目次
βグルカンとは
水溶性食物繊維で多糖類の一種であるβグルカン。きのこ類や海藻、大麦などに含まれています。
多糖類とは、グルコースという単糖が多数結合してできた高分子化合物のことで、グルコースの結合の仕方が特徴的で、β-1,3結合やβ-1,6結合といった形で連なっています。この結合の仕方によって、βグルカンは様々な性質を示し、免疫力アップなど私たちの健康に様々な影響を与えます。
食品ごとにグルコースの結合の仕方が違うため、同じβグルカンといっても様々な種類があります。例えばシイタケ由来のβグルカンのひとつにレンチナンがありますが、他のきのこもレンチナンが含まれているかというとそうではありません。
βグルカンは免疫機能を整えると言われており、「レンチナン」「シゾフォラン」「クレスチン」は抗ガン剤治療薬として使われています。
レンチナン(主にシイタケ由来)について
経静脈的投与で抗がん剤治療薬として
レンチナンは椎茸などのキノコ類に含まれるβグルカンの一種です。
レンチナンには直接的ながん抑制効果よりも、キラーT細胞、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞などの働きを活性化させたり、リンパ球を活性化させて免疫脳を増強するなどの効果があります。
しかしレンチナンの抗がん剤治療薬としての効果は経口摂取では効能を示しません。
レンチナンは粉末化処理したり、冷却してしまうと集合してくっつき、数百μmの大きな凝集体になります。大きな凝集体になると経口摂取しても腸管粘膜を通過することができず、そのまま体外に排出されてしまうためです。
これを防ぐためには針やカテーテルで静脈内に直接投与する経静脈的投与を行います。
また、ナノ技術を用いて0.5μm以下の微粒子安定化すれば、経口投与でも腸管粘膜を通過することができ、効率よく利用できるということです。
参考:加齢に伴う免疫力低下とβ-グルカンの是非(2010年)
ナノ技術を用いて経口摂取で抗アレルギー効果
ナノ技術を用いて経口摂取した場合、抗アレルギー効果を発揮することもわかっています。ハウスダストやスギ花粉などにも効果が明らかになっています。
参考:【抗加齢医学会速報】 シイタケ由来成分に抗アレルギー効果を確認
アレルギー反応を抑える反面、しいたけ皮膚炎という症状もある
抗炎症作用、抗アレルギー作用を持つ反面、しいたけ皮膚炎という症状を発症する場合があります。これはレンチナンを投与したがん患者にも時折見られる症状ですが、レンチナンを血中投与しても皮膚炎を発症する人は500人中9人(0.018%)というデータもあり、非常に少ないことがわかっています。
このためレンチナンによって起きているのか、レンチナンを含むシイタケの成分に対するアレルギーなのかがわかっていません。
参考:Lentinan Dermatitis: Time to Rename Shiitake Dermatitis
また、しいたけ皮膚炎は加熱することで皮膚炎を防ぐことができます。中火(60~70℃)以上でしっかり加熱しましょう。
レンチナンは加熱すると不活性化してしまう?
しいたけは食中毒やしいたけ皮膚炎にならないように、必ず加熱してから食べなければいけません。
一般的に言われている加熱温度は中火(60~70℃)です。
しかしレンチナンの抗原性の不活性化に有用な温度は130~145℃での加熱処理であると考えられています。
もしかしたら完全に不活性化していないくてもしいたけ皮膚炎の発症率は低く抑えられるのかもしれません。
参考:「一目瞭然!目で診る症例」問題編 日本内科学会雑誌110巻8号
レンチナンは経口投与でも免疫能が増強する
ではナノ化していないレンチナンは経口投与しても意味はないのかというとそうでもありません。
レンチナンは経口投与でも腸管炎症抑制効果、抗炎症効果を有していることが明らかになっています。経口投与によって腸管が刺激を受け、リンパ球が活性化し、免疫能が増強することがわかりました。またエイズに対する有効性も報告されています。
参考:日本応用糖質科学会平成22年度大会(第59回)・第18回糖質関連酵素化学シンポジウ(2010年)
ラミナラン(海藻由来)について
海藻由来の可溶型βグルカンであるラミナランをマウスに投与した結果、前がん状態の胃上皮異形成が軽減し進行が遅れるという結果がでたことで胃がんの発症予防につながる可能性が示唆されています。
参考:海藻由来多糖類βグルカン摂取が胃がんの発症予防に繋がる可能性の発見(2018年)
他の食材のβグルカンについて
例えば霊芝にもβグルカンが含まれていますが、レンチナンと全く同じ構造のものが含まれているかどうかはわかっていません。
そして霊芝にラミナランは含まれていません。ラミナランは褐藻類(海藻の一種)で霊芝は菌類となり、異なる生物に属しているからです。
このようにβグルカンでも種類があり、それぞれ違った役割があります。
酵母由来βグルカン
パン酵母などから得られるβ-グルカンは、免疫力をアップする効果が期待されています。
穀物由来βグルカン
大麦やオート麦などに含まれるβ-グルカンは、血糖値やコレステロール値の改善に役立つ可能性があります。
他のキノコ由来のβグルカン
椎茸以外のきのこ、例えばマイタケ、霊芝、アガリクスなどにも、それぞれ特徴的な構造を持つβ-グルカンが含まれています。
免疫機能向上にはきのこや海藻などβグルカンを含む食品を
βグルカンの一種であるレンチナンやラミナランに免疫力アップの効能があることがわかりました。
犬や猫は加熱したきのこであれば食べることができます。きのこを使ったドライフードはあまりありませんが、犬用や猫用のサプリや、乾燥キノコのおやつなどが存在し、βグルカン補給として利用されています。
海藻類はヨウ素が多い場合があるので過剰摂取にならないよう成分を確認してみるとよいでしょう。