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ドッグフードの原材料でアレルギーが発症しやすい原材料は
人や犬猫動物のアレルギー発症の原因となる物質はタンパク質です。脂質と糖質を除けば全ての食品にタンパク質が含まれています。完全に脂質、糖質という食品は純粋な油や砂糖などだけです。
このため、誤解を恐れずいえばほぼ全ての食品でアレルギーが起こるということになります。
ほぼ全ての食品で!
しかし、人用の食品表示でもあるように、アレルギーが起こりやすい食品というものはわかっています。
人用のアレルゲン表示
特定原材料7品目表示義務
卵 | 乳 | 小麦 |
そば | 落花生(ピーナッツ) | えび |
かに |
特定原材料に準ずる推奨21品目
アーモンド | あわび | いか |
いくら | オレンジ | カシューナッツ |
キウイフルーツ | 牛肉 | くるみ |
ごま | さけ | さば |
大豆 | 鶏肉 | バナナ |
豚肉 | まつたけ | 桃 |
やまいも | りんご | ゼラチン |
使用原材料が多いドッグフードほどアレルギーが発症しやすい?
そうなると、使っている原材料が多いほど何かのアレルギーに反応する可能性が高くなるということですか…?
確かに確率でいえばそういうことになると思います。
ただ、本当にそうか?というと難しいところです。人は多種多様なものを食べますが、何でもかんでもアレルギーが出るという人はいません。
犬猫は口にするものも限られていますので、たくさんの原材料を使っているからアレルギーが出やすい!と考える必要はありません。
あくまでアレルギーが出た食品を避けるという考え方
あくまでアレルギーが出たものに焦点をあてて、避けるという考え方が基本です。犬におけるアレルギーで一般的なものは以下などです。魚や豚肉などでも見られます。
- 牛肉
- 乳製品
- 小麦
- 穀物
- 大豆
- 鶏肉
- 卵
また交差反応というものもあります。
交差反応はアレルギーが出た原材料に似ている原材料でもアレルギーが出てしまうことですよね。
だいたいそんな感じです(笑)
牛乳アレルギーの人は羊や山羊の乳に交差反応しますので、羊や山羊ミルクでもアレルギーが出る可能性が高くなります。こうしたことを考え、ある程度先回りして避けることも可能ですが、あまり先回りすると本当は大丈夫でも避けていたということになり、食の幅、楽しみに影響が出てしまいます。
犬のQOL向上を考える上でも、可能な限りアレルゲンだけを避けられるようにできるのがベストですね。
交差反応とは
食物アレルギーには交差反応というものがあります。
例えば鶏肉アレルギーの場合は七面鳥でもアレルギーが出る場合があります。これはタンパク質の構造が似ているため、体が判別できずにアレルギーが起こることです。
メイン食材 | 交差性のある食材 |
---|---|
鶏肉 | 七面鳥、鶏卵、ウズラ |
牛肉 | 鹿、羊、豚、馬、ウサギ、牛乳、山羊ミルク、乳製品 |
魚 | 魚全般、(鶏肉も?) |
小麦 | 大麦、ライ麦、オート麦 |
似ているから必ずしも高い交差反応が出るとは限らない
ただし似ているからなど想像で判断できるものではなく、人の場合ですが、エビアレルギー患者の65%はカニにも症状が出ますが、甲殻類と軟体類、貝類の交差反応は20%程度といいます。
参考:厚生労働科学研究班による食物アレルギーの栄養食事指導の手引き2017(PDF)
なので、似ているから必ずしも出るというわけではないので、簡単に考えて避けてしまうと、本来食べられるものを避けていたということが起こります。
上記でいえばエビアレルギーに対して甲殻類や軟体類、貝類などは20%交差反応が起こるという考え方もできますが、80%食べられると考えれば、QOLの面を考えると確認せずに食べられる可能性を減らす必要はないのではと思います。もちろんアレルギーの度合いにもよりますが。
鶏肉とダックは別?
鶏肉とダック(鴨、アヒル)は別だと言われていますが、弱いながらも出る可能性はあるそうなので、これも交差反応だから避けようというとそうではなく、犬それぞれに確認していくしかないのかもしれません。
ダック(鴨、アヒル)やラム肉、鹿肉などは食物アレルギーが出た場合の除去食としても使用されています。
それは鶏肉や牛肉などに比べて犬が口にする可能性が低い食材で、かつアレルギーが出にくいという考えのもと選ばれているようです。
鶏肉にアレルギーがある場合は魚にも?
また、鶏肉にアレルギーが出る場合、魚にもアレルギーが出る可能性が言われています。
犬のアレルゲンになり得る食品は?
ではこれらは犬猫でも同様にアレルギーが発症するのでしょうか?
