オイルコーティングをしたペットフードは酸化が心配!は大きな「誤解」!コーティングの世界を紹介します。

ペットフードのオイルコーティングとは?”酸化が心配”という情報は全くの誤解だった!本当のコーティングの世界をマッサンに解説してもらいました!
オイルコーティングとはその名のまま、成型されたフードに鶏などの油分をかけて嗜好性を高めるものです。
ただし、実際には油をフードに直接かけるというイメージより、液体タイプや粉末タイプで被膜するイメージに近いものです。
このためなぜ日本では”オイル”コーティングというようにオイルが付いて呼ばれているのか、その情報元が私にはわかりません。
今のところ海外で私が確認しているところはどこも「コーティング」や「トップコート」と呼んでいます。”オイル”はつきません。
オイルコーティングに近いものならFat Coating(ファットコーティング)という言葉を使っているの聞いたことがあります。
このジャンルは日本ではほとんど知られていないと思いますが、実はとても深い世界なんです。
飼い主へのアンケートでは「愛犬愛猫のフードは美味しそうな匂いがするものを選びたい」が60%以上、また、「ペットフードを購入するにあたって匂いは重要な購入決定のポイントである」が25%以上という結果が出ています。
つまり、犬猫の好きな匂いが、必ずしも飼い主にとってもいい匂いではないはずですが、人と犬猫が共生する上では、飼い主にとってもいい匂いであることが求められています。
「人も犬猫も満足する幸せな食事の時間を過ごすことができる」ことを科学的に追求しているのがこのトップコートの世界です。
凄い世界ですね!やっぱり世界は広いんですね…
日本では「オイルコーティングは酸化する」みたいな記事が多て、そこから突っ込んだ内容は見られないので全く知らない世界でした!
製造原理を考えると、ペットフード自体を作る工程とトップコートの工程は分かれている方が合理的であり、かつ、専門性も高めることができますよね。
ペットフードは原材料や製造方法、栄養バランスについて研究し、トップコートは栄養よりも、嗜好性や香りについて研究する機関で分けた方がいい結果を生むことは自然なことかと思います。
「美味しそう」かつ「美味しい」ドライフード作るというのは意外と難しいということです。
最近「オイルコーティングをしていると酸化が心配」という質問を受けました。
確かに、厳密には使用油分量が変わるので、同一の製品で、コーティング前とコーティング後であれば違います。
しかし、それよりもキャットフード自体の違いによる油分量の違いを考えたことはありますか?
なぜか「コーティングは悪」であるように言われがちですが、もしそうであれば脂質が10%と20%のドライフードを比べたら、圧倒的に「脂質20%のドライフードの方が酸化してしまう=悪」ということになってしまいます。
しかしそんな議論は見かけたこともありません。
それだけ「オイルコーティング」という言葉が大きなイメージを持っているということです。
肉が原材料のほとんどを占めているドライフードにおいて、油分だけが内側に閉じ込められているということはありません。
あまりに極端な話ですがわかりやすく例えますと(笑)野菜たっぷりハンバーグを作ったとします。例え余計な油を使わずにカリッカリに焼いたとしても外側が野菜になって、油分が内側に閉じ込められるということはありません。ってこれは例えになってないですか?(笑)
ともあれ、このように、油分は全体に含まれ、外側も同じように全体に油分があります。
ドライフードは多孔質ですから、酸化するかしないかで言えば内部も変わらず酸化します。
まぁその言い方が完全にあっているかは別として、そんな感じではあります(笑)
例えばですが、オイルコーティングだけで全体の1%脂肪分を増やすということはできません。そんなことをすればベトベトで、パッケージしたら、くっついたり染み出したりと大変なことになります。
もしかしたら油を直接拭きかけているドライフードもあるかもしれませんので、油を拭きかけていないとまでは言えませんが…
ほとんどのフードはやや油分を感じる程度のサラサラ、もしくはしっとり位までの質感ではないでしょうか。
コーティングについて私が知っている一例を紹介します。
コーティングは真空被覆機で行います。塗布機内は真空の為、油分は酸素に触れることはないため、酸化は進行しません。この真空被覆機で液体(リキッド)タイプや粉末を粒に被覆していきます。粉末の場合は、粉末を粒に付着させるためにオイルが使われます。
使用するまで大量の油分を機械内に置いていては酸化してしまいますし、酸化した油分でコーティングしても、嗜好性を上げるという目的が達成されません。
このように出来る限り酸化の対策が講じられています。
コートの仕方から、コートする形状や原材料はメーカーによって違い、一概にこれというわけでもありませんので、違う方法もあるかと思います。
液体や粉末には油分が含まれていますので、オイルコーティングというのも間違いではないのですが、油を直接ネトっと吹きかけるようなイメージではないことを知ってもらえればと思います。
ネイチャーズバラエティなどはドライフードをフリーズドライ素材でコーティングしていますが、これもコーティングのひとつの手法です。
このフリーズドライコーティングをみて、オイルコーティングだ!酸化が心配だ!というイメージは持ちますか?
