塩化物(Chloride)とは
AAFCOに基準がある塩化物(Chloride)はコリンと同じく、日本の食品成分表には記載のないものです。それだけ意識されにくい栄養素ですが、塩化物とは言ったどういったものなのかを勉強していきたいと思います。
塩化物は塩素と他の元素との化合物で、ほとんど全ての元素が塩化物を作ります。
塩素とは
塩素とはミネラルの一種で、主に塩化ナトリウム(食塩)として摂取しています。
塩素は魚などの一定の食品を除いて食品には多く含まれていないため、味付けをしない手作りのペットフードで食材からだけ塩素を摂取しようとすると不足する傾向にあります。
食塩って摂取に気を付けないと多く摂取してしまうイメージがありますが、食材からだけだと不足する傾向にあるんですね!
人用の食事では味付けをしたり、保存用に塩分を使用したりしますので塩分過多になりがちですが、犬猫用のご飯では味付けの必要がありません。
このため総合栄養食のドッグフードやキャットフードを製造する場合には塩化ナトリウム(食塩)などを添加する必要があります。
塩分といえば体液の浸透圧の調整がよく言われます。他にも腸内環境のpH調整、血液内のpH調整などにも使われます。
塩素の算出方法
塩素は食品成分表に記載がありません。このためレシピ作成時などはナトリウムの値から算出する方法が紹介されています。
食品成分表のナトリウム値に塩素(原子量、35.45)とナトリウム(原子量、23)の原子量比を乗じて「塩素」量として用いています。
参考:イヌの維持期のAAFCO養分基準(2016)を満たす手作り食レシピの設計方法
塩素の過剰症
ナトリウムを過剰摂取すると多少であればおしっこで体外に排出されますが、それも続いてしまうと人と同じように高血圧になり、心臓病や腎臓病を招いてしまいます。
ただ心臓病や腎臓病の場合にはナトリウム制限が行われることはありますが、一概に制限すればよいというわけではありません。腎臓病の初期段階では塩分と高血圧の関連は認められておらず、それ以外の要因が考えられるため、過剰に摂取することは避けるべきですが、規定内であれば獣医師と様子をみてコントロールするようにしましょう。
人用の味付けをした料理を毎日食べるようなことがあっては、過剰症になってしまいますので、卓上のご飯など食べられないように注意しましょう。
塩素の欠乏症
犬猫は人のように全身で汗をかくことがないため、基本的に欠乏症になるケースはほぼ考えられない範囲のものですが、例えば大量の水を摂取すると血液中のナトリウム濃度が下がることで低ナトリウム血症になる場合があります。ナトリウムが欠乏すると攣ったり筋肉のけいれんが起こります。
例えば川遊びなどで大量の水を飲み込んでしまい、低ナトリウム血症になり突然泳げなくなって溺れるということがあります。
こうしたことからも体内の水分を減らそうと飲料水の減少が起こります。反対に尿量の増加がおこります。
あまり普段は気にする必要がないものですが、手作り食をメインにする場合などは気にしてみてもいいかもしれませんね!
漂白剤などの塩素は大変危険です
食品の栄養素としての塩素ではなく、プールの殺菌や掃除の漂白剤などに使用される塩素系薬品は大変危険です。
犬も猫も舐めてしまえば口も皮膚も胃腸などにもただれ、炎症を起こしてしまい、ガス(匂い)を吸うだけで咳き込んだり呼吸困難を引き起こす場合があります。
しかし猫には塩素の匂いが好きな子がおり、またたびのように興奮してしまう場合があります。
こうしたことからも犬猫ともに近寄れない状態にして使用するようにしましょう。
もし舐めてしまったら
万が一舐めてしまった場合にはすぐに口の中を洗い、更に水や牛乳を飲ませてください。無理矢理吐き出させようとすると戻ってきた漂白剤で更に状況が悪化する場合があるのですぐに動物病院へ連れていき、胃洗浄などをしてもらいましょう。