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ネットや書籍に溢れた情報から正しい情報を得よう
最近相談を受ける中で、「この本にこう書いてあった」「ネットにこう書かれていた」という内容が見られます。
この時大切なのは以下の3点です。
- 情報の真偽
- 情報の鮮度
- 発信者の考え方
インターネット上では古い情報も多く見られ、今の時代にそぐわない内容のものもありますし、間違った情報も見られます。
また、同じ題材であっても発信者の考え方によって全く違うことを言っている場合があります。この場合、どちらの意見も正しい場合があり、情報の受信者、つまり飼い主が情報を選択する必要があります。
ここでは参考になる書籍を紹介しながら、情報の鮮度についてや発信者の考え方の違いについてお話していきたいと思います。
インターネットの情報は鵜呑みにしない
インターネットから仕入れた情報は、発信者が明確なものを選ぶようにしてください。
発信者が特定できない情報にも正しい情報はたくさんありますが、他のサイトをみて横流しのように書いているサイトもたくさん見られます。
書籍や講義、獣医への相談などから情報を得るのがおすすめです。
「ペットフードで健康になる」著者:坂本徹也 2005年初版発行
例えばこの「ペットフードで健康になる」という本ですが今から13年も前(2018年時点)、ペットフード安全法が施行される4年前の2005年に発行されたものです。
その内容はセンセーショナルで大きな反響があり、現在も犬猫サイトなどでインターネットに書かれている情報はこの本から持ってきたであろう内容もたくさん掲載されています。内容は主にドッグフードに関してですが、キャットフードにも役立ちます。
読むにあたっては13年前(2018年時点)の情報なので現在の状況に当てはまらない部分もあります。
例えば当てはまらない情報やこの書籍が参考になっていると思われる情報はどんなものがありますか?
やはりペットフード安全法施行前なので製造方法、製造国に関してや、表示義務に関してなどがあります。
参考情報としては「高校生でも作れる総合栄養食」としてAAFCOの基準を満たしたドッグフードを履き古した革靴や廃油などを使って作ったという話がインターネット上で見られますが、この書籍の影響が大きいでのはないかと思います。
「食べ物さん、ありがとう」著者:川島四郎、サトウサンペイ 1986年初版発行
以前紹介した著者:川島四郎、サトウサンペイ 1986年初版発行の「食べ物さん、ありがとう」もまたかなり古い本です。
しかも動物学として書かれているものではありません。この本の場合、栄養学者の川島四郎氏が自分で見て、自分自身で試して、人でも試して得た経験を話しています。こうした経験則は状況が変わっても古くならない情報もあり、今では得られない情報が多く、大変参考になります。
動物栄養学は今も人間の栄養学から考えられている部分が多分にあり、川島四郎氏の栄養学者としての経験は今も役立つと感じています。
「イラストでみる猫学」監修:林良博 2003年初版発行「イラストでみる犬学」監修:林良博 2000年初版発行
専門書は難しい内容も多いのですが、理解ができなければ実践には結びつきません。そこで私のような一般の方でも理解しやすい書籍を紹介したいと思います。
10年以上前にある救命士の資格でテキストと併用してこの書籍が使われていました。私はその資格にテストを送付したと思い込んでそのままになっていて、気付いた時には失効していたという思い出深い資格です(笑)
犬猫に関する生態がしっかり書かれていて、フルカラーで目に見てわかりやすく、犬猫についてもう一歩進めた知識を得たい方にはおすすめです。
ペットフードについては調べても犬猫の生態については余り気にしたことがなかったかも…
こうした書籍を読むことで、犬猫についてまことしやかに言われていることが間違っていることに気づけたりします。インターネットに掲載されている情報と、実際に違いがあることがわかり、情報の取捨選択に役立ちます。
「ペット栄養学テキストブック」編集:一般社団法人日本ペット栄養学会 2014年初版発行
