目次
ドライフードに含まれるミネラルについて
ミネラルは灰分とも呼ばれています。これは焼却した後の灰に多く含まれているからです。
ミネラルは無機質というもので、土や石、岩などに含まれています。
元素118種類のうち炭素、窒素、酸素、水素を除いた114種類が確認されていて、鉄やマンガン、カルシウムなどはそのうちのひとつです。
カルシウムやカリウム、鉄など人間も必要とするミネラル類は猫も犬にも必要です。必須ミネラルと非必須ミネラルがあり、更に多量ミネラルと微量ミネラルに分けられます。
多量ミネラル | 元素記号 | 微量ミネラル | 元素記号 |
---|---|---|---|
カルシウム | Ca | 鉄 | Fe |
リン | P | 亜鉛 | Zn |
カリウム | K | 銅 | Cu |
ナトリウム | Na | モリブデン | Mo |
塩素 | Cl | セレン | Se |
イオウ | S | ヨウ素 | I |
マグネシウム | Mg | マンガン | Mn |
コバルト | Co | ||
クロム | Cr |
※この他にヒ素、鉛、ニッケル、ケイ素、バナジウム、フッ素、スズ、リチウム
ミネラルの作用
ミネラルは以下のような機能を果たします。
- 骨や歯などの構成成分となる
- 体液に存在することで浸透圧の調整、筋肉収縮、情報伝達の調節に作用します
- ホルモンなど生理機能に関係します
例えば汗をかきすぎて明日が攣ってしまったということがあるかと思います。これはカリウム不足になってしまったことも要因のひとつです。
このようにミネラルは体全体に作用するものなので地味なように感じますが、決して軽く考えるものではありません。
ドライフードへのミネラル添加
多くのミネラルが添加物としてキャットフード・ドッグフードに添加されています。
代表的なものとして、鉄、銅、亜鉛、マンガン、ヨウ素、セレンなどがあります。
ビタミンの時と同じように、ドライフード製造時に必要摂取量の範囲内で添加しているんですね。
ミネラルの欠乏症と過剰症
ミネラル | 欠乏症 | 過剰症 |
---|---|---|
カルシウム | くる病、骨軟症 | 他のミネラルの吸収障害 |
リン | 脱灰減少 | |
カリウム | 筋力低下、成長不良、心臓・腎臓障害、繁殖低下 | ナトリウム欠乏症 |
食塩 | 成長低下 | |
マグネシウム | 筋力低下、興奮、痙攣 | 下部尿管疾患、成長低下 |
鉄 | 貧血、虚弱、疲労 | 食欲不振 |
銅 | 食欲減退、成長低下、下痢、産毛の低下と退色、貧血、骨疾患、免疫力低下 | 貧血、黄緑色嘔吐、めまい、胃痛、肝炎、成長低下 |
マンガン | 成長不良、繁殖障害 | 繁殖障害、不完全白皮症 |
亜鉛 | 成長不良、食欲不振、精巣萎縮、削痩、皮膚病変、皮膚・被毛の異常、二次感染、免疫力低下 | ※(悪心、下痢、嘔吐、腹痛、吸収すれば発熱) |
ヨウ素 | 皮膚・被毛の異常、活動低下、無気力、嗜眠 | 食欲不振、発熱 |
セレン | 繁殖障害、浮腫 | 全身脱毛、蹄脱落、跛行、食欲減退、成長低下 |
コバルト | ※(食欲低下、異嗜) | 成長低下 |
鉛 | 腹痛、嘔吐、下痢、慢性中毒症成長低下 | |
ヒ素 | 嘔吐、胃痛、出血、下痢、湿疹性皮膚疾患 | |
カドミウム | 悪心、嘔吐、痙攣、下痢、腹痛、慢性中毒性腎臓障害、骨軟化症 |
出典:愛玩動物飼養管理士テキスト
このように多くの欠乏症、過剰症があります。どのミネラルも多すぎても少なすぎてもダメなことがわかります。
また、この表では触れていませんが、それぞれのミネラルのバランスも非常に大切です。例えばカルシウム:リン:マグネシウムのバランスについては尿路結石の原因としてよく話されます。
ミネラルはそのほとんどが相互作用がありますので、欠けてもいいものはありません。
ただし鉛、ヒ素、カドミウムには注意しなくてはいけません。これらはBHTやBHA、BHC、メラミンなどが定められているように、鉛、ヒ素、カドミウムは汚染物質としてペットフードに含まれていい上限量が定められています。
食事中に欠乏しやすいミネラル
欠乏しやすいミネラルにはカルシウム、鉄、ヨウ素、亜鉛があります。マグネシウム、クロム、銅、マンガンは食事ができず輸液に頼る場合に欠乏する場合があります。
膵液の分泌不足や他食物の成分との兼ね合い
不溶性塩類は胃液の塩酸によって水に溶けるようになり、吸収できる形になりますが、他の食物の成分との兼ね合いや、膵液の分泌が悪いことで吸収が阻害されます。
