キャットフードのカルシウムとリンについて。特に手作りキャットフードはバランスに注意!上皮小体亢進症、腎不全

骨や歯を形成するカルシウム。人間もイライラした時はカルシウムを取ってなんて言われていますが、猫の場合はどんな作用があるのでしょうか。また関係が強いといわれるリンとの関係についても教えてもらいます!
骨粗鬆症という言葉も一般的になり、カルシウム摂取の意識は高まってきていると思います。カルシウムは主に骨や歯を作る成分として認識されています。実際にカルシウムの99%が骨や歯の構成成分として働きます。
しかし残りの1%にも非常に大切な働きがあります。
低カルシウム(7mg/dL位)の場合はイライラしたり、食欲不振、下痢、嘔吐、脱力や、ふるえを起こす場合があります。酷いときには呼吸停止、QT間隔延長が起こります。
高カルシウム(15mg/dL位が1~2か月続く)の場合は元気がなくなり、食欲不振、下痢、嘔吐、神経過敏、多飲多尿、膀胱結石、酷いときには腎不全、QT間隔延長が起こります。
そのカルシウムを狭い範囲内でコントロールしているのが喉にある1mm程度、大きくても4mm程度の上皮小体です。上皮小体は全部で4つあり、小さいにも関わらず立派な臓器です。
この上皮小体がPTH(副甲状腺ホルモン)を出し、カルシウムとリンのバランスを保っています。
カルシウムを多く与えると骨が異常発達し、骨の端が早く閉鎖することで関節が曲がったり、足が異常な方向に向いたりします。
このようにカルシウムは人間では健康食のように聞こえる一面もありますが、犬や猫にとってはバランスが非常に大切な成分です。
リンも8割は骨や歯の構成成分となり、残りが筋肉、脳、神経に存在しています。体液のpH調節を行ったり、エネルギー代謝にも関与しています。
PTH(副甲状腺ホルモン)は骨からカルシウムを取り出して血中カルシウム量を上げ、リンを腎臓で排出して血中リン量を下げることでカルシウムやリンの血中濃度を調節しています。
このため血中にリンが多くなるとリンを体外に排出しようとPTHが機能して、骨からカルシウムをひっぺがすことでどんどん骨がもろくなってしまいます。
こうした理由を含む、副甲状腺ホルモン分泌が過剰になった状態を上皮小体亢進症といいます。
肉にはカルシウムが少なく、リンが多いので高リン血症になってしまいます。
その割合は推奨カルシウム:リンが1~1.5:1といわれているバランスに対し、肉や臓物ばかりを与えていると、1:16~35ととんでもなくリンが多くなります。
結果、骨がもろくなってしまいます。
キャットフードではバランスは調整されていますので、心配することはありませんが、手作り食の場合には注意が必要です。
以下の記事も是非参考にしてみてください。
関連記事:猫に必要なミネラルとは?欠乏症と過剰症、相互作用について
腎臓を患い、長期の腎不全の結果、高リン血症、低カルシウム血症となり、結果的に上皮小体亢進症を起こし、骨からカルシウムをどんどん放出することで、顎の骨がゴムのように柔らかくなってしまうラバージョーと呼ばれている状態があります。
このようにカルシウムとリンのバランス、甲状腺ホルモンの働きは犬猫の健康に大きな影響を与えています。
キャットフード選びではカルシウムとリンのバランスについて気に掛けている飼い主さんも多いと思います。どちらも適量を保つことが大切です。
特に猫が肉食だからと手作り食で肉だけを与えたりしないように注意しましょう。
株式会社ヒューマル代表取締役。ペットフード専門家。「動物にも食育を」を掲げて2016年に会社を設立。ヨーロッパを巡って自身の希望レシピを製造できるペットフード工場を探し出し、オリジナルキャットフードを開発。ペットフード販売士、ペット栄養管理士、愛玩動物飼養管理士、ペット防災指導員、ペット共生住宅管理士、保育士などの資格保持者。詳しくは紹介ページへ
スギさん
エノおじさん