前回猫が水分補給しない場合はウェットフードの併用をおすすめするが、ナトリウムの過剰摂取に注意してほしいということを話しました。
今回はそれに続き、ウェットフードに含まれるリンについて勉強していきましょう。
目次
ウェットフードはリン含有量が多い製品がある
ウェットフード、猫缶などは魚類を使用したものも多く、おやつやウェットフードにはリンが多く含まれる製品があることもわかっています。
これらは食材そのものに多く含まれている場合もあると思いますし、食いつきを重視して添加しているものもあるかと思います。
リンは食いつきに影響する
マッサンのペットフードの学校でも度々話題にしていますが、リンはうまみ成分であり、食いつきに影響してきます。
腎臓病に関する療法食の食いつきが悪いと言われやすい原因のひとつもリンを抑制していることが関係しています。
リンは猫が好む魚肉に多く含まれ、その他には鶏卵や小麦、乳製品、大豆、畜肉などにも多く含まれています。
慢性腎不全にはリンの影響が大きいと考えられている
慢性腎臓病の療法食などでもリンを抑制したレシピが多いように、腎臓病が一定の段階まで進んだ際にはリンの制限を行う場合が多い。
またカルシウム:リンの比率が低い場合にリンの吸収率が上がってしまう点にも注意が必要です。
リンはカルシウムとくっつくことからリンの吸収はカルシウムによって抑制されるため、このバランスが悪いと健康な猫でもリンの吸収率が高まった結果、腎臓病が誘発される可能性があります。
またなんでもかんでもリンが悪いというわけでもなく、自然由来のリンは吸収率が比較的低く、添加物由来の無機リン、中でもリン酸、リン酸ナトリウム塩、リン酸カリウム塩が吸収率が高いとされています。
カルシウムとリンのバランスは尿路結石にも影響する
反対にカルシウムの吸収もリンによって抑制されます。またリンとカルシウムが結合することでリン酸カルシウムとなり、尿路結石の原因ともなるため、バランスが重要です。
おやつやウェットは総リン量が少なく、カルシウム:リン比が1以上のものを選ぶ
ウェットフードは食いつき向上のためにリン酸ナトリウムを添加する場合が多く、リンの過剰摂取が問題となっている。
しかし含有されているリンからリン酸ナトリウムやリン酸カリウムであるかどうかを判別することは難しいため、ウェットフードを選ぶ際には総リン含有量が少なめで、カルシウム:リン比が1以上のものを選択することができることとなります。(1以上とはカルシウム÷リンが1以上となるもの)
リン含有量上限の参考値
具体的にはリンの含有量が3.5g / 1000kcal ME(乾物換算で1.2%相当)以下が上限の参考値として考えて良いかと思います。
しかしおやつやウェットフードの場合、どちらも表示されていないことが多いため、メーカーに確認するか、表示をされているものを選択するしかなく、選びにくいというのが現状です。
リンを減らせば理屈上は腎臓負担を軽減できる
- カルシウム:リン比が1以上
- リン酸、リン酸ナトリウム塩、リン酸カリウム塩不使用
- 総リンができるだけ低い
こうしたおやつ、ウェットであれば腎臓負担を低減しながら与えることができると言えます。
総合栄養食のキャットフードのリンについて
総合栄養食のドライフードであってもAAFCOの規定にもリン含有量の下限値がないため、少し高めといえる3~4g/1000kcal ME位の製品もあり、バラバラです。
弊社のロニー、エリザベス、ウィリアムはリンの添加をしておらず、食材からのみとなっています。例えばロニーのリン含有量は2.04g/1000kcal MEと総合栄養食の中では少なめの設定となっており、想定値と実測値にも大きく乖離はありませんでした。
含有量を確認する場合はパーセントだけで確認しないように
含有量を確認する場合はパーセントだけで確認しないようにしてください。100g辺りのカロリーが高い場合、1000g辺りのリンなどの含有量は低くなる可能性があるからです。
以下を比較してみてください。
- 商品A:400kcal/100g リン含有量 1% ⇒ 2.5g/1000kcal
- 商品B:350kcal/100g リン含有量 1% ⇒ 2.85g/1000kcal
一件ヘルシーにみえる商品Bの方がリン摂取量が多いことがわかります。
100gあたりのカロリーが高いからタンパク質やリンの含有量も多いと考えるのは間違い
弊社商品は例えばロニーの場合410kcal/100gですので、高カロリーであると考えられがちで、リンの含有量なども多いと感じられてしまうことがあります。
しかし実際にはパーセントや100g辺りのカロリーだけで判断してはいけないということがわかるかと思います。
これはドライフードだけではなく、キャットフード全体に関係する内容です。
より猫のことを考え、より負担がないようにするためには、多くのことを考慮する必要がありますが、前回と今回はウェットフードを併用して与える場合の注意点についてお話してみました。