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猫は乳糖不耐症で牛乳が苦手
昭和ともなれば猫に牛乳を与えるのは普通のことだったのですが、最近は情報も増えたことで、牛乳を与えている家庭は減ってきたかもしれません。
今は牛乳を直接与えている話は聞きませんが、飼い始めなど猫について知らない場合は牛乳を与えるのもまだまだありそうな気がします。
猫は乳糖(ラクトース)不耐症である個体が大変多いので、牛乳を与えると多くの猫が下痢をしてしまいます。チーズやヨーグルトも同様です。
しかし乳牛のお乳を直接飲んでいる猫の映像などを見たことがある人もいるかもしれません。このように乳頭に耐性があり、お腹を壊さない猫もいます。
人と比較するとちょうど反対のような構成でしょうか。
人の場合は多くの人が牛乳でお腹を壊しませんが、一部緩くなってしまう人がいますね。私も牛乳はお腹がゴロゴロしてしまうひとりです。猫はほとんどがお腹を壊しますが、壊さない猫もいます。
そこで登場したヤギミルク
ヤギミルクは弊社にもオーストラリアやニュージーランドからお取り扱いの営業をいただくことが多いミルクです。
畜産大国の国では身近なのかもしれませんが、日本ではあまり耳にしないように思います。
ヤギミルクとはその名の通り、ヤギのミルクです。
やぎ乳と牛乳の比較(食品成分データベース)
栄養素 | やぎ乳 | 牛乳 | 単位 |
---|---|---|---|
エネルギー | 57 | 61 | kcal |
タンパク質 | 3.1 | 3.3 | g |
脂質 | 3.6 | 3.8 | g |
炭水化物 | 4.5 | 4.8 | g |
灰分 | 0.8 | 0.7 | g |
ナトリウム | 35 | 41 | mg |
カリウム | 220 | 150 | mg |
カルシウム | 120 | 110 | mg |
マグネシウム | 12 | 10 | mg |
リン | 90 | 93 | mg |
鉄 | 0.1 | 0 | mg |
亜鉛 | 0.3 | 0.4 | mg |
ヨウ素 | 0 | 16 | μg |
ビタミンA | 36 | 38 | μg |
それぞれ一部を抜粋したデータになります。
全体的にほんのり牛乳の方が高栄養ですが、ほとんど違いがありません。
ヤギミルクは牛乳の代わりになりそうですね!それではどこに違いがあるのかという点が気になりますね。
牛乳よりヤギミルクの乳糖が少ないとは言えない
よく牛乳は乳糖不耐症で下痢になるので、ヤギミルクには乳糖が少ないという話が出ます。
しかしこの情報は間違ってはいませんが、正解であるともいいにくい面があります。
というのも牛乳の乳糖含有量は4.9%、ヤギミルクは4.2%ほどです。確かにヤギミルクの方が少なく、耐性という意味でも違いはあるかと思いますが、牛乳はダメだけどヤギミルクなら大丈夫です!というほどではありません。
しかもヤギミルクも牛乳も搾った時期によって乳糖含有量は若干違いがあり、3月の採取ではヤギミルクが5%を超えたことも確認されています。
参考:A 100-Year Review: Advances in goat milk research
つまり測定したものによって、牛乳とヤギミルクは乳糖の数が同じだったということは十分起きうることであるといえます。
ではなぜ消化不良を起こしにくいと言われているんですか?
牛乳よりもヤギミルクの方が脂肪分子が小さく、消化しやすい
ヤギの脂肪分子が牛乳の脂肪分子よりも小さく、簡単に消化ができるからだと考えられています。
Some of the key findings during the period from 1968 to 1979 included the observation that although fat globules of goat milk resemble those in cow milk, goat milk lacks agglutinin, which causes fat globules of cow milk to cluster when cooled.(Jenness and Parkash, 1971)
This, coupled with the fact that goat milk contains a higher proportion of small fat globules than large (Schultz and Chandler, 1921; Jenness, 1980), , explains why goat milk is called “naturally homogenized.”
However, it was not until Cerbulis et al., 1982 that the lipid distribution of goat milk was formally investigated and reported. Goat milk fat resembled cow milk fat with respect to lipid fractions of whole milk and cream, containing 97 to 99% free lipid (97% of which was in the form of triglycerides) and 1 to 3% bound lipid (containing neutral lipid, glycolipid, and phospholipid). However, goat skim milk contained more free lipid than cow milk, likely because of the higher proportion of small globules (Cerbulis et al., 1982).
一部抜粋しましたが、ヤギミルクの脂肪分子は牛乳の脂肪分子に似ていますが、ヤギ乳には牛乳の脂肪分子を冷却時に凝集させるアグルチニンがないこと、ヤギ乳には大きな脂肪球よりも小さな脂肪球の割合が多いことがわかっているということです。
このように脂肪分子が小さいことで消化がしやすく、消化不良を起こしにくいと考えられるわけですが、これにも明確な回答があり、「ヤギミルクにも乳糖が含まれているので症状が重度の場合は避けるべきであるが、軽度である場合はヤギミルクやヨーグルト、チーズなどを楽しむことができる。乳糖不耐症の人でも1日当たり1杯(250ml)程度のミルクなら許容できる」としています。
猫にヤギミルクは与えてみて判断しましょう
猫についても同様です。与えてみないとわからないというのが本音です。原因が乳糖だけなのであれば牛乳を与えてみてダメならヤギミルクもダメな可能性が高いと言えるのですが、「ヤギミルクの方が脂肪分子が小さく消化しやすい」という違いがある以上、その猫がそれに耐えられるかどうかがポイントとなります。
また少し与えただけで問題がなかった場合でも量を増やせば消化不良を起こす可能性があります。
このため、徐々に与えて様子を見るようにしましょう。
猫にヤギミルクを与えるメリット
人も猫も犬も生まれてすぐはミルクだけで育ちます。それほどミルクには栄養が豊富ということであり、飲めるのであればその栄養を享受することができます。
毎日飲む必要はありませんが、時折使用することで猫の食育として「食を楽しむ」ことにも繋がり、猫の食欲を刺激することもできます。
猫は気分屋な一面もあり、慢性的に食欲不足になることもありますし、変化を与えることで今までの食事を多く食べるようになることもあります。
また老猫など固形物を多く食べられなくなった場合の補助的にも使うことができます。老猫に限らず体力が落ちている時などには重宝しますので、愛猫に慣れさせえておくこともよいかもしれません。
まとめ
- 猫は乳糖不耐症で牛乳が苦手
- 必ずしも牛乳よりヤギミルクの方が乳糖が少ないとは言えない
- 牛乳よりもヤギミルクの方が脂肪分子が小さく消化しやすい
- 軽度の乳糖不耐症の場合はヤギミルクなら問題ない場合がある
- 乳糖不耐症であっても人で1日辺り250ml(コップ1杯)位なら許容できる
- ヤギミルクは体力が落ちて固形物が食べられない時などに有効
ヤギミルクで愛猫の食の幅を広げたり、病気や老猫で体力が落ちているとき、固形物が食べれない時に有効な選択になります。若い内から慣れさせておいてもいいかもしれません。