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犬猫の抗酸化機能と活性酸素
人に限らず、犬猫含む有機化合物は大気中の酸素により絶えず酸化作用を受けています。特に体内では活性酸素種(活性酸素やフリーラジカルといわれる)による攻撃が常時行われています。
活性酸素種は放射線や紫外線の影響、喫煙、ケガによる組織破壊、炎症、薬の副作用などでも産生されます。
生体には生来抗酸化酵素群による抗酸化機能が備わっていて、活性酸素種を無毒化しますが、抗酸化酵素群の活性が低かったり、能力よりも多い活性酸素種が生じると酸化攻撃が始まります。
成長期やシニア期は特に防御機能が不十分で酸化にさらされやすいと考えられています。
抗酸化物質と抗酸化作用
抗酸化物質には2種類あり、それぞれが協業して抗酸化作用を発揮しています。
- 生体に備わっている抗酸化酵素
- 食事から摂取する非酵素系の抗酸化栄養素
防御機能を持つ物質を抗酸化物質(スカベンジャー)といい、様々なスカベンジャーが複数の成分や異なる動きで活性酸素種を消去します。
例えばビタミンE、ビタミンCはそれぞれ抗酸化作用がありますが、それぞれ作用する場所が違います。
- ビタミンE ⇒ 細胞膜の活性酸素種を消去
- ビタミンC ⇒ 水溶液中の活性酸素種を消去
また活性酸素種によってラジカル化したビタミンEはビタミンCの力を借りて再生し、その時に傷ついたビタミンCは生体の酵素系によって再生する。といった具合にお互いがお互いに作用して活性酸素種を消去しています。
では抗酸化のために何を摂取したらよいのか
抗酸化におすすめの食材
抗酸化能が良好でも結局食べられなければ意味がありません。一概に緑黄色野菜といっても特に猫は食べないものばかり。
そこで犬猫が好みやすい食材で、柔らかくしたりペーストにする、小さく切るなどの加工をして食べさせやすいものを選択しました。
- 大豆
- かぼちゃ
- ベリー類
- にんじん
- すいか
- レバー
- めきゃべつ
- マグロ
- かつお
- 鶏肉
ビタミンE(αトコフェロール)
脂溶性ビタミン。食事中のビタミンEを増量して犬猫に摂取させたところ、血中のマロンジアルデヒドや8-ヒドロキシーデオキシグアノシン(8-OHdG)量が低下し、細胞膜や各が酸化攻撃によって破壊されるレベルが減少した研究結果がある
ナッツ類(アーモンド、ヘーゼルナッツ)、種実類(ごま、落花生)、植物油(ひまわり油、オリーブオイル)、魚介類(うなぎ、鮭、たらこ)、アボカド、かぼちゃ、大豆、全粒穀物

脂溶性のビタミンEは加熱に対して安定的で壊れにくいので、油と一緒に取ると吸収率がアップします。しかし犬猫用となると油でというわけにはいかないと思いますので、かぼちゃや豆のペーストが使いやすいのではと思います。
カロテノイド
野菜などが持つ天然色素。血中に存在する主要6種がリコピン、α-カロテン、β-カロテン、ルテイン、ゼアキサンチン、β-クリプトキサンチン。うち、ビタミンAに変換されるのはα-カロテン、β-カロテン、β-クリプトキサンチン。
また、カロテノイドは犬の認知機能維持にも影響していることがわかっていて取って損のない栄養素です。
α-カロテン
にんじん、ほうれんそう、かぼちゃ、緑の葉物野菜類

α-カロテンは油と一緒に摂取するとよいので油で軽く炒めるのがおすすめですが、油自体が犬猫に良いかという問題も。また、長時間加熱すると分解される可能性がありますので注意。犬猫ともにかぼちゃはペーストにして混ぜ込む、にんじんは小さくして柔らかく茹でて混ぜ込めば与えやすいかと思います。
β-カロテン
メロン、緑黄色野菜、にんじん、かぼちゃ、ほうれん草、パセリ、小松菜、あんず、みかん

