牛、馬、山羊、羊、うさぎの草食動物の飼料
飼料で培われた考えや技術が犬や猫のペットフードにも使われています。また、家畜は人に関わるため、飼料の法律も制定され、しっかりと規制されています。これらもペットフード作りの参考にされています。
そこで今回は飼料について確認をしていきたいと思います。
家畜は牛、馬、山羊、羊、うさぎ、豚、鶏などがいますが、この中で牛、馬、山羊、羊、うさぎは草食動物です。
牛、山羊、羊は反芻動物で複数の胃袋を持ち、草を分解する能力に長けています。馬やうさぎは単胃動物ですが、大腸、盲腸が発達していて微生物による分解が行われています。
このように草本類の分解が得意な草食動物には草本類(粗飼料)だけでなく、より栄養素を補給できるように穀類や食品副産物の配合飼料(濃厚飼料中心)も与えています。
なんだかとても消化しにくそうなものばかりですね!
その通りです。私が伺った話では、こうした消化が難しい繊維の多い食事は粗飼料と言われるそうです。それに対して消化しやすいエネルギー含有量の多いものが濃厚飼料です。これらを配合することで配合飼料というようですね。
豚、鶏の雑食性動物の飼料
豚や鶏はなんでも食べる雑食性でなんでも食べてしまいます。草木も食べますし、ミミズなどの昆虫、場合によっては小動物も食べます。
ただし肉や卵などを安定的に供給するためには安定的な栄養素の補給が必要なため、専用の飼料が開発されました。
飼料の原材料
こうした飼料にはどのような原材料が使われているのでしょうか。
とうもろこし、マイロ、大麦、小麦、キャッサバ、炭酸カルシウム、綿実、ヘイキューブ、パプリカ抽出物、飼料用米などが使用されます。その他にも副産物、残渣も多く使われています。
草食動物だけあってやっぱり穀類が多いですね!
残渣の利用
ビートパルプも甜菜から砂糖を取り出した残渣ですが、この他にも残渣は有効利用されています。
原材料 | |
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ビートパルプ | 甜菜から砂糖液を抽出した残渣を乾燥したもの |
コーングルテンフィード | とうもろこしからでんぷんを抽出した際にでる副産物を乾燥したもの |
コーングルテンミール | とうもろこしからでんぷんを抽出した際にでる副産物。コーングルテンフィードと同じですが、特にたんぱく質を多く含んだ部分を乾燥したもの |
とうもろこしジスチラーズグレインソリュブル | とうもろこしからバイオエタノールを製造する際にでる副産物を乾燥したもの |
大豆油かす | 大豆から油を抽出した残渣を乾燥したもの |
なたね油かす | なたねから油を抽出した残渣を乾燥したもの |
魚粉 | 魚類や缶詰の加工残品等を加熱蒸煮し油脂分を搾油した残渣を乾燥したもの |
ふすま | 食品用の小麦粉を製造する製粉工程の副産物 |
米ぬか | 精米工場などで出る副産物 |
魚粉も残渣なんですか!
魚粉というと魚から作っているイメージがありますよね。実際魚から作っていますが、残った部分を有効活用するために残渣を乾燥したものです。
飼料にも多くの副産物、残渣が使用されており、キャットフードではこの中ではビートパルプがよく利用されていますね。
飼料における法律
飼料及び飼料添加物は「飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律」によって明確に規制されています。特に飼料添加物に関してはペットフード作りでも参考にされている部分です。
飼料に使用できる飼料添加物は独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)「飼料添加物を定める件」に詳しく書かれています。
1 アルギン酸ナトリウム、エトキシキン、カゼインナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ギ酸、グリセリン脂肪酸エステル、ジブチルヒドロキシトルエン、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ブチルヒドロキシアニソール、プロピオン酸、プロピオン酸カルシウム、プロピオン酸ナトリウム、プロピレングリコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル並びにこれらのいずれかを有効成分として含有する製剤
2 L-アスコルビン酸、L-アスコルビン酸カルシウム、L-アスコルビン酸ナトリウム、L-アスコルビン酸-2-リン酸エステルナトリウムカルシウム、L-アスコルビン酸-2-リン酸エステルマグネシウム、アスタキサンチン、アセトメナフトン、β-アポ-8’-カロチン酸エチルエステル、アミノ酢酸、DL-アラニン、L-アルギニン、イノシトール、エルゴカルシフェロール、塩化カリウム、塩化コリン、塩酸ジベンゾイルチアミン、塩酸チアミン、塩酸ピリドキシン、塩酸L-リジン、L-カルニチン、β-カロチン、カンタキサンチン、クエン酸鉄、グルコン酸カルシウム、L-グルタミン酸ナトリウム、コハク酸クエン酸鉄ナトリウム、コレカルシフェロール、酢酸dl-α-トコフェロール、酸化マグネシウム、シアノコバラミン、硝酸チアミン、水酸化アルミニウム、タウリン、炭酸亜鉛、炭酸コバルト、炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸マンガン、2-デアミノー2-ヒドロキシメチオニン、2-デアミノー2-ヒドロキシメチオニン亜鉛、DL-トリプトファン、L-トリプトファン、L-トレオニン、DL-トレオニン鉄、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、乳酸カルシウム、パラアミノ安息香酸、L-バリン、D-パントテン酸カルシウム、DL-パントテン酸カルシウム、d-ビオチン、ビタミンA粉末、ビタミンA油、ビタミンD粉末、ビタミンD3油、ビタミンE粉末、25-ヒドロキシコレカルシフェロール、フマル酸第一鉄、ペプチド亜鉛、ペプチド銅、ペプチドマンガン、ペプチド鉄、DL-メチオニン、メナジオン亜硫酸水素ジメチルピリミジノール、メナジオン亜硫酸水素ナトリウム、ヨウ化カリウム、葉酸、ヨウ素酸カリウム、ヨウ素酸カルシウム、リボフラビン、リボフラビン酪酸エステル、硫酸亜鉛(乾燥)、硫酸亜鉛(結晶)、硫酸亜鉛メチオニン、硫酸コバルト(乾燥)、硫酸コバルト(結晶)、硫酸鉄(乾燥)、硫酸銅(乾燥)、硫酸銅(結晶)、硫酸ナトリウム(乾燥)、硫酸マグネシウム(乾燥)、硫酸マグネシウム(結晶)、硫酸マンガン、硫酸L-リジン、リン酸一水素カリウム(乾燥)、リン酸一水素ナトリウム(乾燥)、リン酸二水素カリウム(乾燥)、リン酸二水素ナトリウム(乾燥)及びリン酸二水素ナトリウム(結晶)並びにこれらのいずれかを有効成分として含有する製剤
3 亜鉛バシトラシン、アビラマイシン、アミラーゼ、アルカリ性プロテアーゼ、アルキルトリメチルアンモニウムカルシウムオキシテトラサイクリン、アンプロリウム・エトパベート、アンプロリウム・エトパベート・スルファキノキサリン、エンテロコッカス フェカーリス、エンテロコッカス フェシウム、エンラマイシン、ギ酸カルシウム、キシラナーゼ、キシラナーゼ・ペクチナーゼ複合酵素、クエン酸モランテル、β-グルカナーゼ、グルコン酸ナトリウム、クロストリジウム ブチリカム、クロルテトラサイクリン、サッカリンナトリウム、サリノマイシンナトリウム、酸性プロテアーゼ、セルラーゼ、セルラーゼ・プロテアーゼ・ペクチナーゼ複合酵素、センデュラマイシンナトリウム、着香料(エステル類、エーテル類、ケトン類、脂肪酸類、脂肪族高級アルコール類、脂肪族高級アルデヒド類、脂肪族高級炭化水素類、テルペン系炭化水素類、フェノールエーテル類、フェノール類、芳香族アルコール類、芳香族アルデヒド類及びラクトン類のうち、一種又は二種以上を有効成分として含有し、着香の目的で使用されるものをいう。)、中性プロテアーゼ、ナイカルバジン、ナラシン、二ギ酸カリウム、ノシヘプタイド、バチルス コアグランス、バチルス サブチルス、バチルス セレウス、バチルス バディウス、ハロフジノンポリスチレンスルホン酸カルシウム、ビコザマイシン、ビフィドバクテリウム サーモフィラム、ビフィドバクテリウム シュードロンガム、フィターゼ、フマル酸、フラボフォスフォリポール、モネンシンナトリウム、ラクターゼ、ラクトバチルス アシドフィルス、ラクトバチルス サリバリウス、ラサロシドナトリウム、リパーゼ及びリン酸タイロシン並びにこれらのいずれかを有効成分として含有する製剤4 前3号に掲げる物を2以上含有する製剤
引用:独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)「飼料添加物を定める件」
こんなにあるんですね!
ここに書くのも躊躇われる量でした。ペットフードで見たことがあるものも多いのではないでしょうか。
このように人に直接関係のある家畜に対する飼料には明確に法律で規制が行われていますので、これらを参考にしながら、犬や猫など動物に合わせたペットフードが作られています。
特に完全肉食の家畜はいませんので、中でもキャットフードは特殊なフードということになりますね。
ペットの法律はまだまだ進展していない部分もありますが、法律で規制されている飼料の分野で使用できるものをペットフードに使用することで、より安全性も意識してペットフードを作っています。
草本類の保存は水分含有量を15%以下に
牧草やトウモロコシなどは収穫してすぐは水分量が80%以上と非常に豊富です。このため腐敗してしまうためそのままの保管はできません。
このため牧草やトウモロコシを水分量15%まで乾燥させて保存します。これが乾草、干し草です。土地や時期で乾燥することが難しい場合には飼料をサイロで発酵してサイレージにして保存します。
ドライフードも水分量を10%以下にするようにしていますね!
これは飼料でもドライフードでも同じで、水分量を少なくすることで腐敗から守っています。
例えば飼料メーカーがペットフード会社になった例も多く、いまや完全にペットフードメーカーとして大企業になっている会社もあります。こうした理由からも飼料とペットフードは切っても切れない関係にあります。
まとめ
- 飼料は法律で規制されている
- 飼料で培われた技術や経験はペットフード作りに生かされている
- 資源の有効活用が考えられている
ペットフードには明確な法律がないというようなことが言われてきましたが、ペットフード協会やその他の企業の努力、そして飼料作りにおける技術や経験がペットフード作りにも生かされていることがわかりました。