なぜイギリスが動物愛護先進国でキャットフードのレベルが高いと言われるのか

キャットフードを探していると、イギリスは動物愛護先進国だという話を沢山目にします。そのおかげでキャットフードも凄く発達しているということですが、細かく話しているサイトがなかったのでマッサンに聞いてみました。
日本と比べてみれば、なぜここまでイギリスが動物愛護先進国といわれているのかが理解できますよ。
イギリスでは子供の法律よりも早くに動物の法律ができたとまで言われています。畜産動物保護から始まった最初の動物保護の法律である「マーティン法」ができたのは1822年、世界最古の動物愛護団体である「王立動物虐待防止協会」はなんと1824年に設立されています。日本は文政7年、伊能忠敬の日本地図が完成して3年程度の頃の話です。明治が1868年からですから、江戸時代真っ只中です。この時から既にイギリスでは動物愛護が始まっています。
刀を持っていた時代に動物愛護です。明治の廃刀令は1876年ですから日本人が刀を捨てるより50年も前に、イギリスでは動物虐待防止協会ができています。これだけでもイギリスがどれだけ進んでいるかが伝わったのではないでしょうか。
そうは言っても最初は牛馬を対象とした先生方が提唱していただけで、まだまだ国民には浸透していませんでしたが、ここから数十年かけて法制化されるまでに至りました。ここからは早いです。1941年にはペット動物法が施行され、ペットショップを認可制とし、街中での自由なペット販売は禁止されました。なんと現代の日本でも行っていないことを75年前から実施しています。
欧米では肉食をメインとした文化であり、畜産、動物を不必要な苦痛から保護するという発想から生まれた動物愛護は、日本のように穀物が主食の国では育たなかったという文化の違いという考え方も指摘されています。私はまだまだその辺りは変わらないのではと考えます。
それでは主に犬についての話ですが、実際のイギリスの事情の話をしましょう。
まずイギリスでは人間のトイレのように公園に犬の糞用ゴミ箱が設置されています。さらにそんな公園ではリードにつながれてない犬が走り回り、自由に楽しんでいる光景を見ることができます。
そのおかげで犬もバスなどの交通機関も利用できますし、しつけ次第では高級ホテルにも泊まれます。犬同士が吠えているところもほとんど見られません。
最近ではしっかりリードに繋ぐ人もみられるようになりました。
それはイギリス国外からくる人が多くなったことなども関係してます。また、犬を飼っていない人にとって犬用ゴミ箱の清掃に税金を使われているという考え方からゴミ箱を置かなくなった公園もあると聞きましたが、日本やアジア諸国とは違い、とても進んだところで考えている印象を受けます。
バタシーでは2009年に健康な犬を1,931頭も殺処分しています。これは若者の流行で獰猛な犬を獰猛に育てて、育てきれずに捨ててしまうことが影響しています。これらの犬は飼い主も見つからないまま施設スペースも圧迫することになってしまい、殺処分が行われました。
世界では殺処分ゼロをうたっている施設がありますが、現実問題殺処分ゼロは不可能です。殺処分ゼロにするためには空きが出るまで受入れを止める施設のみができることです。殺処分ゼロの施設がある裏で、代わりに殺処分を行わなければいけない施設があるだけなんです。
しかし基本的には保護が必要な限り世話を続ける施設になっています。更に美容師によるシャワーやカット、医師による診察や予防接種、トラウマなどに対応する専門家による指導、ゲージなどではない立派な部屋が与えられています。長い間ゲージに入れるのは虐待という認識です。理想を守るために現実とバランスをとっていると言えます。
有名な施設としては、ドッグス・トラスト、キャッツプロテクションなどがあります。日本で考えると考えられない位規模の大きい施設です。ドイツにも有名なティアハイムという動物保護施設が500箇所以上もあり、アメリカには公共、民間共に多くの団体があり、ドイツもアメリカも活動資金のほとんどが寄付・遺贈で賄われています。
規模に違いはありますが額にして10億~100億円もの寄付・遺贈です。日本では考えられないほど動物愛護が浸透していることがわかります。
「イギリスのキャットフードって本当にそんなにいいの?」という声も聞きますが、やはり先に進んでいて「まだ日本では作れないキャットフードがある」という点が大きいですね。(技術的な面では作れるのかもしれませんが、コストや設備整備の点から作られない)
また、ペットフード購入者の根本的な意識が違いますから、製造者への要望、製造レベルもどんどんあがってきています。
大まかにいえばドッグフード、キャットフード共に「従来のドライペットフード」「プレミアム」「ナチュラル」「グレインフリー」といった感じでどんどんバージョンアップしていますが、これは消費者のニーズを汲み取った結果です。日本のペットフードはプレミアム位までがほとんどです。
良質なたんぱく質に目を向け始め、人間と同じ感覚で美味しく、栄養があるように作られ始めました。
低アレルゲンに目を向け、小麦を使用しないグルテンフリーなどが誕生しました。
保存料や香料などに注目し、添加物の見直しや自然な材料を使うなど、原材料の質の向上が起こります。
犬や猫は本来穀物をほとんど消化できないという生物学的な点にも目を向けて、穀物を取り除き、本来の食事に近くなるよう高たんぱく質に仕上げた、最も犬猫の生態に近いペットフードの形が誕生しました。
メーカーによって呼び方が違ったり、意味も変わったりはしますが、このようにひとつずつ改善されてグレインフリーまでたどり着いています。
この先には更にオーガニックやヴィーガンというものが登場します。
こうやって話しを聞いてみると日本ではまだ意識の高い人しか手に取らないキャットフードかもしれませんね。
株式会社ヒューマル代表取締役。ペットフード専門家。「動物にも食育を」を掲げて2016年に会社を設立。ヨーロッパを巡って自身の希望レシピを製造できるペットフード工場を探し出し、オリジナルキャットフードを開発。ペットフード販売士、ペット栄養管理士、愛玩動物飼養管理士、ペット防災指導員、ペット共生住宅管理士、保育士などの資格保持者。詳しくは紹介ページへ
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