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犬猫ペット用の食品の成分値を計算する
人の栄養成分値を計算する時は食品成分表などを用いて計算することができます。もちろん食品成分表も完璧な存在ではありませんので、掲載のない項目は近いものから数字を持ってきたり、実際に作った数値とズレている場合は実際の数値に沿わせて計算したりしていきます。
このように計算値には実物との誤差がありますのでそれを考慮した上で犬猫用の栄養成分値の計算について考えて見たいと思います。
ペット用の栄養素を計算する場合も食品成分表を用いることができます。
食品成分表とは
食品成分表とは正式には日本食品標準成分表といい、文部科学省から食品成分表2020年版については以下の通り示されています。
文部科学省科学技術・学術審議会資源調査分科会の下に食品成分委員会を設置及び検討を行い、調理済み食品の情報の充実、エネルギー計算方法の変更を含む全面改訂を行ったものです。
例えば鳥むね肉30gのたんぱく質について調べる場合は「もも 皮なし 生」の項目から確認すると「アミノ酸組成によるたんぱく質」は18.5g/可食部100gとありますので以下の通りとなります。
可食部 | アミノ酸組成によるたんぱく質 |
---|---|
もも 皮なし 生 100g | 18.5g |
もも 皮なし 生 30g | 5.55g |
これらを組み合わせることで栄養成分値を計算していきます。
人のエネルギー換算係数について
人の場合、食品から得られるエネルギーは大まかに以下のように設定されています。これをアトウォーター係数といいます。
アトウォーター係数
- たんぱく質:4kcal/1g
- 炭水化物:4kcal/1g
- 脂質:9kcal/1g
もちろんこれらはあくまで食品全体の平均的な値を出したものであり、実際には食品によって異なり、推定値ですが大まかに把握するためには十分に役立つものです。
犬猫動物のエネルギー換算係数について
犬猫の場合はは人よりも消化吸収率が低いため、犬猫用に手作りペットフードを作ろうとした場合は栄養成分表から求めた成分値よりも利用可能なエネルギーは低めに見積もる必要があり、以下の通り設定されています。これを動物の修正アトウォーター係数といいます。
動物の修正アトウォーター係数
- たんぱく質:3.5kcal/1g
- 炭水化物:3.5kcal/1g
- 脂質:8.5kcal/1g
ペットフードではAAFCOでも採用されている修正アトウォーター係数を使用することが多いですが、人用のアトウォーター係数で計算されているものもあります。
このため手作り食では食品のME(代謝エネルギー)含量に動物用の修正アトウォーター係数を用いて算出します。
人用と動物用のアトウォーター係数の違い
人 | 犬・猫 | 差 | |
---|---|---|---|
たんぱく質1g辺り | 4kcal | 3.5kcal | 0.875倍 |
炭水化物1g辺り | 4kcal | 3.5kcal | 0.875倍 |
脂質1g辺り | 9kcal | 8.5kcal | 0.944倍 |
人と犬猫が得られるエネルギー量の差を計算してみる
同じ食品から人と犬猫が得られるエネルギー量には差がありますので、それぞれの係数を使用して以下のように計算します。
人と犬猫がそれぞれ鶏もも皮なし100gから得られるエネルギー値
鶏もも皮なし100gの栄養素 | 人 | 犬・猫 |
---|---|---|
たんぱく質22g | 22×4=88 | 22×3.5=77 |
炭水化物0g | 0×4=0 | 0×3.5=0 |
脂質4.2g | 4.8×9=43.9 | 4.8×8.5=40.8 |
摂取カロリー | 131.2kcal | 117.8kcal |
※食品成分表2015年版のエネルギーの算定に基づく成分を参考とした
同じ鶏もも皮なし100gを食べたとしても、人と比較して犬猫は約14kcal少なくなっています。
成分表2020年版から計算方法に変化
成分表2020(八訂)からはたんぱく質はアミノ酸組成によるたんぱく質、脂質は脂肪酸のトリアシルグリセロール当量、炭水化物は利用可能炭水化物を使用していますので値自体に違いがあります。
更に成分表2020(八訂)のエネルギー換算係数では炭水化物の数値が3.75kcal/1gに変更されました。
今回の計算方法の変更により、例えば以下の「もも 皮なし 生」で考えた場合、炭水化物に至っては4.6gと0gもの差が生まれています。
鶏もも皮なし100gの栄養素 | 食品成分表2020年版の記載値 | それ以前の記載値 |
---|---|---|
たんぱく質 | 18.5g(アミノ酸組成によるたんぱく質) | 22g |
炭水化物 | 4.1g(利用可能炭水化物) | 0g |
脂質 | 4.2g(脂肪酸のトリアシルグリセロール当量) | 4.8g |
さらに「成分表2020(八訂)」のエネルギー換算係数は以下の通りで炭水化物から得られるエネルギー計算値が少し減りました。
- アミノ酸組成によるたんぱく質:4 kcal
- 利用可能炭水化物:3.75 kcal
- 脂肪酸のトリアシルグリセロール当量:9 kcal
鶏もも皮なし100gのエネルギー計算 | 食品成分表2020年版 | それ以前 |
---|---|---|
たんぱく質 | 18.5×4=74 | 22×4=88 |
炭水化物 | 4.1×3.75=15.375 | 0×4=0 |
脂質 | 4.2×9=37.8 | 4.8×9=43.2 |
127.175kcal | 131.2kcal |
上記のように計算値にも違いが出ます。
この場合、犬猫の修正アトウォーター係数はそのまま利用していいのかはわかりません。比率の問題なのでおそらく大丈夫ではないかと思います。(※ここは確かな情報ではありません。)
ドライフードから手作り食へ変える時は注意
ドライフードでは基本的に動物の修正アトウォーター係数を使用されています。しかし手作りレシピの場合は食品成分表から求めるとおおむね人用の係数で求められますので、カロリーに差が生まれがちです。
しかしもっと難しい点は、食品成分表の値も実物と比べれば、食べ物の旬や鮮度、育ち方や調理法で大きく変動するものです。あくまで栄養計算値は参考程度に留めておき、愛犬・愛猫をしっかりと観察して、体重の増減などを注意深く見守ることが大切です。
まとめ
上記からも手作り食は計算が難しく、パッと計算してパッと与えるということがしにくい傾向にあります。
まずは少量のおやつ程度の量から始めることで細かいことを考えずにドライフードとの併用ができるようになります。
その中でお気に入りのレシピがあれば、そこから少し量を多く与えるために計算を始めても良いかもしれません。