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シスチン(Cystine)とは
シスチンはシステインが2つ合わさった硫黄を含む含硫アミノ酸です。1810年にウィリアムハイムウォラストンが発見されました。
AAFCOの規定ではメチオニンシスチンとして、同じ含硫アミノ酸であるメチオニンと一緒に考えられています。これはシステインはメチオニンから合成することができるためであると考えられます。
たんぱく質、ケラチンに多く含まれていて、たんぱく質の構造を安定化するのに役立っています。ケラチンはシスチン、メチオニン共に原料となっています。
被毛の主成分であるケラチンになる
システインは同じ含硫アミノ酸のメチオニンなどと合わせて被毛の主成分であるたんぱく質のケラチンになります。このため被毛の発育、維持に重要な役割を果たします。
その他にも爪や皮膚の角質層、犬猫以外の動物の場合は角にも豊富に含まれています。
傷の治癒促進にも関与
皮膚の角質層などのたんぱく質の合成材料となることからも痛んだ組織の修復を行い、傷の治癒促進が期待できます。
抗酸化作用、硫酸を含んでいることから硫黄を分離して毒素と結合して解毒する作用などもあります。
含硫アミノ酸は尿路結石の治療の一部としても使われる
シスチンではなくメチオニンではありますが、硫酸を含む含硫アミノ酸は代謝されると硫酸を生じ、尿に含まれて排出されます。これによって尿を酸性に保つことができるため、尿路結石の治療の一部としても使われます。
シスチン尿石症は犬の遺伝的要素で起こる
尿石はカルシウム、リン、マグネシウムのミネラル成分が石灰化することで結晶となることで発生します。
シスチン結石の場合は、本来犬の肝臓を通過後に体内に再吸収されますが、これが遺伝的な障害などで再吸収がうまくできず、尿中のシスチン量が増えてしまい、結石となってしまいます。
先天的なもののため、非常に珍しい結石症ではあり、治すのが難しい病気ですが、ダックスフンドやブルドッグ、ヨークシャーテリアなど日本でもよく見られる犬種でも発症しやすいとされていますので気になることがあれば調べてみるのもよいと思います。
基本的には尿を酸性に保ち、尿路結石の治療の一部としても使われる含硫アミノ酸ですが、先天的なシスチン尿石症を患っている場合は逆に尿が酸性に傾くことでシスチン結石が起こりやすくなってしまうため、尿をアルカリ性に傾ける療法食が用いられます。
シスチンを含む食材
鶏肉、鰹、鮭、サンマ、納豆、木綿豆腐、たまねぎ、にんにく、オートミールなどがあります。
動物性だけでなく植物性の食べ物にも含まれている点もポイント。
食品名 | シスチン(mg /100g) |
---|---|
オートミール | 500 |
糸引き納豆 | 320 |
鰹 | 270 |
鶏もも肉皮なし生 | 270 |
白鮭 | 240 |
牛肉もも赤身生 | 240 |
皮付きサンマ生 | 200 |
ドライトマト | 150 |
クコの実乾燥 | 120 |
木綿豆腐 | 100 |
乾燥バナナ | 53 |
キウイフルーツ | 30 |
参考:食品成分表2022(八訂)
シスチンのペットフード含有量
AAFCOのドッグフードにおける基準値
AAFCO DOG FOOD NUTRIENT PROFILES BASED ON DRY MATTER
栄養素 | 乾物ベース単位 | 成長期&妊娠期 最小値 | 成犬の維持期 最小値 |
メチオニンシスチン | % | 0.70 | 0.65 |
AAFCOの基準ではメチオニンシスチンとして一緒の項目で定められています。子犬、妊娠期は0.70%以上、成犬の維持期は0.65%以上となっています。
AAFCO DOG FOOD NUTRIENT PROFILES BASED ON CALORIE CONTENT
栄養素 | 1000kcal MEあたり | 成長期&妊娠期 最小値 | 成犬の維持期 最小値 |
メチオニンシスチン | g | 1.75 | 1.63 |
シスチン(メチオニンシスチン量からメチオニン量を引いたもの) | g | 0.87 | 0.8 |
参考:AAFCO DOG FOOD NUTRIENT PROFILES(PDF)
カロリーベースでの計算ではメチオニンシスチン量からメチオニン量を引くことで擬似的にシスチン量を予測することができます。
AAFCOのキャットフードにおける基準値
AAFCO CAT FOOD NUTRIENT PROFILES BASED ON DRY MATTER
栄養素 | 乾物ベース単位 | 成長期&妊娠期 最小値 | 成猫の維持期 最小値 |
メチオニンシスチン | % | 1.10 | 0.40 |
AAFCOの基準ではメチオニンシスチンとして一緒の項目で定められています。子猫、妊娠期は1.10%以上、成猫の維持期は0.40%以上となっています。
AAFCO CAT FOOD NUTRIENT PROFILES BASED ON CALORIE CONTENT
栄養素 | 1000kcal MEあたり | 成長期&妊娠期 最小値 | 成猫の維持期 最小値 |
メチオニンシスチン | g | 2.75 | 1.00 |
シスチン(メチオニンシスチン量からメチオニン量を引いたもの) | g | 1.2 | 0.5 |
参考:AAFCO CAT FOOD NUTRIENT PROFILES(PDF)
カロリーベースでの計算ではメチオニンシスチン量からメチオニン量を引くことで擬似的にシスチン量を予測することができます。
まとめ
- シスチンはシステインが2つ合わさった含硫アミノ酸
- シスチンは同じ含硫アミノ酸であるメチオニンと一緒に考えられる
- ケラチンの主成分になるため皮膚被毛の健康に影響を与える
- 硫酸を含んでいることから硫黄を分離して毒素と結合して解毒する作用が考えられる
皮膚被毛にとって重要な硫酸アミノ酸のシスチン。メチオニンからシステインを合成することができるため、AAFCOの規定ではメチオニンと一緒に考えられている点がポイントです。