銅について
前回鉄分の話をしましたので、続きペットフードと銅について話をしてみたいと思います。
ペットフードと銅の関係はあまり話題にあがらないかもしれませんね。
一般的なキャットフードやドッグフードを与えていれば銅欠乏が生じることはほとんど見られませんので普段意識することは少ないかもしれません。
銅(Cu)とは必須ミネラルのひとつで、主に小腸で鉄の吸収を促進を促し、ヘモグロビン合成に必須の酵素としてヘモグロビンへの鉄の取り込みを促進します。
鉄が不足すると貧血が起こることは知られていますが、銅が欠乏しても貧血を引き起こします。
そのほか免疫細胞の代謝に関わる酵素の構成成分であることからも免疫力を高める効果もあると言えます。そのほかコラーゲンの生成や被毛の色素損失をコントロールする酵素の構成成分でもあります。
参考:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpan1998/5/3/5_128/_pdf(9)ミネラルの役割と要求量(その2) 9-4-3 銅(Cu) Jstage
銅の吸収を抑制する
亜鉛やカドミウム、モリブデン、ビタミンC、胆汁、食物繊維は銅吸収を抑制します。
鉄ではビタミンCが非ヘム鉄の吸収を手伝うのに、銅ではビタミンCが吸収を抑制してしまうんですね!
消化管内での銅、亜鉛、鉄の吸収は相互関係があり、鉄、亜鉛の量が過剰な場合は銅の利用率は減少してしまいます。
銅の利用性が高い食品
銅は動物性食品(肉類や食肉副産物)に多く含まれていますが、面白いことに反芻家畜、鳥類の肝臓に含まれる銅の利用性は高いのに、豚の肝臓中の銅は利用性が非常に低いことがわかっています。
反芻家畜とは牛、羊、山羊など4つの胃を持つ動物です。
上記より銅だけに絞ればキャットフードやドッグフードには豚以外が適しているとも言えます。こうした積み重ねでどの食材が良さそうかを決めていきますが、どの点でも鶏肉はペットフードとして非常に向いている食材です。
無機態の銅では硫酸銅や炭酸銅の利用性が高く、酸化銅はほとんど利用されないため、ペットフードでは硫酸銅で添加している商品が多いと思います。
硫酸銅は安全?
硫酸という言葉がついていますので硫酸銅の安全性について不安を持たれるといった質問があります。
硫酸銅は劇薬として指定されている一方、乳児に用いる人工乳(ミルク)には指定された濃度以下で食品添加物として使用が認められています。
これは銅はほとんどの食品に含まれていることから欠乏は起こらないのですが、100%ミルクに依存する乳児の場合はミルクから銅を摂取する必要があるため、他の銅塩より水溶性の高い硫酸銅が使用されています。
わかりやすく言うと猫も同様で、その体躯からも乳児と同じように考えられていると言えます。
因みに大人でも完全人工栄養に依存する状態の場合は硫酸銅が使用されます。
乳児における銅、亜鉛の欠乏について
それでも硫酸銅は猫にとって危険ではと考える方に、乳児の場合の銅や亜鉛の欠乏症について懸念されたワークショップについて紹介したいと思います。
乳児用調製粉乳は母乳代替食品であり、亜鉛塩類、銅塩類の添加が認められている。フォローアップミルクは母乳代替食品には含まれないため、亜鉛塩類、銅塩類の添加が認められない。
今までにフォローアップミルクでの欠乏症の報告はないが、日本国内のフォローアップミルクでは、銅および亜鉛含量が低く離乳食が進まなければ欠乏症を起こす可能性がありこれらの栄養素含有適正化の検討が必要である。
与えないことによる欠乏の懸念は考えられていますが、現在では欠乏の可能性があっても与えないという選択肢は考えられていません。これは食品添加物について詳しい慶田雅洋氏による「乳児栄養における亜鉛と銅の重要性」で1984年の時点でも言われており、硫酸銅の添加は長い期間行われてきたことで安全性が確認されていることもわかります。
キャットフード・ドッグフードと銅
銅は欠乏しにくいミネラルなので普段意識することはなくてよいと思います。ただし鉄や亜鉛と相互関係がありますので、そちらに引っ張られることがあります。
鉄、亜鉛の量が過剰な場合は銅の利用率は減少しますが、非ヘム鉄を摂取した場合、その吸収にはビタミンCが必要ですが、ビタミンCは銅の吸収を抑制してしまいます。こうした点から鉄はヘム鉄であることが望ましく、鉄、銅ともに動物性食品から摂取することが理想的だと言えそうです。
肉食動物である猫にとって動物性食品がいかに大切かはミネラルを学んでいくとよりわかりやすくなっていきますね。
この流れで今後他のミネラルについても相互関係を学んでいきましょう。
まとめ
- 銅は欠乏する可能性が低い
- 鉄と亜鉛、銅は相互関係にあり、鉄、亜鉛の量が過剰な場合は銅の利用率が減少する
- 亜鉛、カドミウム、モリブデン、ビタミンC、胆汁、食物繊維は銅吸収を抑制する
- 反芻家畜、鳥類の肝臓に含まれる銅の利用性は高い
- 豚の肝臓中の銅は利用性が非常に低い
- ペットフードには硫酸銅が使用されることが多い
銅は欠乏しにくいミネラルであることがわかりました。またペットフードに使用されやすい硫酸銅の安全性について長年考えられた配合であることもわかりました。