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F.L.U.T.D.(猫の下部尿路疾患)とは
F.L.U.T.D.(猫の下部尿路疾患)とは尿石症や膀胱炎、血尿や排尿困難など、泌尿器官に関する病態の総称です。
尿路結石とは
猫は下部尿路疾患、中でも尿石症がおきやすい動物です。尿路結石ができると結石が尿管を塞いでしまい、尿がでなくなります。
すると尿毒症で死に至る非常に危険な病気のひとつです。
私のオス猫も尿路結石になって、慌てて病院で溶かしてもらいました。おしっこが出ているかを毎日しっかり確認しないと怖いですね。
猫はもともと砂漠の生き物なので、少ない水分で濃縮されたおしっこを出します。このため尿中のミネラル分が過剰になりやすく、結石ができやすくなります。
また水分を多く取らないため、食事によっても尿のpHを左右することから、食事を改善することで結石を防ぐことができる場合もあります。
尿結石の種類
尿石症は尿結石に含まれる成分が、リン酸アンモニウムマグネシウム(ストラバイト)かシュウ酸カルシウムかによって分けられます。
このため尿路結石だからといっても、それぞれの場合で対処法に違いがありますので注意が必要です。
どちらにしても基本的には食事両方と水分を多く取ることが大切です。猫缶を与えることで水分を多く与えたり、ドライフードをお湯でふやかして水分を取らせたりと工夫も大事です。
カルシウム:リン:マグネシウムの比率
カルシウム:リン:マグネシウムの比率は1.2~1.5:1:0.1~0.08程度がいいと言われています。理想はカルシウムとリンでは少しカルシウムが多いほうが理想です。
以下の記事が参考になりますので是非ご一読ください。
療法食を選ぶほどではなく、なんとなく気にしておきたい場合には、このバランスを満たしたフードを選んでみるといいかと思います。
膀胱炎とは
猫の膀胱炎は原因不明の突発性の場合が多く、細菌感染による膀胱炎はほとんど起こりません。
尿石症との合併症や、引越しや家族が増える(赤ちゃん)などによる生活環境の変化によるストレスなどが原因であると考えられています。
排尿時の痛み、血尿などの症状がありますので見逃さないようにしましょう。
環境が変わったあとは愛猫のトイレをしっかりと確認しておく必要がありそうですね。
尿結石は食べもののせいだけでできるわけではなく、感染症も原因
大変な勘違いをしてしまいやすい点ですが、食べものが悪かったから尿結石ができた、尿に結晶ができたと考えられがちですが、最新の情報ではそうではありません。
ストルバイト結石では以下のような原因があります。
- 水分摂取量の低下
- 肥満
- 排尿回数の低下
- 去勢およびそれに伴う活動性の低下
- 過去は去勢雄で多かったが、最近は雌で多い
- 4-7歳で多く10歳を超えると減少する
- 感染症と関係している
なかでも感染症が非常に大切で、食事で予防できるものではなく、あくまで感染と関係していると言われています。
多頭飼いをしていれば全ての猫がかかる可能性がある
飼育状況によって多頭飼いをしていれば全猫がかかる可能性もあります。
飼育環境が同一であれば逆に1匹だけ感染症にかかるということも珍しいですよね。
多頭飼育の全猫がかかったのでキャットフードが悪かったと断定しがちですが、正直なところAAFCOに沿った総合栄養食であれば、フードやメーカーによる違いはそれほど大きくありません。
また全年齢対応と成猫用では全年齢対応の方が多めに含まれている傾向にありますが、各商品を栄養素量(1000kcalあたりに含まれている量)換算で確認すればそれほど大きく違いがないことに気付きます。
療法食は治療の補助的に使用する食事なのでAAFCOの基準を下回って製造することができますので、療法食と比較すれば差が出るでしょう。
このため尿培養、抗菌薬の投与が大切で、尿酸性化食を使用しなくても細菌性膀胱炎を治すことで酸性に転じ、正常に戻るとしています。
ストルバイトは感染が重要な要因だったんですね!
