ペットフードの粗悪品とは?製造国や添加物、原材料で区別されるものではなく、どういった体制で製造されるかが重要

ペットフードの粗悪品とは

最近海外産、国内産のバトルでも起こっているのでしょうか。滅多にありませんが弊社にそうした質問がありました。

まず最初に言えることは粗悪品は国で区別されるものではないということです。これはペットフードに限らず、全ての製品において同じといえます。

例えば日本車と外車のどちらが優れているかはデザイン面、性能面、所有欲など比較すべき点は多くありますが、結果的には好き好きであり、その時々のモデル次第でもあり、それぞれ善し悪しがあるかと思います。

国産は安全であり、海外産は粗悪品であるという誤解を持っている方はまだいらっしゃるようですが、産地に限らず、どういった体制で製造されるかが大切です。

それでは粗悪品とはどんなペットフードを表すのでしょうか。以下のようなフードは粗悪品とは言えるのでしょうか?

  • 添加物を使用しているペットフード
  • 4Dミートを使用しているペットフード
  • 低品質の原材料を使用しているペットフード(品質・ホルモン剤・抗生物質・遺伝子組み換え)
  • 穀物が多く使われているキャットフード
  • 中国産の原材料を使用しているペットフード
  • 総合栄養食の基準を満たしていないのに総合栄養食と言っているペットフード(これはもはや違法です)
  • 衛生環境の悪い工場で作られているペットフード

それぞれについて考えてみたいと思います。

添加物を使用しているペットフードは粗悪品か

私は普段から添加物を使用しているペットフードに対する飼い主の偏見が非常に多いと感じていますのでまずは添加物を使用しているペットフードから考えてみたいと思います。

添加物にはおおむね使用制限もありますので、科学的に考えられた適切な基準値内でしか使用されることがありません。

その情報も人が食べる牛や豚などを育てる飼料のデータが元として使用されています。言ってしまえば世界中で人も含めた多くの生き物で検証されたといえるほど使用されている添加物が、安全係数をかけて使用されているわけです。

ペットフードも獣医学も進歩を辿り、犬猫の寿命は延びるばかりです。

添加物がその寿命に完全に影響していないかといえばそれは定かではありませんが、その理論ではたった30年前のペットフードでは犬猫は長生きできなかったということになりますが、15年、20年生きる犬猫はたくさんいました。

添加物の是非は飼い主が考慮すればよい点であり、添加物が適切に使用されたペットフードが粗悪品であるということとは繋がらないと思います。そうなれば人の食品も粗悪品だらけになってしまい、食べられるものが限りなく減ってしまうでしょう。

スギさん
スギさん

添加物を使用しているからといって粗悪品ということではありませんね。

4Dミートを使用しているペットフードは粗悪品か

次に4Dミートを使用しているペットフードは粗悪品かについてですが、4Dミートとは以下のようなDを表したものです。

  • Dead→死骸
  • Deseased→病気
  • Dying→瀕死
  • Disabled→障害

このような状態の動物の肉を4Dミートといい、4Dミートを使用したペットフードが存在します。

しかし現時点では限りなく存在していないと言えるように思います。というのも動物愛護の意識が進み、インターネットも成熟したことで、劣悪な環境でペットフードが作られていればすぐに摘発、暴露されてしまう世界になりました。

実際に私はいくつかのヨーロッパのペットフード工場を見学し、原材料自体も確認していますが劣悪だと言われるものを見かけることはありませんでした。それはやはりどこも人用の食品安全の基準を満たすために定期的に検査を受けている工場であったということもあるかと思いますが、やはり今現時点で劣悪な環境の工場や業者を探す方が難しいように思います。

4Dミートの使用は今までなかったのか

では実際になかったのかという点ですが、過去にはあったことがいくつかわかっています。それは「日本国内でも」です。

海外の例

2001年、カナダのケベック州の大手ペットフード会社のSanimal Inc.が公式に「死んだ犬や猫、羊、交通事故の動物をペットフードに使用しない」とアナウンスしました。つまりそれまでは使用していたということであり、その数はなんと毎週18,200kgの犬や猫を処理しています。

亡くなった動物を埋めたり焼却するよりも安く処理することができ、悪い公共政策のようなものだと言われていました。

実際にレンダリング業者が受け入れなくなったことにより、例えばイースタンタウンシップの動物保護機関の避難所では、亡くなった動物を年間レンダリング費用の2,000ドルの8倍の費用がかかる埋立地を使用しているということになりました。