ある資格のテキストとしても使われているペット栄養管理学テキストブック。ペットに関する栄養学全体を網羅している書籍です。
難しい内容も多いですが、なるべく簡単にわかりやすく書かれていて参考になると思います。
基礎栄養学から各疾患について、貴重な歯科疾患についても書かれています。ペットフードの栄養評価法、諸法令と内容は豊富です。
情報の取捨選択の仕方
次に獣医師や教授によって見解が違う場合です。この場合、聞き手はどの情報が正しいのかわからずに迷ってしまいます。
ここでは自分で情報を取捨選択していく方法を紹介します。
「総合栄養食」を題材に考えてみよう
例えば総合栄養食というものについて考えた時、AAFCOでもFEDIAFでもペットフード取引協議会でも「総合栄養食はそれと水だけを与えていれば健康を維持できるように栄養バランスが調製されているペットフード」としています。
これに対して多くの意見が存在しています。
賛成意見について
- AAFCOのような基準がなければ新規参入はできず、研究機関を持つメーカーの独占販売になってしまう
- 新規参入ができることで健全な競争がおき、ユーザーの選択肢が増え、より安価に購入することができるようになっていく
- 新しい考えが生まれ、反映され、ペットフードが進展していく
- 基準を参考に新しい試みを行うことができる
このようにAAFCOのような基準があることでペットフード業界、そしてペットフード自体が進展していくという考えがあります。
反対意見について
- それだけを食べていればいい総合栄養食なんてものがあったら栄養学は必要がない
- ペットに総合栄養食が作れるならなぜ人間にはないのか
- その時々で必要な栄養素量も変わるのに同じものを食べ続けて健康に生きていけるのか
- AAFCOのデータはとても正しいものとは思えない
- AAFCOの値は多めに出されている
- そもそもドライフードを与えるべきではない
- 昔のようにNRCの基準を採用すべきだ
私にはこのどれもが正しいことに聞こえます。
そもそも年齢もサイズも違う世界中の犬猫に与える基準を作るというのがとても無理な話だと思います。その上でかなり大まかで許容範囲の広い値になっているであろうことも理解できます。
「ドライフードを与えるべきではない」という考えも、栄養も考えて全て手作りできるのであればそれも正しいかと思います。
自分にとって必要な意見はありましたか?
総合栄養食についてだけでも多くの考え方があり、どれが正しいのか、どれを信じていいのかわからなくなるのではないでしょうか。
この中から飼い主が自分の愛犬・愛猫にとって必要だと思うものを選んでいきます。
私は愛犬・愛猫の健康をベースに考えています
ペットフードについて議論されたり、疑問を持つ場合のほとんどは愛犬、愛猫の健康が崩れた時です。
非常に安価なドライフードだけ与えていても20年も生きる犬猫もいれば、数年で皮膚疾患などが出てしまう犬猫もいます。
私個人的な考えとしては健康をベースに考えるべきと考えていて、ドライフードを食べていても犬猫が健康であればそれでよく、そうでなければ手作りやその他の方法を考えていくべきだと考えています。
犬猫と飼い主の相互の幸せを考えて
- 健康だから毎日同じものだけを与えていればいいのか
- 粗悪なものでもいいのか
- 最初から手作りにしていればそもそも病気にならないのではないか
- ドライフードを与えていて病気になってからじゃ遅い
などの意見も頂きますが、私としてはそう極端な話ではなく、その辺りは犬猫の幸せについても考えて飼い主が選択していけばいいように思います。
このように多くの意見の中から、どれが飼い主と愛犬・愛猫に必要かを自分で選択していくことが大切だと感じています。
まとめ
- 情報の鮮度は第一人者の話や書籍を確認する
- 情報の真偽は講義や書籍などから得る
- ひとつの事項にも多くの考えがある
- 飼い主自身で必要な情報を選ぶ
情報は常に更新されていくということを念頭に、ソースを確認していくことも大切だということがわかりました。得た情報を鵜呑みにせず、自分で調べてみる癖をつけるようにしましょう。