また結晶がでたことだけでは診断としては意義はないと考えられています。特に食後はアルカリ尿になるため、正常でも結晶が出ます。
なので結晶が出ただけで慌てて尿路結石だと治療しないようにしましょうと獣医さんに確認しました。
F.L.U.T.D.(猫の下部尿路疾患)用キャットフード
下部尿路疾患用のキャットフードは多くのメーカーから販売されています。中でもロイヤルカナンやサイエンスダイエットが強い分野であると思います。
ここで注意すべき点は、療法食と総合栄養食の下部尿路疾患配慮用キャットフードは別物ということです。
療法食は尿路疾患にかかっている猫が獣医の指示によって与えるキャットフードで、総合栄養食の下部尿路疾患配慮用キャットフードはあくまで健康体の猫が、過去に尿路疾患にかかったなどで、通常時から気にしておきたい場合に与えるキャットフードです。
ロイヤルカナン ユリナリーケア(健康な尿を維持したい成猫用)
療法食や各疾患への配慮用キャットフードはロイヤルカナンが使用されることが多いです。その中で尿路疾患配慮用の総合栄養食としてユリナリーケアが販売されています。
- ミネラルバランスを調整し、かつ低い尿pHに維持することで、健康な尿の濃度を維持します
- <ユリナリ― ケア>は特別なミネラルバランスにより、健康な尿を維持することで、尿路結石の形成を抑えます
- <ユリナリ― ケア>のみを使い続けることにより、尿路結石の形成を抑制します
ミネラルバランスに注意して、尿路結石ができることを普段の食事から防いでいくことを主眼に置いたキャットフードです。
こうした尿路疾患に配慮した総合栄養食のキャットフードは各社から販売されています。
ロイヤルカナン ユリナリー S/O オルファクトリー
ロイヤルカナンのphコントロールの療法食はかなりの数が販売されています。細かい希望に合わせた微妙な違いまで製品にしています。
代表的なものがロイヤルカナン ユリナリー S/O オルファクトリーです。
- 【ストルバイト】ストルバイトが形成されにくい弱酸性の尿となるように、ミネラルなどの栄養バランスを調整。
- 【尿量】健康的な尿量維持のために、ミネラルなどの栄養バランスを調整。
- 【CLT】特発性膀胱炎の食事療法食として加水分解ミルクタンパク(加水分解アルファS1トリプシンカゼイン)を配合し、L-トリプトファンの含有量を調整しています。
- 【カロリー密度調整】体重過多は猫下部尿路疾患の原因となる可能性があるため、理想的な体重を維持するためにカロリー密度を低く調整(3562kcal/kg)*。 *[ユリナリーS/O]と比較し、約10%減。
この他にも多数販売していますのでご紹介します。
- pHコントロール+満腹感サポート
- pHコントロール0 ドライ
- pHコントロール1 ドライ
- pHコントロール1 フィッシュテイスト ドライ
- pHコントロール2 ドライ
- pHコントロール2 フィッシュテイスト ドライ
- pHコントロール オルファクトリー ドライ
- pHコントロール ライト ドライ
- pHコントロール ウェット パウチ
- pHコントロール フィッシュテイスト ウェット パウチ
こんなにも種類があるんですね!
一概に尿路疾患といっても程度が違うので、治療に使われる療法食はその子にあった細かい処方がなされるべきです。
そのためにロイヤルカナンはこれだけの種類を販売し、かつ獣医師も選択しやすい種類が揃っていると言えます。
まとめ
- 猫は下部尿路疾患が起こりやすい
- 対策として水分を多く取らせる
- 対策として食事療法を行う
- 総合栄養食と食事療法は違うので注意
- 尿路結石の原因はリン酸アンモニウムマグネシウム(ストラバイト)とシュウ酸カルシウムがある
- 尿結石は感染症と関係がある
- 結晶が出たからといって尿路結石ではない
猫は尿路結石ができやすい生き物です。特にオスは泌尿器が出ていることからなりやすく、普段から水分を多く取らせるように配慮しましょう。猫缶など水分の多い食事も有効です。