実際のところ公共のイメージの問題で、消費者や動物愛護団体からの懸念に屈する形で受け入れを停止しています。

「できあがったペットフード自体は健康的で美味しいものですが、ペットを含む肉骨粉を見たくない人がいる」この一言は当時の状況を良く表しているように思います。

参考:Pet food company stops using cats, dogs as ingredients

日本国内の例

国内でも同じようなことがニュースとなりました。以下は2002年の話です。

徳島市などが業者への委託を中止 県は陳謝 /徳島[毎日新聞/徳島2月22日]
徳島市、鳴門市、佐那河内村が、路上などで死んだ犬猫の死がいの処理を一般廃棄物処理の認可のない徳島市内の肉骨粉加工業者に委託していた問題で、県は21日開かれた県議会同和・人権・環境対策特別委で、廃棄物処理を適正に行う責任者として陳謝し、同3市村が既にこの業者への委託を中止したことを報告した。

山田豊委員(共産)の質問に、上野秀樹・廃棄物対策課長と橋本保久企画監が答えた。上野課長は、「これまで相当期間、自治体が業者に委託しており、動物愛護法と廃棄物処理法のどちらで解釈するか問題だったが、(一般廃棄物で扱うべきとの)国の解釈が示された。これを契機に、市町村での適正な処理が行われるよう指導したい」と答弁。また、橋本企画監は3市村が認可を持つ業者の委託先を探していることも報告した。
【鈴木健太郎】

2002年がペットに対してどれだけ意識が向いていたか考えてみたことはあるでしょうか。

私自身東京に出てきて数年経った2000年頃に20万近いお金を出してパソコンを購入しました。1998~1999年の時はダイヤルアップであり、定額制ではなかったことを思い出します。

つまりパソコンが普及し始めたのがそのころであることを考えると、2002年の時点ではインターネットは成熟しておらず、こうした情報が拡散するような時代ではありませんでした。

ペットに関する意識の向上

レンダリング問題に関する話の多くは1990年代から2000年代までの話であり、2010年代からは私は聞いた覚えがありません。

それは法律の整備も背景にあると思います。ペット後進国の日本でもペットフード安全法は2008年に成立しています。2007年にアメリカでメラミン混入ペットフード事件が起こったためです。関係があるかはわかりませんが、積極的に司法が介入する流れになり始めて以来、すっかり不穏なレンダリングのニュースや噂を耳にしなくなりました。

もちろん私がペットフードを作るために交渉した各工場にも直接確認をしてきました。(こうした情報は聞かれなければ言わないということはあると思いますが、聞かれて嘘を答えるということはないと思います。)日本からではなかなか海外の小さな町工場と出会って掛け合うことは難しく、設備的にも法的にも整備された大型工場としか交渉ができていないこともあるかと思いますが、その分コンプライアンスに対する姿勢も厳しいです。

スギさん
スギさん

法律も年々厳しくなっていっています。今現在がどうかを確認していく必要があるように思いますね。

とはいえ、もし4Dミートが使われているペットフードがあればそれは粗悪品と言えるのではないかと考えます。

低品質の原材料を使用しているドッグフードは粗悪品か

低品質の原材料とはなにを表すかであるかと思います。

規格外野菜など

例えば破棄される予定だったサイズ外の野菜や、食べられるけど虫食いで見た目の悪い野菜などは低品質に当たるでしょうか。

スギさん
スギさん

人用に栽培されているわけですし低品質ではないと思いますね。

規格外野菜は毎日大量に廃棄され、廃棄にも大きなコストがかかっています。これらを有効活用するひとつとしてもペットフードは利用されています。これは食材を余さず使うという点においても大変有意義で、サスティナブルな取り組みであると思います。

抗生物質や肥育ホルモン剤などを使用した食材

それでは抗生物質を使ったり、肥育ホルモン剤を使用することは低品質に当たるでしょうか。それらは人が食べるものです。

スギさん
スギさん

人が食べるものとなれば低品質ではないと思いますが、気になる部分ではありますね。判断が難しいところです…

肥育ホルモン剤はEU内では使用が禁止されていますし、そうした点からある程度使われていない食材を選ぶこともできますが、基本的には人が食べる食材に使用されているものであり、特段ペットフード用の畜産物に使用されているというわけではありません。人が食べられる食材としてヒューマングレードとも言えると思います。

今や世界の最大20%もの肉をペットが消費していると推測されています。人がペットフードの原材料の品質を求め始めたため、人の食材とも被り始めたことによって人の食も圧迫されてきています。この先、人用に育てた抗生物質やホルモン剤を使用した牛などはペットフードでは使わない!ということになれば行き着く先はどのようになってくるでしょうか。

これは粗悪品ということではなく、そうした原材料を使う使わない、また飼い主が選べばよい話であるかと思います。

遺伝子組み換え原材料を使用

遺伝子組み換えの原材料を使用しているペットフードは果たして粗悪品なのでしょうか。

遺伝子組み換えの原材料をペットフードに使用している場合、その旨を表記する必要はありません。このため意識した原材料を使用しているメーカーでは「遺伝子組み換えは使用しておりません」などの注意書きを設けているところがほとんどです。

