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鳥インフルエンザとは
鳥インフルエンザ(鳥インフルエンザウイルス感染症)は、鳥類に感染するインフルエンザウイルスによる感染症です。ウイルスは主にA型インフルエンザウイルス(Influenza A virus)の一種で、野生の水鳥(カモやガンなど)が自然宿主とされています。
ウイルスの特徴
インフルエンザA型ウイルスは、表面のタンパク質の違いにより以下のように分類されます。
- H(ヘマグルチニン):18種類(H1〜H18)
- N(ノイラミニダーゼ):11種類(N1〜N11)
→ 例:H5N1、H7N9 など
高病原性と低病原性
- 高病原性(HPAI):感染した鳥が高率で死亡(例:H5N1、H5N8など)
- 低病原性(LPAI):症状が軽い、または無症状(例:H9N2など)
感染経路
- 主に糞便や唾液などによる接触感染
- 飛沫感染も起こりうる
- 野鳥から鶏舎などへの持ち込みが主な原因
気を付けたから発生しないというものではない
誤解をしていただきたくない点が、鳥インフルエンザは気を付けていても発生してしまうものであるという点です。
徹底した防疫対策を行い、野鳥ネットの設置や野鳥が使用する自然水を使わない、人や物の出入りを制限する、消毒を徹底するなど可能な限りの対策を行っても発生してしまう場合があります。
100%完全には防ぐことができないものですので、どのような地域でも起こり得るということを覚えておいてください。
犬や猫への感染事例
犬や猫への感染経路
犬や猫への感染経路は感染した鳥類との接触、汚染された環境や物品、生の家禽肉や未殺菌の乳製品の摂取などが主な感染経路とされています。
猫の感染事例
- 米国ミシガン州(2024年5月)
完全室内飼育の猫2匹がH5N1に感染し死亡しました。飼い主は乳牛農場で働いており、猫は生乳や感染牛との直接接触はなかったものの、飼い主の衣類や手を介して感染した可能性が指摘されています。 - 米国オレゴン州(2025年2月)
市販のキャットフードを食べた猫がH5N1に感染し死亡しました。これを受けて、製造元は該当製品の自主回収を行いました。 - ポーランド(2023年)
複数の猫がH5N1に感染し死亡しました。感染源は不明ですが、野鳥や家禽との接触が疑われています。
犬の感染事例
- カナダおよびイタリア(2023年)
犬がH5N1に感染した事例が報告されています。感染経路は明確ではありませんが、感染した鳥類やその排泄物との接触が原因と考えられています。 - アゼルバイジャン(2006年)
野良犬がH5N1に感染し死亡した事例が報告されています。
鳥インフルエンザによる輸入禁止令
アメリカからのペットフード(鶏肉含む)一部停止
2022年以降、アメリカ各州でHPAI(高病原性鳥インフルエンザ)が発生し、発生した州からの「鶏肉・鴨肉を含む加工品やペットフード」は一時的に輸入停止になりました。
ハンガリー・ドイツ・フランス・ポーランドなどからの加工品
欧州で鳥インフルエンザが流行すると、該当国の一部地域からの**家禽加工品(原材料を含むペットフードも対象)が輸入停止になりました。
現在の日本の輸入停止対象国
参考:指定地域のうち鳥インフルエンザの発生及びまん延又はそのおそれが生じたため、鳥類の輸入を停止している国・地域
アメリカ合衆国(州単位での輸入停止)
- アーカンソー州(2024年12月11日)
- アイオワ州(2024年12月9日)
- カリフォルニア州(2024年11月5日)
- ニューヨーク州(2024年12月11日)
- テキサス州(2025年1月15日)
- フロリダ州(2022年7月27日)
その他、多数の州が対象となっています。
カナダ(州単位での輸入停止)
- オンタリオ州(2024年12月18日)
- ケベック州(2024年11月20日)
- アルバータ州(2022年4月12日)
- ブリティッシュコロンビア州(2023年5月12日)
その他の州も対象となっています。
その他の国
- ニュージーランド(2024年12月2日)
- オーストラリア(2024年5月27日)
- フィリピン(2022年2月28日)
- アルゼンチン(2025年2月18日)
- コスタリカ(2023年2月22日)
- ペルー(2022年12月9日)
- ウクライナ(2021年10月21日)
- 英国の一部地域(例:アンガス州、イースト・サセックス州など)
メーカー輸入停止の例
CANISOURCE GRAND CRU(カナダ)
2023年2月13日付けにて以下商品が輸入停止となりました。
- ドッグフード チキン アンド ダック
- ドッグフード ターキー
- キャットフード チキン アンド ダック
参考:鳥インフルエンザによる輸入停止措置の商品について / 2023年2月1日
ロータスペットフード(カナダ)
カナダから日本への家禽類を使用したペットフードの輸入が禁止されたことにより、対象となった低温・低圧調理のオーブンベイクド製法で作られたペットフードが対象となりました。
- ロータスドッグフード グレインフリーフィッシュレシピ小粒
- ロータス ドッグトリーツ グレインフリーフィッシュレシピ
- ロータスキャットフード グレインフリーフィッシュレシピ
Butch
ニュージーランドのButch(ブッチ)はニュージーランドの鳥インフルエンザ発生を受けて輸入再開の目処が立たず、無期限の販売休止となりました。
参考:ブッチ・ジャパン
エクストルーダーで製造されたペットフードは対象とならない
鳥インフルエンザは十分な加熱により死滅します。中心温度70度以上で1分以上の加熱をすることで完全に不活化(死滅)します。焼く・煮る・茹でるなどの通常の調理を行っていれば感染リスクはありません。
このため、一定以上の温度で加熱するエクストルーダーを使用したペットフードは輸入停止になりません。
こうしたことからもエクストルーダーは製品の安全性に信頼がおける製法といえます。
お使いのキャットフード、ドッグフードが終売、販売停止になってしまったら
在庫を確認し確保する
利用中のキャットフード、ドッグフードが終売、販売停止になってしまった場合はまずは在庫の確認をするのがおすすめです。
在庫を確保して、その在庫があるうちに代替品を探しましょう。
代替品を探す
お使いのキャットフード、ドッグフードに近い成分構成のものが受入れられやすいと思います。
主要原材料 | 元のフードが鶏肉であれば新しいフードも鶏肉を選ぶと食べてくれやすい |
成分 | カロリー、タンパク質、灰分、食物繊維、ビタミンなど成分が近いものを選ぶと問題が起こりにくい |
アレルギー | 主要原材料が同じであったとしても、アレルギーを発症する食材が使われていないかを確認する |
原産国 | 鶏肉や魚には種類があるため、原産国が同じ、または近い方が食材も近いものになる可能性が高い |
まとめ
- 鳥インフルエンザには犬猫も罹患する可能性がある
- ペットフードはエクストルーダーを使用した商品であれば問題ない
- 低温加熱商品には注意