目次
葉酸とは
葉酸(ビタミンB9)とは水溶性ビタミンのひとつですが普段気に掛けるケースでは妊娠期の葉酸の摂取量ではないでしょうか。
葉酸は以下のような作用があるため、細胞分裂、発育、繁殖に重要です。
- アミノ酸の代謝
- DNA・RNAの合成
- メタン産生
- タンパク質の合成を促進
細胞分裂にも大きく関わるため、生まれてくる子ども、胎児にとって大変重要な栄養素となります。しかも妊娠前から摂取することで胎児の神経管閉鎖障害のリスクを減らすことができるとして十分な摂取が勧められています。
男性にはあまり馴染みがない人も多いかもしれませんね。
葉酸を多く含む食品
ほうれん草の抽出物から見つかったため、葉酸と名前が付いたようですのでほうれん草には豊富に含まれています。その他にも海苔やわかめ等の海藻にも多く含まれています。
- 海苔
- わかめ
- ほうれん草
- ブロッコリー
- アスパラガス
- ひよこ豆
ペットフードに使われる葉酸を多く含む食品
葉酸は葉っぱだから植物性食品にしか含まれていないんですか?
それが植物性食品よりも大変多く含まれている動物性食品があります。それがレバーです。牛、豚、鶏共に豊富に含まれています。
- 牛レバー
- 豚レバー
- 鶏レバー
その他にも卵黄や桜エビなど海鮮品にも含まれていますよ。
ペットフードについて考えると、葉酸を含む動物性食品を原材料にして摂取するという形でしょうか。
ペットフードでよく使われる原材料でいえば以下のような食材から摂取しています。
- ひよこ豆(350μg)
- 乾燥大豆(260μg)
- 乾燥全卵(180μg)
- 海藻(180μg)※参考値は藻類
- 南極オキアミ(49μg)※参考値は生冷凍品
- さつまいも(47μg)※参考値は焼
- 亜麻仁(46μg)※参考値はいり
- チコリ(41μg)※参考値は生
- 玄米(27μg)
- 肉類など(牛レバー 1000μg、牛腎臓 250μg、豚レバー 810μg、豚腎臓 130μg、鶏レバー 1300μg)
ドッグフードやキャットフードの場合は原材料を少なくしたシンプルなレシピで作ることもできますが、栄養素が偏ってしまいがちです。その場合は栄養添加物でバランスを取ることになりますが、より豊富な原材料を使うことで極力自然な栄養素を配合することができます。
葉酸は水に溶け出しやすい
葉酸(ビタミンB9)は水に溶け出しやすいため、ほうれん草などは茹でると葉酸が水に溶け出てしまいます。このため葉酸を摂取するためには加熱調理の方が向いています。
とはいえ熱にも決して強くはないため、例えば生のほうれん草100g辺り210μgの葉酸も油炒めをすることで140μgまで減少します。
炒める油の温度は概ね170~180℃程度であることを考えると、ペットフードの加熱工程はそこまで高くありませんので問題はありません。
それでも加熱であれば一定量は摂取することができるんですね。
あとは原材料の時点でどのような形状になっているか(生か乾燥か粉末か)でそもそもの葉酸含有率に違いがありますので一概には言えませんが、例えば乾燥ほうれん草では60℃位で乾燥粉末にすることができますので、葉酸を大きく損なうということはないように思います。
天然葉酸の吸収率は50%程度
では次に葉酸はどれだけ吸収できるかという点です。
葉酸にはポリグルタミン酸型(天然葉酸)とモノグルタミン酸型(合成葉酸)があります。
ポリグルタミン酸型(天然葉酸)
食品に含まれる天然の葉酸がポリグルタミン酸型です。ペットフードの原材料からとなるとこちらになりますが、体内でものグルタミン酸型に変化しますが、吸収率が50%程度と言われています。
モノグルタミン酸型(合成葉酸)
モノグルタミン酸型はその名の通り、モノ=ひとつ、つまり一つグルタミン酸が結合した葉酸のことです。サプリメントなどで使われており、葉酸の推奨摂取量はこのモノグルタミン酸型で計算されています。
吸収率はポリグルタミン酸型よりも高いとされています。
必要量を摂取する大変さ
猫は食事から摂取する必要があります。犬は葉酸を腸内細菌が生成することが出来ます。しかし一日の摂取量を満たしているかはわからないため食事で摂取することとしています。その代わり食事から摂取しなければならない猫と比べると犬の必要摂取量は非常に少なくなっています。
因みに総合栄養食のドッグフード・キャットフードには最低配合量が定められていますので不足することはありません。
AAFCO DOG FOOD NUTRIENT PROFILES BASED ON DRY MATTER
- 成長期・妊娠期 0.216mg/kg
- 成犬 0.216mg/kg
AAFCO CAT FOOD NUTRIENT PROFILES BASED ON DRY MATTER
- 成長期・妊娠期 0.8mg/kg
- 成猫 0.8mg/kg
ペットフードへの葉酸配合量をイメージしてみよう
上記の通り、最低必要量はg換算にすると犬で0.000216g/kg、猫で0.0008g/kgと非常にわずかです。塩だと何粒かという量です。
たとえばペットフードでよく使われるひよこ豆から考えてみましょう。
全粒乾燥ひよこ豆100g中350μgの葉酸が含まれています。(参考:第2章 日本食品標準成分表PDF 文部科学省)
犬の場合は全粒乾燥ひよこ豆が約61g/kg
犬の場合は0.216mg/kgなので216μg/kgが必要です。全粒乾燥ひよこ豆であれば約61g(6.1%)で補うことができます。
ドッグフードでは比較的現実的な配合量であると思います。もちろんひよこ豆以外にも多くの葉酸が入った原材料を使用しますので、ひよこ豆の配合量は減っていくということになります。
犬の場合は全粒乾燥ひよこ豆が約228g/kg
猫の場合は0.8mg/kgなので800μg/kgが必要です。全粒乾燥ひよこ豆であれば約228g(22.8%)で補うことができます。
ひよこ豆だけで葉酸を獲得しようとするとキャットフードでは配合量がかなり多くなりますね。
キャットフードでは肉原材料も多く使用しますので他原材料からも葉酸を摂取することができますが、レシピ次第ではビタミンB9を添加する場合もあるかと思います。
犬猫も妊娠期に葉酸が必要
胎児が特に胚形成の際に大変多くの葉酸を消費するため、母体が予め十分な葉酸を摂取していなければいけません。
人では肝臓に葉酸が貯蔵できるとされていますが、犬猫では以下の連載ファイルが確認できます。
葉酸は体には蓄積されないので毎日食事から摂取する必要がある。
妊娠期に欠乏すると胎児の形成に影響が出てしまいます。口蓋裂や口唇裂といった奇形の症状が多く、成長不全なども起こります。
過剰症は確認されていないため、十分な量を摂取しておくことがすすめられます。
まとめ
- 葉酸はビタミンB9である
- 水に流れ出しやすく熱にも強くはない
- 犬は葉酸を体内で合成できるが一部を食事から摂取しなければならない
- ポリグルタミン酸型(天然葉酸)とモノグルタミン酸型(合成葉酸)がある
- ポリグルタミン酸型は体内でものグルタミン酸型に変化して吸収するが吸収率は50%ほど
- 摂取基準はモノグルタミン酸型で考慮されている
- 犬猫では最低摂取量が定められている
- 特に妊娠期では多くの葉酸が必要
人間と変わらず、妊娠期には多くの葉酸が必要であることがわかりました。過剰摂取による過剰症はないようですので、必要に応じて葉酸を摂取させてあげてもいいかもしれませんね。