持つ方もいるかもしれませんが、新鮮そうな肉でコートされていて美味しそう!と感じる方の方が多いのではないでしょうか。
ドライフードは開封すると美味しそうな香ばしい匂いがするものが多いと思います。しかし皆さんの経験上でも、油そのものが香ばしい匂いを発するというのはなかなかありませんよね。
何かにただの油をかけてみても、美味しそうな匂いがすることはないと思います。
そのため、目的の嗜好性が高まるようにトップコートを各社試行錯誤して、液体タイプや粉末タイプにしているそうです。
コーティング方法としては、筒状で内側にコーティングリキッドがついたドラム缶のようなものを横にして回転させ、その中をペットフードを通過させます。こうして粒をグルグル撹拌しながら適度に粒に付着させるという方法などもあります。
このように油分のないものを使うわけではないのでオイルはあるわけですが、必ずしもオイルを吹きかけるばかりではなく、粉末だったりもします。
インターネットで散見されるオイルコーティングという言葉は、オイルコーティングよりも「コーティング」がより現状を表した近い言葉であるように思います。
もしくは海外でも使われている「フレーバー」「エンハンサー」という言葉もイメージに近いかもしれませんね。
だから海外では”オイル”を付けずに、コーティングやトップコートと呼ぶのではと思います。
猫によるコーティングの好き嫌いがあるかという質問も合わせて頂きました。これに関してはコーティングの好き嫌いというよりも、そのフード自体の好き嫌いと考える方がいいかと思います。
食べなかったりした場合はあまりコーティングにこだわらずに探してみてください。
それが本当にコーティングの影響かはわかりませんが、そうした猫もいるかと思いますので、選択肢としてはいいと思います。
酸化という部分に関しては先に説明したようにドライフードは多孔質なので、外側内側関わらず酸化はしますのでそうした点はあまり違いがないと考えてもいいかと思います。
一応コーティングによって油分の量が多くなれば、その分酸化するとは言えるので、ノンオイルコーティングがコーティングをしてない分、粒(原材料)自体にも脂肪を使用していない(減らしている)ということであれば多少差は出るかもしれません。
コーティングに関しては私も勉強不足で、ここでは私の知っていることを紹介したのみですので情報不足な点が多いかもしれません。以下、情報を今後も機会があれば探ってみたいと思います。
オイルコーティングが悪いものではないことがわかりました。また、このコーティングが嗜好性だけでなく、人との共存の面でも大きな役割を果たしていることがわかりました。
キャットフード選びには、含まれている脂肪の量や原材料など、フード全体をみて選んでいくことが大切です。
株式会社ヒューマル代表取締役。ペットフード専門家。「動物にも食育を」を掲げて2016年に会社を設立。ヨーロッパを巡って自身の希望レシピを製造できるペットフード工場を探し出し、オリジナルキャットフードを開発。ペットフード販売士、ペット栄養管理士、愛玩動物飼養管理士、ペット防災指導員、ペット共生住宅管理士、保育士などの資格保持者。詳しくは紹介ページへ
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