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ペットフードによく使われる酸化防止剤
ペットフードも他の食品と変わらず、酸化が進むと変色、味や風味の劣化が起こります。中でも油脂が酸化するとアルデヒドや過酸化物などの有害物質が発生します。ビタミンが酸化すると栄養価が低下します。
これらを防ぐために酸化防止剤が使われます。
自然由来、化学合成由来、また脂溶性、水溶性の酸化防止剤があり、それぞれ目的を持って使われています。
ビタミンE(トコフェロール)
多く使われている酸化防止剤です。酸化防止剤としてトコフェロールと書かれているものを見たことがあるかと思います。
トコフェロールにも化学合成と自然由来があり、化学合成の場合は自然由来よりも酸化防止効果が低いと言われています。
BHA、BHTなどに比べると酸化防止力は落ちますが、安全性の面からも多く利用されています。
ビタミンC
水溶性の酸化防止剤の代表的存在がビタミンCです。L-アスコルビン酸ナトリウム、ナトリウム塩があります。
ローズマリー抽出物
動物性油脂だけでなく、植物性油脂にも抗酸化効果があります。
クエン酸
柑橘類によく見られる酸味成分であるクエン酸。ペットフードでも酸化防止剤として使われています。クエン酸自体は疲労回復や血流改善としての効果もあり、人間も疲れた時に摂取したりしますね。そうした効果とともに酸化防止作用が期待できる成分です。
BHA
脂溶性で酸化防止剤として使われる食品添加物です。化粧品にも使われています。よく発がん性について議論されますが、BHAの発がん性について語るには摂取量が欠かせず、薬理学の基本的概念からは発がん性について問題はないものとされています。
BHAの発がん性の強さはわらびの3分の1、ふきのとうの2分の1以下で、量によっては発がん性を抑制する性質もあるとされています。
BHT
脂溶性で酸化防止剤として使われる食品添加物です。化粧品、ボディソープ、薬、ゴム、石油製品など多くのものに使用されています。
発がん性は認められていませんが、変異原性が認められ、催奇形性の疑いがあり、徐々にBHAが代用されるようになっています。食品については1970年代にはほとんど使用されなくなりました。
エトキシキン
日本では人間用の食品添加物としては認められていませんが、飼料やペットフード、リンゴや梨の焼け防止としてなど一部で使用されています。
また主な使用用途として乾燥した魚粉を船舶輸送する際に自然発火しないように魚粉に対して使用することが定められています。
没食子酸プロピル
日本では主にバターなど油脂類に酸化防止剤として使われる食品添加物です。ただ油に溶けにくいため食品によっては紫色に変色する場合があります。
またBHTやBHAよりも抗酸化作用が強いが、他の物質を同時に摂取した時の相互作用など未確認の部分もあります。また変異原性が認められています。
BHAは前胃がない動物には発がん性の兆候はみられない
誤解されがちなこととして、BHAの発がん性があります。色々言われていますが、その後の研究で、猫などの前胃がない動物には発がん性の兆候は見られなかったということです。
BHAを高濃度に添加しても発がん傾向はどの内臓にも見られず、発がん性は前胃のある動物に限られるとされました。
参考:中国新聞 2018年7月7日
これは知らない情報でした!
しっかりとした研究のようですが、研究結果が一般まで届かなかったこともありそうです。
発がん性、変異原性、催奇形性について
発がん性とは
発がん性とは正常な細胞をがん化させる性質のことです。発がん性が認められている食べ物は一定量摂取すると正常な細胞をがんに変化させる性質を持っているということになります。
しかしがんについては複合的な要因によって発生すると考えられ、ひとつの要因でがんになるということは非常に難しいものです。
変異原性とは
DNA、染色体に損傷を与え突然変異を起こす性質のことです。変異原性物質は突然変異を発生する頻度を増大する物質となります。
催奇形性とは
催奇形性とは奇形を生じさせる性質のことです。催奇形性物質を妊娠中に投与すると胎児に奇形が発生する可能性があります。
発がん性は必ず摂取量も合わせて考える
BHAやBHT、没食子酸プロピルなど危険と言われている酸化防止剤がありますが、発がん性などについては必ず摂取量について考えなくてはいけません。
上でも説明しましたが、BHAの発がん性の強さはわらびの3分の1、ふきのとうの2分の1以下といわれています。
また極端な例ですが、抗がん剤は治療域と中毒域が狭く、薬物相互作用により致命的な副作用の危険性があります。このようにどんなものであれ、容量や使い方が大切になってきます。
例えば上記の参考記事を見ていただきたいのですが、無毒性量NOAELに安全係数をかけた値が一日摂取許容量ADIとなります。この値を十分に下回る量までしか摂取しないようになっています。
この図を見ると圧倒的に少ないことがわかりますね!
そしてふきのとうを食べて発がん性が!という人はなかなかいないですよね。
このように発がん性という言葉によって「悪」のように語られがちですが、どんなものでも用法用量で毒にも薬にもなるものと考えた方がいいのではないかと感じています。
酸化とは死につながることもあるものなので、私自身は酸化防止能力の高いこれらの使用は用量を守った使用であれば問題はないという考えです。
こちらの記事も合わせてご参考ください。
まとめ
- 酸化防止剤には自然由来と化学合成のものがある
- 酸化防止剤には発がん性や催奇形性が認められるものがある
- 発がん性などを語るには摂取量が必須
- 酸化防止剤は「悪」ではない
ペットフードの酸化防止剤については悪いものとして語られがちですが、発がん性といった言葉への拒否反応であるケースも多いようです。薬も用法容量を守らなくては毒になるように、酸化防止剤も同じものとして捉えるのが自然かもしれませんね。