ドライフードの原材料について知っておきたいこと。注意すべき原材料、内容量、成分バランスについて。

キャットフードは本当に沢山の種類がありますが、結局どれがいいかわからない時に「原材料」を確認すればいいという話を良く聞きます。では実際にどこを見ていけばいいのでしょうか。
今回は原材料の中でも注目してみて欲しい点を重点的にお話します。
キャットフードを購入する際には以上の5項目を確認するようにしてください。それぞれに注意点がありますので順次説明していきます。
日本人は日本で売られているものに信頼感があります。疑問を抱かないんですね。実際米・小麦・トウモロコシが多く含まれているキャットフードでも今まで何も問題が起こりませんでした。そして安く製造でき、安く購入できます。安全で安いというメリットがあるので特に変える必要性が見つからないでしょう。
そしてペット先進国であるヨーロッパなどに比べると日本は法整備も含めてペット後進国といえるほど遅れを取っています。
価格を高くしてまで変化を求めないのが、米・小麦・トウモロコシが高配合のまま作られ続けている理由のひとつでは感じています。
キャットフードを見直す一番多いきっかけが「猫が体調を崩したから」です。しかし体調を崩したり歳をとって食べる量が減ってきた時が特に問題です。
穀物の多いキャットフードは摂取量も多めなので、食べられる量が減ると栄養が足りなくなる場合もあります。体調を壊す前に米・麦・トウモロコシの内容量を確認してみてもいいかもしれませんよ。
豆類は、含有量、消化吸収率共に肉類には劣りますが豊富な植物性たんぱく質を含んでいますので、価格を抑えてたんぱく質をあげるためには豆類は重要な原材料と言えます。価格とのバランスを保つ材料ともいえるのではないでしょうか。
芋類は豊富な炭水化物によるエネルギー源として活用されます。またビタミンやミネラルも豊富です。
そしてそれぞれ豊富な食物繊維も魅力です。グレインフリーは食物繊維が少ない傾向にあるため、豆類や芋類でカバーします。
大豆の場合はアレルギーの懸念があります。
また、猫はたんぱく質と脂肪があれば炭水化物をほとんど必要としない動物です。体の構造上、乾物量で40%程度のでんぷんや砂糖は消化できる程度なので、炭水化物が多過ぎるのは余りおすすめできませんが、必要ないものとは考えられていないので、適度であれば問題はないと思いますよ。
それではカルシウム、リン、マグネシウムの関係についてお話をします。
リンとカルシウムは結合することでリン酸カルシウムとなり、これが骨の主成分になります。一番重要な点はこのバランス。理想は1.2~1.5:1位と少しカルシウムが多いほう良いようです。
魚を豊富に含む製品の場合はカルシウム、マグネシウムが多くなりがちなので注意が必要です。低価格帯のキャットフードは多くがこのバランスはうまく取れていないのが現状です。
各工場などによってAAFCOの発行年の適用年が違いますので、見解には若干のずれがみられますが、私は以下のような話を確認しています。
現在AAFCO2016年度版がありますが、こちらは大幅に項目変更がありましたので、現在はAAFCO2014年度版を最新に、1997年度版まで採用しているメーカーがあります。ひとまずこの場では2014年度版でお話します。
まず、上で紹介した通り、カルシウムとリンは相互関係があり、1.2:1位がよいと言われています。これに加えてAAFCO2014年度版ドライを確認頂きますと、マグネシウムの値が導き出されます。
成長期の猫でカルシウム:リン:マグネシウムは最少量換算で1.0%:0.8%:0.08%となっています。
成猫では0.6%:0.5%:0.04%となります。こちらは比率で考えますと1.2:1.0:0.08となります。
注意点としてはマグネシウムの値には但し書きがあり、尿のph値にもよりますが、マグネシウムの値が増加するとストルバイト結石になる可能性が高くなるとされています。
If the mean urine pH of cats fed ad libitum is not below 6.4, the risk of struvite urolithiasis increases as the magnesium content of the diet increases
こうした観点から主にマグネシウムは最低量の0.08から1.0位を基準に考えられています。
カルシウムはリンともマグネシウムとも相互関係がありますので、ここから逆算すると概ね、カルシウム:リン:マグネシウムの値が1.2:1:0.08位になるという考えのようです。
ただ、最近はペット栄養学会などでもマグネシウムの値は0.09%-0.18%位だとシュウ酸カルシウムになりやすいのではないか、0.19%-0.35%位がいいのではないかと言われてきています。