ミネラル相互作用による阻害
ミネラル相互作用によって吸収阻害もあります。
フィチン酸、フェノール酸による阻害
植物に含まれるフィチン酸、フェノール酸はミネラル吸収を強く阻害します。
ペプチドによる阻害(促進も)
アミノ酸であるペプチドでも阻害、吸収促進が起こります。
協働するミネラル
なにかと合わさることでその効果が大きくなるミネラルがあります。
カルシウムとビタミンD
吸収率があまりよくないカルシウムを助けるのがビタミンDです。更に血液中のカルシウムを骨に吸着する時にビタミンDが必要になります。
カルシウムを効率よく吸収し、無駄なく使うためにビタミンDが必要です。
銅と鉄
鉄は血になるとよく言われますが、これは鉄が赤血球を作るのに必要だからです。しかし鉄だけではどうにもなりません。銅は鉄を運ぶ役割を担っているため、赤血球を作る場所に銅が鉄を運び、初めて赤血球を合成することができます。
セレンとビタミンE
セレンはビタミンEと協働することで抗酸化作用をアップさせます。
多量必須ミネラルと微量必須ミネラル
現在では多量必須ミネラルはカルシウム、リン、カリウム、ナトリウム、塩素、硫黄、マグネシウムの7種類。
微量必須ミネラルは、鉄、亜鉛、銅、モリブデン、セレン、ヨウ素、マンガン、コバルト、クロムの9種類と言われています。
その他に比較的新しく認められたものにヒ素、ニッケル、ケイ素、バナジウム、フッ素、スズ、リチウムの7種類があります。
参考:動物栄養学
ミネラルの相互作用、拮抗作用
ミネラルはそれぞれ相互作用がありますので、ひとつを摂取し過ぎてるとひとつの吸収を阻害することになるといった関係があります。
またひとつを摂取することでもうひとつも吸収しやすくなるという関係もあり、ひとつが足りないからたくさん摂取すればいいというものではありません。
こうした点からも計算して摂取する必要があるものがミネラルです。
キャットフード・ドッグフードの場合、カルシウム:リン:マグネシウムの値を気にすることがありますが、これは犬猫に起こりがちな尿路結石の原因と考えられているからです。
その他のミネラルはあまり話題に上がることの少ないミネラルですが、それぞれが相互に関係しあい、支えあっています。
イオウやコバルト、モリブデンなど余り聞いたことがないものもありますね。
例えばですが、イオウはサイエンスダイエットPRO、コバルトは銀のスプーン、モリブデンが添加されているキャットフード・ドッグフードが思いつかないですが、豆類や海苔なんかに含まれています。豆類はキャットフード・ドッグフードによく使われますし、うちには海苔がとても大好きな猫がいました。
それぞれあまり見かけないかもしれませんが、普段目にしない栄養素でも相互作用、拮抗作用としてそれぞれがしっかり働いています。
相互作用の関係の例
例えば”小動物の臨床栄養学、マークモーリス研究所 2001”のミネラルの相互作用によると、カルシウムはコバルト、リン、硫黄、亜鉛、マグネシウム、ヨウ素、マンガン、銅と相互作用があります。
リンは亜鉛、マグネシウム、モリブデン、ナトリウム、マンガン、銅、ホウ素、カルシウム、セレンと相互作用があります。
マグネシウムはリン、カリウム、カルシウム、ホウ素、マンガンと相互作用があります。
この3つだけでもほぼ全てのミネラルと相互作用を持ち、効果をアップしたり、吸収を抑制したりすることで生命維持に役立っています。
尿結石症への影響
ストルバイト、シュウ酸カルシウム、尿酸アンモニウムなどの尿結石症があります。
細菌感染が主な原因
細菌感染が主な理由のひとつですが、ミネラルが豊富なドッグフードなども原因のひとつになり得ます。また尿pHも大事であり、これに影響するものは食べ物です。
ペットフードのミネラル含有量とバランス
つまりペットフード内のミネラルが多い場合も尿石症へ影響があるということになります。
ペットフード内のミネラルではカルシウムとリン、マグネシウムのバランスが影響すると考えられており、1.2:1.0:0.08位(多少上下あり)が目安となるでしょう。
犬猫それぞれの体質の個体差
しかしこれは個体の体質も影響してきます。ミネラルが多いと思っていたペットフードを食べ続けていても全く尿石症にならない犬猫もいるからです。
水分摂取量と尿回数
水分摂取不足、尿回数の不足も同様に影響します。尿回数が減ると尿が濃くなってしまうことで尿石症が発症しやすくなります。
AAFCO 2016 のミネラル基準量
