猫のアミノ酸について。サプリでアミノ酸欠乏症を引き起こす可能性あり

猫にとってとても大切なタンパク質。それらを構成するアミノ酸について勉強していきましょう!
例えばたんぱく質の場合、構成するアミノ酸は「相互作用」が非常に重要です。
例えば片方を多く摂取するとそちらを過剰吸収し、もう一方が吸収されずに不足するということが起ります。
これが非常に難しいところで、例えばリジンが不足したからリジン単体で補うとします。この時リジンを与えすぎるとアルギニンが分解されてしまい、アルギニン欠乏症になります。
更に小腸にリジンが多くなるとリジン優先で吸収し、少量のアルギニンの吸収が阻害され、アルギニン欠乏症を起こしてしまいます。
他には「リービッヒの樽(ドベネックの桶)」と呼ばれている、バランスに対する考え方があります。樽(桶)は複数枚の板でぐるっと一周囲って水を溜められるようになっていますが、この板が1枚短いと、水はそこまでしか溜めることができません。
アミノ酸も一番足りていない栄養素に合わせてしか利用できず、残りは排出されてしまいます。
また過剰なアミノ酸次第ではリジンで解説したように同じことが起こり、他のアミノ酸の欠乏を起こす場合があります。
鶏卵は他のアミノ酸を含むたんぱく質に比べて圧倒的にバランスが優れています。犬猫が要求するアミノ酸要求バランスに近い値を持っています。
アミノ酸のバランスがどれだけ大切かをあらわす実験として、ニワトリの雛を育てる時に、穀物中心に魚粉を混ぜ、アミノ酸も補正した飼料は20%以上のたんぱく質が必要だったが、鶏卵抽出たんぱく質では14%で足りてしまったことが報告されています。
キャットフードでも多くの場合乾燥全卵が使われています。鶏卵は栄養素を考慮して外せない原材料のひとつです。
このように高タンパクであればいいというわけではなく、どれだけバランス良く、効率よく摂取できるかが重要です。
つまり猫にとってアミノ酸のバランスが優れているキャットフードが本当の意味で優れているキャットフードとも言えます。
猫は肉食ですのでたんぱく質であるアミノ酸はとても大切な栄養素です。
基本的に総合栄養食であるドライフードを食べていれば不足する栄養素はありません。
猫にタウリンが必要ということがわかっていない時代には、キャットフードを与えていてもタウリン不足で心筋症や失明、繁殖能力の低下などを起こす猫が多発していたこともありました。
現在ではそのようなことはなく、飼育環境によっては20年以上生きる猫もあり、寿命は延びる一方です。
手作りキャットフードは気になる添加物などもなく、猫にとって最良のものを与えられる手段のひとつですが、必要栄養素量を保つという意味では非常に難しい手法です。
調理前の原材料の栄養素と調理後の栄養素も違っていますので、個人で栄養素を把握して与えるのは計算された管理が必要です。
飼い主が飼い猫のことを考えて作られた手作りキャットフードは大変素晴らしいものです。
その手作りキャットフードで愛猫を苦しめてしまわないように、しっかりとした管理の下で行うようにしましょう。
人間の場合、足りない栄養素をサプリで補給するという考え方は一般的になっていますが、猫の場合は必ずしもそうではないことがわかりました。
日頃から栄養の整った食事を与えることを意識して、万が一の時は獣医の診断や意見を聞いて活用するのがいいかもしれませんね!
株式会社ヒューマル代表取締役。ペットフード専門家。「動物にも食育を」を掲げて2016年に会社を設立。ヨーロッパを巡って自身の希望レシピを製造できるペットフード工場を探し出し、オリジナルキャットフードを開発。ペットフード販売士、ペット栄養管理士、愛玩動物飼養管理士、ペット防災指導員、ペット共生住宅管理士、保育士などの資格保持者。詳しくは紹介ページへ
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