しかし遺伝子組み換え食材もそもそも作物が丈夫によりたくさん収穫できるように考えられたものであり、食糧難を救うためのひとつの手段でもあります。そしてそれは動物もですが人が活用する食材です。こちらも人が食べられる食材としてヒューマングレードとも言えると思います。

遺伝子組み換え食材を使用しているペットフードは果たして粗悪品なのでしょうか。

もし遺伝子組み換え食材を使用しているペットフードが嫌であれば選ばなければ良いだけです。

このように原材料は選択するということができ、上記のような原材料を使用しているから粗悪品であるということには繋がらないと思います。

穀物が多く使われているペットフード

特にキャットフードにおいては犬よりも動物性原材料が多い方がおすすめはできますから、穀物が多く使われているキャットフードは最近敬遠される傾向になってきました。

しかし穀物が使われていることが低品質であり、粗悪品であるということには繋がらないと思います。こうした議論をするときは穀物自体の品質がどうかという点を考慮すべきです。

例えば米は加水分解することでアレルギー食としても使うことができます。穀物を使用することで原価を下げ、販売価格も下げることができます。グレインフリー(穀物不使用)より穀物入りが好きな猫もいます。

適材適所でありそれを必要としている人もいますので、飼い主が選択をすれば良いというだけです。穀物が使われていることは粗悪品ということには繋がらないと思います。

中国産の原材料を使用しているペットフード

中国産の原材料は2007年のメラミン混入事件があったことで大きく信用を落としました。日本でもそれをきっかけとしてペットフード安全法が成立した程です。以来中国産原材料を不使用とするメーカーが増え、安心感を表す指標の一つとなってしまっています。

しかし小麦グルテンにメラミンとメラミンの類似化合物のシアヌル酸を混ぜ込んだために起こったことであり、加工品の信用は地に落ちましたが、野菜など自然食材そのものが疑われた訳ではありませんでした。しかし食材そのものもどのように育てられたかという点は大いに気になる部分ですので避けるメーカー、飼い主が多くなりました。

ただこれはどの製品にも言えることですが、中国の食材だから低品質であり、粗悪品であるということではありません。中国の食材の中に低品質であり、粗悪品があるということであればそれは否定できませんが、それは大小あれど全ての国で同じことが言えるように思います。

スギさん
スギさん

中国の野菜でも一生懸命真面目に作っている方は大勢いらっしゃるんですもんね・・・

総合栄養食の基準を満たしていないのに総合栄養食と言っているペットフードは粗悪品か(違法です)

これは粗悪品というか違法ですので問題外です。

食品はその状態からも大なり小なり値には誤差が生じます。自然由来の食品を使う以上、必ずしも栄養成分表ピッタリに作られているわけではありませんが、数値には必ず○○以上、○○以下とあり、その制限を超えないように設計するようにします。

その上で基準を満たしていないのに満たしたということは偽装表示の違法であり粗悪品と言えると思います。

衛生環境の悪い工場で作られているキャットフードは粗悪品か

ペットフードは食品として扱うべきであり、衛生環境の悪いところで作れば安全性が担保できず、粗悪品であると言えると思います。

しかし一番の問題は「消費者には製造環境が整備されているか粗悪であるかがわからない」という点であるかと思います。

これは各メーカーにどのような工場であるかを質問すれば大まかな情報は得られるのではないでしょうか。

低品質なペットフードとはどういうものなのか

低品質なペットフード。これは一体どういうものだったでしょうか。思い当たるポイントを確認してきましたが、「偽装表示をしている」「製造環境が悪い」という以外は飼い主自身が選択することができるものです。

そしてそれらは選択しない飼い主がいる反面、選択する飼い主もいるということが重要です。

買われない製品は存続することができません。問題の多い製品も存在することができません。

それぞれのメーカーのペットフードが必要な人に必要なだけ販売されているということはひとつの指標になります。ペットフードというものはどうしても食べる食べない、体質に合う合わないが分かれるものではありますが、長期間存続しているペットフードはそれだけ大多数の犬猫に問題が少ないと言えるかと思います。(それなりに販売数量がある場合の話ではありますが)

選択肢が豊富にあるということは幸せなこと

フードはそれそのものに優劣を付けるようなものではありません。多くのペットフードが生まれ、選択肢が豊富にあるということは幸せなことです。

迷った時はメーカーの姿勢や考え方を知るだけでも選択の材料になるはずです。

その中から飼い主が取捨選択をし、愛犬愛猫に与えてあげればいいというだけのことであると思います。

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スギさん

新婚さんで妊娠中。子どもができたことをきっかけに家族の健康について考え、10歳を超えた愛犬愛猫の健康も考えるようになった。現在犬猫の食事について勉強中!

エノおじさん

10匹以上の猫を飼っているお酒が好きな元気なおじさん。大量のキャットフードを購入することもあり、安価でありながら安全なキャットフードを探している。
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