猫に必要なミネラルとは?欠乏症と過剰症、相互作用について

猫にとっても大切な五大栄養素のひとつ、ミネラル。ミネラルも多くの種類があり、猫の健康とも大きく関わっています。そんなミネラルについて勉強していきましょう。
ミネラルは灰分とも呼ばれています。これは焼却した後の灰に多く含まれているからです。
カルシウムやカリウム、鉄など人間も必要とするミネラル類は猫も犬にも必要です。必須ミネラルと非必須ミネラルがあり、更に多量ミネラルと微量ミネラルに分けられます。
多くのミネラルが添加物としてキャットフードに添加されています。
代表的なものとして、鉄、銅、亜鉛、マンガン、ヨウ素、セレンなどがあります。
ビタミンの時と同じように、ドライフード製造時に必要摂取量の範囲内で添加しているんですね。
ミネラル | 欠乏症 | 過剰症 |
---|---|---|
カルシウム | くる病、骨軟症 | 他のミネラルの吸収障害 |
リン | 脱灰減少 | |
カリウム | 筋力低下、成長不良、心臓・腎臓障害、繁殖低下 | ナトリウム欠乏症 |
食塩 | 成長低下 | |
マグネシウム | 筋力低下、興奮、痙攣 | 下部尿管疾患、成長低下 |
鉄 | 貧血、虚弱、疲労 | 食欲不振 |
銅 | 食欲減退、成長低下、下痢、産毛の低下と退色、貧血、骨疾患、免疫力低下 | 貧血、黄緑色嘔吐、めまい、胃痛、肝炎、成長低下 |
マンガン | 成長不良、繁殖障害 | 繁殖障害、不完全白皮症 |
亜鉛 | 成長不良、食欲不振、精巣萎縮、削痩、皮膚病変、皮膚・被毛の異常、二次感染、免疫力低下 | ※(悪心、下痢、嘔吐、腹痛、吸収すれば発熱) |
ヨウ素 | 皮膚・被毛の異常、活動低下、無気力、嗜眠 | 食欲不振、発熱 |
セレン | 繁殖障害、浮腫 | 全身脱毛、蹄脱落、跛行、食欲減退、成長低下 |
コバルト | ※(食欲低下、異嗜) | 成長低下 |
鉛 | 腹痛、嘔吐、下痢、慢性中毒症成長低下 | |
ヒ素 | 嘔吐、胃痛、出血、下痢、湿疹性皮膚疾患 | |
カドミウム | 悪心、嘔吐、痙攣、下痢、腹痛、慢性中毒性腎臓障害、骨軟化症 |
出典:愛玩動物飼養管理士テキスト
このように多くの欠乏症、過剰症があります。どのミネラルも多すぎても少なすぎてもダメなことがわかります。
また、この表では触れていませんが、それぞれのミネラルのバランスも非常に大切です。例えばカルシウム:リン:マグネシウムのバランスについては尿路結石の原因としてよく話されます。
ミネラルはそのほとんどが相互作用がありますので、欠けてもいいものはありません。
ただし鉛、ヒ素、カドミウムには注意しなくてはいけません。これらはBHTやBHA、BHC、メラミンなどが定められているように、鉛、ヒ素、カドミウムは汚染物質としてペットフードに含まれていい上限量が定められています。
なにかと合わさることでその効果が大きくなるミネラルがあります。
吸収率が余りよくないカルシウムを助けるのがビタミンDです。更に血液中のカルシウムを骨に吸着する時にビタミンDが必要になります。
カルシウムを効率よく吸収し、無駄なく使うためにビタミンDが必要です。
鉄は血になるとよく言われますが、これは鉄が赤血球を作るのに必要だからです。しかし鉄だけではどうにもなりません。銅は鉄を運ぶ役割を担っているため、赤血球を作る場所に銅が鉄を運び、初めて赤血球を合成することができます。
セレンはビタミンEと協働することで抗酸化作用をアップさせます。
現在では多量必須ミネラルはカルシウム、リン、カリウム、ナトリウム、塩素、硫黄、マグネシウムの7種類。
微量必須ミネラルは、鉄、亜鉛、銅、モリブデン、セレン、ヨウ素、マンガン、コバルト、クロムの9種類と言われています。
その他に比較的新しく認められたものにヒ素、ニッケル、ケイ素、バナジウム、フッ素、スズ、リチウムの7種類があります。
出典:動物栄養学
キャットフードの場合、カルシウム:リン:マグネシウムの値を気にすることがありますが、これは猫に起こりがちな尿路結石の原因と考えられているからです。
その他のミネラルは話題に上がることの少ないミネラルですが、それぞれが相互に関係しあい、支えあっています。
例えばですが、イオウはサイエンスダイエットPRO、コバルトは銀のスプーン、モリブデンが添加されているキャットフードが思いつかないですが、豆類や海苔なんかに含まれています。豆類はキャットフードによく使われますし、うちには海苔がとても大好きな猫がいました。
それぞれ余り見かけないかもしれませんが、普段目にしない栄養素でも相互作用、拮抗作用としてそれぞれがしっかり働いています。
例えば”小動物の臨床栄養学、マークモーリス研究所 2001”のミネラルの相互作用によると、カルシウムはコバルト、リン、硫黄、亜鉛、マグネシウム、ヨウ素、マンガン、銅と相互作用があります。
リンは亜鉛、マグネシウム、モリブデン、ナトリウム、マンガン、銅、ホウ素、カルシウム、セレンと相互作用があります。
マグネシウムはリン、カリウム、カルシウム、ホウ素、マンガンと相互作用があります。
この3つだけでもほぼ全てのミネラルと相互作用を持ち、効果をアップしたり、吸収を抑制したりすることで生命維持に役立っています。
株式会社ヒューマル代表取締役。ペットフード専門家。「動物にも食育を」を掲げて2016年に会社を設立。ヨーロッパを巡って自身の希望レシピを製造できるペットフード工場を探し出し、オリジナルキャットフードを開発。ペットフード販売士、ペット栄養管理士、愛玩動物飼養管理士、ペット防災指導員、ペット共生住宅管理士、保育士などの資格保持者。詳しくは紹介ページへ
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