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マイクロプラスチックとは
海洋汚染でよく話題にのぼるマイクロプラスチック。マイクロプラスチックとは、直径5ミリメートル以下の非常に小さなプラスチック粒子のことです。私は5mmという大きなサイズが”マイクロ”に含まれるということに驚きました。
マイクロプラスチックは肉眼では見えにくいものも多く、水、食品だけでなく、大気中からも検出され、これらを摂取することで体に蓄積していきます。
身近なものでは洗顔料や歯磨き粉のスクラブもマイクロプラスチックを使用していたり、海に漂うマイクロプラスチックを魚や貝類が食べてしまうことで、食物連鎖を通じて人も体内に取り込んでしまいます。
これらが犬猫に与える影響について考えてみたいと思います。
マイクロプラスチックが犬猫に与える影響
マウスやラットを使った実験では腎臓障害や精子数の減少、農園症や行動異常がみられたようです。
消化器への刺激・炎症
マイクロプラスチックは大きなもので5mmほどあります。これらを摂取することで腸の粘膜を傷つけたり、炎症を引き起こす可能性があります。
消化・吸収の阻害
腸に蓄積していくことで栄養素の吸収を妨げ、慢性的な栄養不良や体重減少の可能性があります。
有害物質を取り込む
マイクロプラスチックは化学物質(例:PCB、フタル酸エステルなど)を吸着しやすい特性があります。
それをペットが体内に取り込むと、ホルモンかく乱(内分泌かく乱)作用や肝臓・腎臓への負担が生じる可能性が指摘されています。
免疫系への影響
マイクロプラスチックは異物として免疫系に反応を起こさせる可能性があります。
慢性的に摂取した場合、慢性炎症や免疫異常につながるリスクも考えられます(※現時点では動物実験段階での知見)。
摂取経路について
食材、飲料水
一番は食材です。人用の食材も同様ですので大きなプラスチック片であればともかく、目で確認できないほどのマイクロプラスチックは防ぎようがありません。
食材には微量混入している可能性があり、食べることによって蓄積します。
ペットボトルから検出された報告もあります。
環境、大気
息を吸うだけでも摂取しているといわれるほどで、床に落ちているマイクロプラスチックが歩いたり、掃除機の廃棄などで巻き上げられ、吸い込んでしまいます。
ホコリや大気中からなど環境要因からの曝露が大きい
米国ニューヨーク州オールバニでの研究(2019年)
8種類のペットフード(犬用・猫用)と78のペットの糞便サンプルを分析し、以下の結果が得られています。
- ペットフード中のPET(ポリエチレンテレフタレート)濃度:
猫用:<1,500~12,000 ng/g(中央値:<1,500 ng/g)
犬用:<1,500~4,600 ng/g(中央値:<1,500 ng/g) - ペットの糞便中のPET濃度:
猫:<2,300~340,000 ng/g(中央値:61,000 ng/g)
犬:7,700~190,000 ng/g(中央値:30,000 ng/g)
つまり、食事から摂取するマイクロプラスチックよりも糞便中のマイクロプラスチック濃度の方が高いので、食事以外の環境要因からの曝露が大きい可能性が示唆されています。
それほどホコリや空気中からの摂取量が多いということです。
ポルトガル・ポルトでの研究(2024年)
とても新しい研究です。この時の研究では猫と犬の内部組織(腸、肝臓、腎臓など)から以下のようなマイクロプラスチックが検出されました。
- ポリエチレン(PE)
- ポリプロピレン(PP)
- ポリカーボネート(PC)
- ポリスチレン(PS)
これらのポリマーは、ペットフードや家庭内のプラスチック製品からの曝露源と考えられています。
参考:Microplastics in Animals: The Silent Invasion
ペット製品に関する報告(2023年)
EarthDay.orgの報告によると、以下のようなペット製品からのマイクロプラスチック曝露が指摘されています。
- プラスチック製のペット用おもちゃや食器
- 缶詰ペットフードの内側コーティング(BPAを含む)
- ペット用衣類やベッドなどの繊維製品
参考:The Hidden Dangers in Pet Products: What Every Pet Owner Needs to Know
飼い主ができる対策
ペットフードの容器
日本では小分け包装が好まれます。しかしマイクロプラスチックという観点から考慮すると、犬猫の健康を考えるのであれば過度なプラスチック包装は避けた方が賢明です。
食事の皿
プラスチック製を使わず、ステンレスや陶器、ガラス製がおすすめです。
プラスチック製は傷がついた場合、傷に菌が溜まりやすいこともあります。
掃除をこまめに行う
食事場所や寝転ぶ場所、いつも通る場所など掃除はこまめに行い、吸い込む量を少しでも減らすようにしましょう。
またカーペットなどもマイクロプラスチックが含まれる可能性があります。
まとめ
- マイクロプラスチックの曝露は避けられない
- 掃除をこまめにしたり、できるだけプラスチック製品を遠ざけることが有効