α-カロテンと同様、油で軽く炒めることがおすすめ。ただこちらも油自体が犬猫にいかという問題も。細かくしたにんじん、ふかしてペーストにしたかぼちゃなどは与えやすい。時々メロンを食べる犬猫もいます。
ルテイン
緑黄色野菜、ケール、モロヘイヤ、小松菜、ほうれん草、トウモロコシ、ブロッコリー、卵黄

ルテインは熱に強いので油なして炒めたりして調理してもよいと思います。また炒めてかさを減らすことで量が減り、ルテインが摂取しやすくなります。ただ特に猫は食べない食材が多く難儀することも。
ゼアキサンチン
緑黄色野菜、パプリカ、トウモロコシ、ほうれん草、かぼちゃ、マンゴー

油を使うとゼアキサンチンが油に溶け込み、吸収しやすくなりますが、油自体が犬猫にいかという問題も。ふかしてペーストにしたかぼちゃなどは与えやすい。
β-クリプトキサンチン
みかんなどの柑橘系、パパイヤ、柿、赤ピーマン

特に柑橘類に多いため、猫にとって苦手な食材が多く摂取しにくい栄養素です。少ないですがりんごにも含まれていますのですりおろしなどを活用すれば食べる場合もあります。
リコピン
トマト、スイカ、柿、あんず、パパイア、マンゴー、ピンクグレープフルーツ、金時人参

リコピンといえばトマト。犬も猫も食べられますが、ただ嗜好性が良くないので、どうにかして食べてもらう手立てが必要かもしれません。スイカは犬猫ともに好きな子がいますので試して見る価値はあるかも。
ビタミンA
脂溶性ビタミン。
レバーやうなぎなどの動物性食品、にんじん、ほうれん草、モロヘイヤなどの緑黄色野菜

犬猫ともに好きなレバー。蒸すなどで熱を通して小さく切ったり、ペーストにすることで食べやすくなります。
ビタミンC(アスコルビン酸)
水溶性ビタミン。
パプリカ、ブロッコリー、イチゴ、キウイフルーツ、柑橘類(レモン、オレンジなど)、菜の花、ケール、めキャベツ

熱に弱いため意外と犬猫に与えるのが難しいビタミンC。めキャベツが好きな犬猫がいますので細かくすることで食べてくれる可能性あり。
セレニウム(グルタチオンペルオキシダーゼの1成分)
魚介類(かつお、マグロ、ワカサギ、たらこなど)、畜肉類(豚、牛の腎臓、鶏肉など)、穀類(全粒穀物)、卵、ナッツ類(ブラジルナッツ)、大豆製品、きのこ類

犬猫が大好きなかつおやマグロ、鶏肉などがありますので与えるのが簡単。毎日の食事でも摂取出来ているはずです。
フラボノイド
りんご、ブドウ、ベリー類などの果物、柑橘類(オレンジ・グレープフルーツなど)、ピーマン、大豆・納豆、パセリ・セロリ

大豆を柔らかくした物やりんごのすりおろし、ベリー類が与えやすいと思います。
ポリフェノール
ベリー類、リンゴ、なす、豆類、ナッツ類

大豆を柔らかくした物やりんごのすりおろし、ベリー類が与えやすいと思います。
アントシアニジン
ブルーベリー、ぶどう、ナス、紫芋、イチゴなど、赤や青紫色の濃い色の植物性食品

ブルーベリー、紫芋のペーストが与えやすいと思います。
どんな食材でも食べ過ぎに注意
食べても大丈夫とはいえ、どんなものでも食べ過ぎには注意が必要です。例えばメロン。エネルギーやカリウム、ビタミンCなどが豊富ですが、糖分も多いですので食べ過ぎには注意。食べ過ぎれば高カリウム血症の可能性もあります。
ただ常識的に考慮すれば猫にメロンを食べさせる場合、人が食べる一切れをまるまる与えることはないでしょう。それぞれの体の大きさに合わせた小さな一かけ程度かと思います。
また元々何かしらの食材にアレルギーをもっている場合もありますので、犬猫が適量なら食べられる。ただしアレルギーについては個々によると考えて、犬猫が食を楽しめるようになる、犬猫のQOLが向上するといったことを意識して実践するとよいかと思います。