必須ミネラルのうち、12のミネラルに最小値が設定されています。
ヒ素、鉛、ニッケル、ケイ素、バナジウム、フッ素、スズ、リチウムは比較的新しく必須ミネラルと認められたものであるため、今後基準にも入ってくる可能性があります。
またそのミネラルが不足した場合に欠乏症が生じ、そのミネラルを補給したら欠乏症が解消した場合に必須ミネラルであるという証拠とされるため、今後必須ミネラルと認められる場合があり、将来的には増加する可能性があります。
ドッグフード
養分 | 乾物ベース | 最小値 成長・繁殖期(犬) | 最小値 維持期(犬) | |
---|---|---|---|---|
ミネラル | ||||
カルシウム | % | 1.2 | 0.5 | 2.8(1.8) |
リン | % | 1.0 | 0.4 | |
カルシウム:リン比 | 1:1 | 1:1 | 2:1 | |
カリウム | % | 0.6 | 0.6 | |
ナトリウム | % | 0.3 | 0.08 | |
塩素 | % | 0.45 | 0.12 | |
マグネシウム | % | 0.06 | 0.06 | |
鉄 | mg/kg | 88 | 40 | |
銅 | mg/kg | 12.4 | 7.3 | |
マンガン | mg/kg | 7.2 | 5.0 | |
亜鉛 | mg/kg | 100 | 80 | |
ヨウ素 | mg/kg | 1.0 | 1.0 | 11 |
セレン | mg/kg | 0.35 | 0.35 | 2 |
キャットフード
成分(保証分析値) | たんぱく質 | 35%以上 |
脂質 | 20%以上 | |
繊維 | 3%以下 | |
水分 | 10%以下 | |
カルシウム | 1.6%以上 | |
リン | 1.3% | |
マグネシウム | 0.1% | |
オメガ6脂肪酸 | 2.3%以上 | |
オメガ3脂肪酸 | 2%以上 | |
ビタミン&ミネラル | ビタミンA | 56KIU/kg |
ビタミンD3 | 2550IU/kg | |
ビタミンE | 390IU/kg | |
ビタミンB1(チアミン) | 78mg/kg | |
ビタミンB2(リボフラビン) | 52mg/kg | |
ビタミンB3(ナイアシン) | 175mg/kg | |
ビタミンB5(パントテン酸) | 47mg/kg | |
ビタミンB6(ピリドキシン) | 42mg/kg | |
ビタミンB12 | 0.5mg/kg | |
ビオチン | 0.8mg/kg | |
葉酸 | 4.3mg/kg | |
コリン | 3,180mg/kg | |
ビタミンK | 0.2mg/kg | |
ミネラル | ソディウム | 0.69% |
塩化物 | 1.00% | |
カリウム | 0.90% | |
鉄 | 150mg/kg | |
亜鉛 | 240mg/kg | |
銅 | 25mg/kg | |
マンガン | 26mg/kg | |
ヨウ素 | 3.2mg/kg | |
セレン | 1.7mg/kg | |
アミノ酸 | リジン | 2.8% |
トレオニン | 1.5% | |
メチオニン | 0.9% | |
イソロイシン | 1.5% | |
ロイシン | 2.7% | |
バリン | 1.8% | |
アルギニン | 2.4% | |
フェニルアラニン | 1.5% | |
ヒスチジン | 0.8% | |
トリプトファン | 0.35% | |
システイン | 0.3% | |
チロシン | 1.0% | |
タウリン | 0.2% | |
配合植物 | チコリー根 | 500mg/kg |
タンポポ根 | 250mg/kg | |
カモミール | 150 mg/kg | |
ペパーミントリーフ | 150mg/kg | |
ジンジャールート | 150mg/kg | |
キャラウェイシード | 150mg/kg | |
ターメリック | 150mg/kg | |
ローズヒップ | 150mg/kg | |
エネルギー | 406kcal/100g |
まとめ
- ミネラルは五大栄養素のひとつ
- 多くの相互作用、拮抗作用がある
- 鉛、カドミウム、ヒ素に注意
五大栄養素のひとつだけあって、欠乏症、過剰症の多さに驚きました。キャットフード・ドッグフードを与えていて欠乏症、過剰症になることはありませんが、それぞれがどんな働きをしているか知っておくのもいいかもしれませんね!