発症するかだけでいえば、前述の通り、発症する可能性はあります。しかし、ペットフードに原材料として使われるかという問題を考えると、やはり人用とは序列が変わってきます。
食品でアナフィラキシーショックまで起こることは少ない
ただし、よほど事故が起こらない限りは、通常の生活の中で食べ物でアナフィラキシーショックを起こすことは少ないことは覚えておきましょう。
症状としては皮膚炎や消化器症状(下痢、嘔吐など)、呼吸器症状などが見られます。
多いアレルゲンは肉、乳製品、小麦
犬で多いアレルゲンは牛肉、乳製品、小麦です。これで70%を占めます。次いで鶏肉、鶏卵、子羊肉、大豆で25%、それ以外が5%という研究データがあります。
ただし、ラム肉は新奇タンパク質フードとして、アレルギー除去食として試されるドッグフードのひとつですので後で解説します。
犬で多いアレルゲン | アレルゲンの割合 |
---|---|
牛肉、乳製品、小麦 | 70% |
鶏肉、鶏卵、子羊肉、大豆 | 25% |
それ以外 | 5% |
アレルギー除去食に用いられる原材料
基本的には犬が口にする可能性が低い食材が選択されます。
口にしていない場合はまだ免疫ができていないと考えられるのでアレルギー反応が起きない可能性があるためです。
このため上記で紹介した牛肉、乳製品、小麦、穀物、大豆、鶏肉、卵などは避けられる傾向にあります。
加水分解タンパク質
タンパク質がアレルゲンとなるわけですが、加水分解タンパク質はこの限りではありません。
アレルギーの原因となるタンパク質の状態からアミノ酸にまで分解することでアレルゲンとなる可能性が減り、除去食にも用いられます。
加水分解タンパク質であれば、除去食に加水分解大豆タンパク、加水分解チキンタンパクや加水分解チキンレバーなども用いられます。
米
穀物である米は穀物アレルギーの可能性があり、矛盾したように感じられるかと思いますが、アレルギー対応食にはなくてはならない原材料です。
もちろん穀物アレルギーの場合は避けるべきですが、米はアレルゲンになる可能性は低いため、アレルゲンになる確率の高い肉などの除去食として米が良く使われます。
ただ、米だけでアレルギー対策フードが作れるわけではなく、米と加水分解タンパク質のふたつを利用して作られていることが多いです。
ダック(鴨、アヒル)
日本では鴨とアヒルが違う認識ですが、鴨は野生に生きる鴨を表し、アヒルはマガモが家禽化されたものです。家禽化されたことで羽が退化していて少ししか飛べません。
こうしたことからどちらも鴨なので、どちらもダックと言います。あえて分ける場合は鴨をワイルドダックと呼びます。
鴨とアヒルは同じなんですね!
付け加えると合鴨は鴨とアヒルを交雑させてできた種です。鴨の方が肉が締まっていておいしく、アヒルの方が肉が豊富に取れるのでお互いの利点を生かしたものが合鴨です。
そんなダックですが、低アレルゲンで食物アレルギー対策フードとしても使用されます。ドッグフードに使われることも多い鶏肉を好む犬が鶏肉アレルギーといった場合にも、上記の紹介の通り、有効な可能性があります。
新奇タンパク質ドッグフードとは
食べたものがある、また、よく使われている原材料では気付かない部分で使われていたり、どこかしらで摂取したことがあることから、アレルギー対策として今までに食べたことがないタンパク質が含まれているドッグフードをアレルギー対策として使用します。
主にダック、ラム、白身魚、カペリン、キャットフィッシュなどが使われます。
炭水化物源としては米、ポテト、タピオカが主に使用されます。
牛肉は非常に難しい
鶏肉の場合は同じ鶏肉系でもダックといった逃げ道もありますが、牛肉アレルギーの場合は交差反応があるものが多くなります。
牛肉に対して交差反応があるとされているものが、羊(アミノ酸配列の相同性92%)、豚(78%)、馬(74%)、ウサギ(72%)、そして鶏肉(44%)です。
参考:Spectrum Labs, Inc.(ARIZONA U.S.A.)
半分以下ながらも鶏肉まで及び、食べられるものがかなり狭まってしまうという結果のようです。
手作り食でアレルゲンの疑いのある食材を排除
アレルゲンであると思われるものを除去すればいいですから、家庭で作ることも可能です。この場合はより自由に原材料の選択ができます。
ただし、手作り食は栄養バランスを取ることが非常に難しく、完全に手作り食でずっと続けていくことはとても難しいです。
アレルギーは食事だけで起こるものではないので注意
アレルギーが起こった場合、最も身近なものがドッグフードなので、原因をドッグフードに限定しがちですが、食事以外にマラセチア、ヒゼンダニ、ノミ、薬物、花粉、虫など多くの原因があります。アトピーが併発したりと、症状も似ているものが多いですので、飼い主が判断することはせず、獣医師に相談するようにしましょう。
もし食物アレルギーだと思い込んでいて原因が違ったら…と思うと怖いですね!
特に季節の変わり目などにも起こりやすいため、食事量にも変化が現れる時期であり、余計にドッグフードが原因のように感じやすいケースもありますので注意が必要です。
結果的に素人判断はしない方がいいということですね。
まとめ
- アレルギーの原因物質はタンパク質
- ほぼ全ての食品でアレルギーになる可能性がある
- アレルギーが発症しやすい食品はだいたいわかっている
- アレルギー対策はアレルギーが出た食品を除くことが基本
- 犬のアレルギーは牛肉、乳製品、小麦で70%を占める
- 次点に鶏肉、鶏卵、子羊肉、大豆で25%
- 普段あまり接しないタンパク源を利用したフードがアレルギー対策に使われる
- タンパク質は加水分解するとアレルゲンになりにくくなる
- アレルギーは食事だけで起こるわけではないので素人判断は注意
食品アレルギーは素人判断はせず、出来る限り獣医師の意見を聞いて確認した方が良さそうですね!