しかしAAFCO2016年度版ではマグネシウムの最低量は0.06%まで下げられてきている状態ですので、かたやマグネシウムを増やすとストルバイトになりやすい、かたやシュウ酸になりやすいと意見が相反しており、研究が進められているところであるようです。
マグネシウムの値を上げるのであれば、カルシウム、リンも上げる必要があり、下げるのであれば下げる必要があることから、フード製造上では長年問題がないとされてきた実績のある値が重要視され、徐々に徐々に変更が適用されるようになっています。
こうして私は上記バランスにて紹介させて頂いております。
この辺はAAFCOの新バージョンなどが出ることで、徐々に変わっていくかもしれませんね。
現状は法整備も進み、原材料に規制がかけられているのであくまで可能性でしかありませんが、ミートミールと表記される原材料は気に掛けておきたいところです。
簡単に説明すると、ミートミールはAAFCOの定義では「血液、毛、蹄、角、皮、糞尿、胃、及び第一胃の内容物を除いた、哺乳動物組織から得られるレンダリングされたもの」で、つまり哺乳動物ならなんでもいいということになります。
AAFCOの定義に沿っていれば「血液、毛、蹄、角、皮、糞尿、胃、及び第一胃の内容物を除いた」ということなので、食べられないものは入っていません。
ただ法律ではないので、沿っていないことも考えられないわけではありません。酷い話では病気で亡くなったり、死後腐敗が進んだ鳥をまぜこぜに粉砕して原材料とすることもあるといいます。(実際に自分の目で確認はしていません)
また肉骨粉には注意が必要です。
高温で処理するためにウイルスなどは死滅しますが、狂牛病の原因となったプリオンはたんぱく質だったため死滅せずに広がってしまったということがありました。
このように安価で作れて、安価で購入できるメリットはありますが、そのメリットと比べて考えてみてください。
次は動物性油脂の危険性の話です。低品質な動物性油脂の場合、様々な死んでしまった動物を粉砕して精製した脂を使用する場合があります。
病気で亡くなった動物も混ざっていたら?糞便も全て?しかもこの脂は酸化してしまうので酸化防止剤などの添加物を配合しますが、この時に使う添加物は表記しなくてもいいことになっています。
キャットフードは高温で作られるのでボソボソになります。それをまとめてキャットフードの形にするために油脂で成形しています。また嗜好性をプラスする意味もあります。
このため使わなくてはいけない原材料のひとつなので、選択時には鶏脂(鶏肉油脂)などはっきりと材料が書かれているものがおすすめです。
植物性油脂もおすすめですが、植物性油脂だけでできているものはかなり少ないのが現状です。理由は植物性油脂では猫が好む風味がでないからであることと、動物にとっては動物性油脂は必要なもののひとつだからです。
ただし、動物性油脂が悪いのかというとそういうことではなく、例えば原材料が特定できる場合は明確にして示すと良いとされていますので、鶏からのみ作っているのであれば鶏脂と表記されます。牛であれば牛脂ですね。
原材料が特定できるからといって、上記のすべての問題が解決されるワケではありませんが、動物性油脂自体はペットフードに必要な原材料のひとつですので、このように原材料が特定できる表記の製品を選ぶと良いかと思います。
発がん性のある添加物についてはこちらでも話しましたが、簡単に話すと、そうした危惧のあるものにはBHA、BHTなどがあり、酸化防止剤として使われています。
BHA、BHTは食品添加物としては認められていますが、ともに発がん性があることが指摘されています。しかしBHAは前胃がない動物には発がん性の兆候は見られなかったと結論づけています。エトキシキンは人が食べるものへの添加は認可されておらず、農薬登録もされていない添加物です。
そう思いますよね。しかしBHAの発がん性はわらびの3分の1、ふきのとうの2分の1以下と言われています。このように摂取する量の問題であり、研究結果として安全である値が取られています。
体の小さい猫はがんになれば人間よりもずっと早く死んでしまいます。人間よりもというわけではないですが、気をつけておいて損はない項目だとは言えるかもしれませんね。よくチェックしてみてください。
株式会社ヒューマル代表取締役。ペットフード専門家。「動物にも食育を」を掲げて2016年に会社を設立。ヨーロッパを巡って自身の希望レシピを製造できるペットフード工場を探し出し、オリジナルキャットフードを開発。ペットフード販売士、ペット栄養管理士、愛玩動物飼養管理士、ペット防災指導員、ペット共生住宅管理士、保育士などの資格保持者。詳しくは紹介ページへ
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