2018年コリネバクテリウム・ウルセランス感染症で国内初の死亡者
コリネバクテリウム・ウルセランス感染症に感染で死亡者が出たというニュースがありました。
コリネバクテリウム・ウルセランス感染症は感染症法に基づく届け出義務がない珍しい感染症の為、実際には多くの感染症例が出ている可能性があるものの、現在確認できているのは25例だけということです。今回は呼吸困難で搬送されて3日で残念ながら亡くなってしまったということです。
感染症も重篤に至らない場合はいつの間にかかかって治っているというケースもあり、気付きが遅れそうですね…
私は病気の分野は直接的に勉強はしていませんが、今回はニュースになった感染症について、食事も含めて一緒に考えてみましょう。
コリネバクテリウム・ウルセランス感染症とは
今回ニュースになったコリネバクテリウム・ウルセランス感染症ですが、厚生労働省のホームページでもしっかりと紹介されています。
人獣共通感染症のひとつでジフテリアに似た症状を示します。人、犬、猫、牛など多くの動物で感染が確認されています。
症状
くしゃみや鼻水、咳、咽頭痛など風邪と似たような症状から、皮膚炎や乳腺炎など多くの症状が示される動物由来の感染症です。
重篤な場合には呼吸困難により死亡することもあります。
感染経路
動物のくしゃみや咳、鼻水などから感染します。皮膚炎などから感染する例もあるようです。
感染例
公開されている日本での感染例では猫の多頭飼いをしているケースが多く見られます。3匹以上から、10匹以上飼育しているケースもあり、猫1匹のみ飼育での感染例はわずか2件です。また犬からの感染例もあります。
また親戚宅で飼育していたり、屋外で餌やりだけをしているといった限定的に接する場合でも感染したケースがあります。今回のニュースでも屋外で猫3匹に餌やりをしていた女性が呼吸困難により亡くなっており、飼育して毎日接していなくても感染するということがわかります。
予防策
無症状の保菌動物も確認されていますので、知らない間に感染する可能性もあります。普段から触れ合った後には手を洗うという基本的な衛生管理を行うことで感染リスクを下げることができます。
感染例から犬猫の多頭飼いで感染しているケースが見られます。その中の1匹しか菌を持っていなくても感染していますので、多頭飼いの場合は特に衛生面に注意を払う必要があります。
また人の定期予防接種である3種混合ワクチン(最近は4種)にはジフテリアトキソイドが含まれ、これが有効であると考えられています。このため、予防接種を受けていない可能性がある場合には医師に相談するようにしましょう。
人獣共通感染症
人畜共通感染症は少なくなく、意外と気付かない間に感染し、治っているケースもあるかもしれません。
以下に紹介しますので、なんとなくでも覚えておきたいところですね。
リステリア症、サルモネラ症、カンピロバクター症、エルシニア・エンテロコリティカ感染症、仮性結核
猫の糞便中の病原体が口に入ることで感染することがあります。胃腸炎や食中毒を引き起こします。
トキソプラズマ症
猫の糞便中の病原体が口に入ることで感染することがあります。流産または胎児に先天性障害を引き起こします。妊婦さんには伝えられる場合もあると思います。
回虫幼虫移行症
猫の糞便中の病原体が口に入ることで感染することがあります。幼児の肝臓、脳、目などに障害を引き起こします。
Q熱
尿、便、胎盤などの病原体を吸入することで感染します。インフルエンザのような症状を引き起こします。
狂犬病
多くの人が知っている感染症のひとつに狂犬病があります。犬がかかるものと思われがちですが、人も感染するのと同じように、猫も感染します。感染は噛まれることで起こります。
記録として1957年の最後の一匹の狂犬病は猫だったそうです。
パスツレラ症、猫ひっかき猫、カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症
かみ傷、ひっかき傷から感染します。
コリネバクテリウム・ウルセランス感染症
今回紹介した感染症です。
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
ウイルスを持つマダニに咬まれると感染し、発熱、消化器症状、重症化すると死亡することもあります。
かいせん、皮膚糸状菌症
濃厚な接触で感染し、脱毛や強い痒みを示します。
飼育状況からみる感染症
犬猫と暮らしている人の多くは人獣共通感染症にかからないと思い込んでいるケースが多いように思います。実は私もそのうちのひとりだと感じています。
犬猫と食べ物を共有するケース
私も全く考えたことなかったです。自分が食べているパンを欲しがったらそのまま食べさせて、またそのまま自分が食べるということもよくあります。
私も猫に舐められたり、スギさんと同じように食べ物を共有したりすることから猫の唾液が体に入っているケースは十分に考えられる環境です。
これらは感染症という意味では猫が保菌していた場合にはすぐに感染することになるでしょう。
特に下に紹介するリステリア症、サルモネラ症、カンピロバクター症、エルシニア・エンテロコリティカ感染症、仮性結核、トキソプラズマ症、回虫幼虫移行症、Q熱は糞便中の病原体がなんらかの経路で口に入ることで感染しますので、同じものを食べたり、口移しなどが感染経路となる可能性が考えられます。
猫と濃厚な接触をするケース
今回紹介したコリネバクテリウム・ウルセランス感染症や皮膚糸状菌症、かいせんは猫との濃厚な接触によっておこります。皮膚糸状菌症やかいせんは脱毛や痒みを引き起こします。
また、パスツレラ症、猫ひっかき病、カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症はかみ傷やひっかき傷によって感染しますので、猫との距離が近い方が感染しやすいと考えられます。
飼育の仕方を見直す
猫との距離が近いことで感染のリスクは上がりますが、家から出すことのない環境であればそもそも猫が感染することがほとんどないと考えられますので、飼育の仕方も大きな要因のひとつとなるのではないでしょうか。
外飼いや、散歩などで外に出ることがある場合に注意が必要ですね。
例えば犬猫の散歩をしている時に、外に落ちている糞便などの匂いを嗅いだり触れたりする可能性がないわけではありませんので、こうした場合に感染する可能性があります。
犬猫から人間への感染について注意する考えばかりでなく、犬猫自体が感染しないような飼育環境を整えたいですね。
まとめ
- 人畜共通感染症は少なくない
- 基本的な衛生環境に配慮する
- 犬猫の飼育環境を見直そう
- 犬猫との食べ物の共有について考える
犬猫との暮らしが長くなると、自分の食べているものを直接与えてしまうといった食べ物の共有や、キスや口を舐められるなどの接触によって感染症にかかってしまう場合があります。基本的な衛生環境や接し方もそうですが、猫自体が感染してしまわないように飼育環境の見直しを行い、犬猫も人間も感染しないように注意を払っていきましょう。