キャットフードに卵を使う理由は?完全栄養食と言われ、欠かせない原材料のひとつ。ただしコストは高い

完全栄養食ともいわれる卵。生卵と乾燥全卵はほとんど栄養価にも違いがなく、ペットフードにも使いやすい最適な原材料です。
キャットフードに直接生卵を使うことはできませんが、乾燥全卵は非常によく使われる原材料のひとつです。
その理由は完全栄養食とも言われている多くの栄養素。生物が成長するために必要な栄養素が詰まっているわけですからペットフードには最適と言えます。
猫にとっては、卵の良質なタンパク質も魅力ですし、必須アミノ酸も含んでいます。
ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素、セレン、モリブデン
ビタミンA、D、E、K、B群、ナイアシン、葉酸、パントテン酸、ビオチン
卵はほぼ全ての栄養素が含まれている非常に優れた原材料です。
残念ながら生卵の状態ではドライフードに使用することができませんので、乾燥した卵を使用します。
パン作りやお菓子作りに使用しますので見たことがある人もいるのではないでしょうか。だいたい乾燥全卵1に対し水3の割合で溶かして使用します。
生卵は保存が効きませんが、乾燥全卵は1年程度と保存可能期間も長いです。
栄養面に違いはないんですか?
卵は加熱によってビタミンB群、タンパク質など多少の減少がありますが、生卵と比べても栄養価にほどんど違いがありません。
それを表すように食品データベースなどでは、鶏卵、全卵、乾燥全卵などが同一で紹介されていますので、多少の違いはあれどほぼ同じと考えて良さそうです。
こうなると、ペットフードの場合はわざわざ生卵を使うメリットがなく、使用しやすい乾燥全卵が使われています。
あまり情報がないところですが、気になる部分ではないでしょうか。
- 全卵、卵白、卵黄の乾燥法には「凍結乾燥」(freeze drying)、「噴霧乾燥」(spraydrying)、「浅盤乾燥」(pandying)などがある。げんざい、工業的には噴霧乾燥法が最も広く用いられている。「噴霧乾燥法」は、高圧ノズルから液卵を熱風(140~180℃)中に微細な霧状にして吹き出し、液卵を粉末状に乾燥させるものである。
- 霧状に噴霧させた液卵は、乾燥室で1秒以内に水分が5%程度になる。乾燥室は熱風と噴霧の仕方に種々の方式があるものの、乾燥卵白の場合はほとんど「水平並流型(箱型)乾燥室」が用いられている。
- 乾燥卵白には起泡性が残っているが、乾燥全卵ではそれが消失し、また、卵黄の乳化力も乾燥により低下する。これらの品質の低下は、卵黄の「LDL」(lowdensitylipid)脂質の球状構造が乾燥によって破壊され、球状体内部の「トリグリセリド」が露出するためであると考えられている。
卵の味、風味はないといっていいほどありません。卵っぽいという感じでしょうか。
つまり生卵とほとんど変わらない栄養面であったり、卵の特色を生かすもので、卵料理という感じではないということですね。
そして卵は高いということはイメージとしてわくかと思います。
乾燥全卵はその卵を乾燥させたものですので、卵よりも手間がかかっているといえます。
一般的に手に入る乾燥全卵は1kgで3~4,000円します。
なんと肉が豊富なプレミアムキャットフードが大体1.5gで4,000円位ですから、乾燥全卵の方が高いんですよ。
これをペットフードに使うわけですから、量が嵩むとかなりのコストがかかります。
なんといってもペットフードは10トンなど莫大な量で製造します。ドライフードは乾燥しているので、乾燥前の原材料だとそれは凄まじい量です。
ペットフードに乾燥全卵を使用する時は原材料の上位にくるほどではありませんが、原材料記載欄の最後の方に書かれる微量でもなく、普通という言葉もおかしいですが、中くらいの量で使用されます。
乾燥全卵を使用することでドライフードの栄養素を整えやすいというメリットもあるからです。
コストと栄養価、作りやすさなどを考慮して、使うなら使う。使わないなら使わないといった極端な感じになると思います。
株式会社ヒューマル代表取締役。ペットフード専門家。「動物にも食育を」を掲げて2016年に会社を設立。ヨーロッパを巡って自身の希望レシピを製造できるペットフード工場を探し出し、オリジナルキャットフードを開発。ペットフード販売士、ペット栄養管理士、愛玩動物飼養管理士、ペット防災指導員、ペット共生住宅管理士、保育士などの資格保持者。詳しくは紹介ページへ
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