毒性は犬猫に対しては低いと考える傾向にあります。
また上記でも考慮していましたが、熱によって分解、失活している可能性が高いとする見解があります。
ラテンアメリカでは庭で普通にアボカドを食べている
| 地域 | 主な発信内容 | |
|---|---|---|
| FDA | アメリカ | アボカドはイヌ・ネコに対してはマイルドな毒性。種子による異物閉塞が危険。 |
| FEDIAF | EU | アボカドについて記載なし |
| ASPCA | アメリカ | ペルシンは馬にとって有毒であり、臨床症状として呼吸不全、心不全、浮腫が挙げられる。イヌに関する言及はない。 |
| Pet food industry | アメリカ | イヌ・ネコでアボカドの毒性成分がペルシンであるという各省の持てる論文はない。ラテンアメリカでは一般家庭の庭でペットのイヌがアボカドを食べているが、熱や光でペルシンが分解されている可能性がある。ペットフードに使用されている原材料はペルシンが破壊・失活されている可能性が高い。 |
| Pet poison helpline | 北米 | 大きな種子による異物閉塞のリスクが高い。イヌ・ネコでペルシン中毒は稀。高脂肪による膵炎のリスクがある。 |
| AKC | アメリカ | アボカド給与は肯定も否定もできないが、100%安全とは言い切れない。致死量は不明で大量に食べれば、ペルシン中毒、脂質による胃腸不良や膵炎や体重増加、種子による異物閉塞の可能性がある。 |
面白いのはラテンアメリカでは一般家庭で飼育されている犬が普通にアボカドを食べていることです。
ということは気から落ちてきたアボカドを皮ごと食べているのではないかと予想できます。
また、熱や光でペルシンが分解している可能性があるとのことですので、落ちたアボカドが太陽光に照らされる程度でペルシンは分解する可能性があるということです。きっと日陰に落ちたアボカドでも中毒は起こさないのでしょう。
そうなると太陽光よりよほど高温で処理されるペットフード用に加工されたアボカドではペルシンが検出されることは考えにくいと考えます。
種子による異物閉塞に注意
アボカドの種は大きいですので、種子を食べて異物閉塞を起こす可能性は十分にあります。
アボカドの高脂肪による影響
アボカドは可食部脂質として17.5%、DM(乾物)換算で約60%ほどにで多く含みますので、主食のように大量に食べると膵炎になる可能性があります。
アボカドを使用したペットフードについて
アボ・ダームなど、アボカドをセールスポイントにしたペットフードが存在します。
これらはペットフードにした場合はその他の食材と合わせて脂質を調整されていると考えられますし、ペルシンは熱加工によって分解されていると考えられているため、問題が起こる可能性は低いのではないかと考えられています。
実際にアボ・ダームキャット サーモン&ツナの粗脂肪が18%以上、アボ・ダーム スモールブリード チキンの粗脂肪が16%以上ですので、低脂肪商品ではありませんが、脂肪が多いこともなく、普通の範囲であると思います。ペルシンについても本国で含まれていないことが確認されているようです。
また、アボ・ダームは1982年に誕生して販売が続いているようですので、アボ・ダーム由来の問題が起こることは考えにくいのではないかと予想できます。
ペットフードと食材そのものは別
私たちがよくお伝えしていることのひとつに、食材そのものを食べることと、ペットフードに加工された食材を食べることは同じではないということがあります。
熱に弱いビタミンを含む食材を加熱し続ければ分解されていまいます。たんぱく質は凝固したり、炭水化物はα化することで食べる(消化)できるようになるものもあります。加工によって栄養素だけでなく、姿形も変わりますので、出来上がったもの(ペットフードの状態)で確認することが大切です。
このため、食材について危険性などが広まっている場合は、その食材そのものを食べた場合について書かれていることが多い点には注意してください。
アボカドオイルについて
アボカドオイルが使われているフードもあります。ただアボカドオイルの場合は精製によって含まれる成分も多少違いが生じる場合があり、ペルシンが含まれる可能性があるようですのでペットフードメーカーに確認してみると良いと思います。わからないまま与えることは避けておきましょう。
抗菌作用がありますので皮膚に塗るといった使い方もある可能性がありますが、獣医師に確認してから試用するようにしましょう。





