猫の菜食主義「ヴィーガン」について。植物だけのキャットフードが猫に与える影響は?

人間でも実践されている方がいるヴィーガン。肉や魚以外に卵や乳製品、はちみつも摂取しない正真正銘の菜食主義です。最近ではヴィーガンキャットフードを販売しているメーカーがあります。肉食食性動物の猫に対して菜食キャットフードはどうなのでしょうか。
ヴィーガンとは卵、乳製品、はちみつも食べない完全菜食主義のことです。
植物性食物しか食べないという意味もありますが、動物の命を尊重するという意味のエシカルヴィーガンの方々もいます。
ベジタリアンは肉、魚は食べませんが卵や乳製品は食べますので、ヴィーガンはベジタリアンよりも更に一歩進んだ菜食主義といえます。
猫は肉食食性動物なので、ヴィーガンとは対極の生き物です。
猫は肉から摂取したたんぱく質をエネルギーに変換して生きていく構造になっています。同じたんぱく質でも植物性は消化吸収率が悪く、効率よく活用することができません。
また猫には必ずタウリンが必要です。このタウリンは肉や海藻から摂取します。
本来ほとんどのタウリンは肉から摂取している猫にとって、海藻からだけタウリン必要分を摂取するのは難しいでしょう。
因みに地上の植物にはタウリンは含まれていません。
ビタミンB12も海藻など海苔に含まれています。タウリンと同じくこれからだけの摂取は難しいと考えられます。
動物性食品に含まれる鉄分と比べると植物性に含まれる鉄分は吸収率が悪いと言われています。
大豆に多く含まれていますが、たんぱく質も鉄分もなんでもかんでも大豆からというわけにもいかないことは容易に想像がつきます。
こうした理由からも猫が純粋なヴィーガンとして生きていくことは非常に難しいことです。
キャットフード以外で与えるにしてもヴィーガンなのですから与えられるものに制限があります。また濃縮されていない状態で与えても必要分を摂取するには相応の量が必要になるでしょう。
まず猫が肉や魚以外のものを沢山食べてくれるとはとても考えられません。これでは現実的ではありませんね。
このため足りない栄養素はサプリかキャットフードに含まれる栄養添加物で摂取することになります。
実際ビーガン食としてキャットフードを製造した場合、多くの栄養素は栄養添加物で補うことになると思います。
肉食食性動物であるはずの猫ですが、ヴィーガンキャットフードは一般に販売されています。
これらの使用方法は「猫が動物性たんぱく質などのアレルギー」を持っている時に使用するのが主な目的です。
稀にどんな肉に変えてもアレルギーを発症してしまう猫がいるそうで、そうした場合には肉自体の摂取をやめなければアレルギーを抑えることができません。
こうした動物性たんぱく質アレルギーの猫を救うための選択肢のひとつとしてもヴィーガンキャットフードがあります。
数値上は大丈夫ということになるのかもしれませんが、動物性と植物性では消化吸収率が大きく違うことがわかっています。
このため、数値で表せている通りには摂取できないことは十分に考えられます。
ビーガンキャットフードは療法食ではありません。しかしその製品の特性上、獣医と相談の上で使用する療法食として考えた方がいいのではないかと個人的には思っています。
肉や魚、卵などを摂取しないことで得られるものは動物愛護を守り抜くということ以外にはないのかもしれません。
こうした食に関する点はそれぞれの考え方に委ねられますが、猫にとっては動物性たんぱく質アレルギーなど理由がなければ、ヴィーガン食は健康を害するだけのものになってしまうかもしれません。
株式会社ヒューマル代表取締役。ペットフード専門家。「動物にも食育を」を掲げて2016年に会社を設立。ヨーロッパを巡って自身の希望レシピを製造できるペットフード工場を探し出し、オリジナルキャットフードを開発。ペットフード販売士、ペット栄養管理士、愛玩動物飼養管理士、ペット防災指導員、ペット共生住宅管理士、保育士などの資格保持者。詳しくは紹介ページへ
スギさん
エノおじさん