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キャットフード・ドッグフードに含まれるデンプン
キャットフード勉強会の猫田さんから質問があったのでキャットフード・ドッグフードのデンプンについて書いてみます。
猫はデンプンを上手く消化できないんでしたよね。能力的に犬の2.5倍も劣るとか。
そうですね。まさにキャットフード勉強会からの質問は「ロニーキャットフードではじゃがいもが使われているのでなぜか」というご質問でした。
デンプンの糊化という性質
デンプンには糊化(α化)という性質があります。デンプンに水を加えて温めると水を吸収して膨らみ、粘性がでてきます。
お米と同じですね!
まさにお米で、固い状態のお米(β)は人も消化することができません。このためお水を足して炊くことでお米をα化して消化吸収ができる形にして摂取します。
炊いたばかりのお米が冷えてくるとまたβ化し始めますが、元通りにはなりません。このため冷えたお米は固いけど食べることができますね。
この糊化という性質を利用してドライフードを固めています。このためデンプンがないとドライフードは作れないんですね。
デンプンの油脂の乳化を安定させる性質
人の食べ物を作る時も油を乳化させることが美味しい料理を作る大切なポイントです。本来混ざらないものを均一に混ざる状態を乳化といい、デンプンには乳化を安定させる性質があります。
イタリア料理の基本の乳化ですね!パスタではこれができないと美味しいパスタは作れないんですよね!
なぜじゃがいものデンプンなのか
デンプンは様々な食物に含まれています。
やっぱり一番に思いつくのはお米や小麦でしょうか。
そうですね。そのあたりの作物は穀物なのでグレインフリーとしては外すことになりますね。となると芋類、豆類からとるのがいいと考えます。この時の選択理由はいくつかありますのでご紹介します。
- 作物として供給量が多いもの
- 価格が高くないもの
- 猫にとって問題がないと実績があるもの
- 粘度が高いもの
- 使いやすいもの・透明度が高いもの
メーカーによって重視する部分は変わってくると思いますが、上記が大まかな理由になってくると思います。
作物として供給量が多いもの
ペットフードは非常に多く作られますので、供給量が不安定な原材料で製造すると安定して供給することができません。これではどれだけいいフードであっても、製造販売者も飼い主も大変な思いをしてしまいます。
このため「供給量が安定している」ということはペットフード作りでは非常に重要視されるポイントでデンプン選びに限った話ではありません。
価格が高くないもの
供給量が安定して多いものは価格は高くない傾向にあるので、自然と価格が高くないものになる傾向にはありますが、例えばじゃがいもとサツマイモならどちらも安定して供給される作物ですが、じゃがいもの方が供給量は多く、安い傾向にあります。
猫にとって問題がないと実績のあるもの
やはり多くのキャットフードに使われていて実績のある原材料を選ぶことが大切です。実際に食べている猫が多くいて、問題が起こっていないという結果が出ていますのでレシピを作る上でも安心感があります。
結果的に多くの犬猫にマッチしたキャットフード・ドッグフードになります。
粘度が高いもの
デンプンの糊化を利用してドライフードを固めるので粘度が高い方がしっかりと形作ることができます。
ドライフードは熱で乾燥したものですから固まらないとポロポロです。それをまとめるために油脂を使い(まとめるだけではないですが)、固めるためにはデンプンの糊化を利用します。
このため粘度が高いものは安定したキャットフード・ドッグフード作りを助けてくれます。
じゃがいものデンプンはα化が55度と低い温度から始まり、どんどん膨潤していきます。粘度は他のデンプンよりも高くて非常に扱いやすいデンプンです。
使いやすいもの・透明度が高いもの
じゃがいものデンプンはいわゆる片栗粉ですので、最も用途が広く、透明度が高くてドライフードの色彩に影響がありません。
デンプンがゼロのキャットフード・ドッグフードは作れない
こうしてデンプンの性質を利用して美味しくかつ形の整ったキャットフード・ドッグフードを作ることができます。
糊化と乳化の安定ですね!
デンプンを含む食べ物のなかで扱いやすく供給量のあるものがじゃがいもということで、じゃがいもを選定しています。
キャットフード・ドッグフードの炭水化物について。犬はエネルギー源に、猫はデンプンの消化吸収が苦手ですが全く不必要ではない
デンプンが”多くないと”ドライフードは作れないのか
デンプンを意識して原材料を選ばなくても、デンプンは多くの食品に含まれていますし、極端な話ですと肉類だけでもドライフードは作れます。
ただ崩れやすいのと、肉オンリーでドライフードを作ることはなかなかありませんので、デンプンがそういう作用をするので固まりやすくするために必要というだけで、わざわざでんぷんを入れるようなことはありません。
でんぷんがなくてもオーブン型でポロっと崩れる感じのものであれば作れるかもしれませんね。
現状では私が確認した工場ではエクストルーダーを使用して芋類や豆類を除いたグレインフリーを作るのはなかなか難しいようです(でんぷんを添加したりしない場合)。どこまでできるかは製造代金にいくらかけるかという問題も出てきますので、何で代用するかという代替法は残されているかもしれません。
猫は加工した炭水化物を利用できる
猫はでんぷんの利用が苦手と言われていますが、そのままではなく加工した炭水化物はしっかり利用することができ、ドライフードの40%以下であれば問題がないとされています。かつ、多くのキャットフードは30%を下回る位で作られています。
だいたいはドッグフードの方がキャットフードよりタンパク質は抑えめにし、炭水化物量が増えています。
こうした科学的な検証からドライフードを製造する上で必要分を保ちつつ、かつ猫の栄養や消化吸収やコストも考えながら選択されています。
まとめ
- ドライのキャットフード・ドッグフードを作る上でデンプンは必要
- デンプンの糊化と乳化の安定の効果を利用する
- 使われている実績の多い原材料で扱いやすいものがじゃがいも
猫はデンプンの消化吸収が苦手ですが、デンプンの性質を利用してドライフードを製造していることがわかりました。デンプンとなる原材料選びも考えて行われているんですね!