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パッケージについて考えたことありますか?
ペットフードを買う時、与える時になんとなく手にしているパッケージ。そのパッケージの材質や作りはペットフードの鮮度を保つために大きく影響します。しかしデザインは印象に残っていても材質までは気にする人は少ないと思います。
日本のパッケージはどれも綺麗で気になる点がなかったので、あえて気にしたことはありませんでした。
少なからず酸化にも影響してきますし、空気穴から輸送方法を予想することもできます。ここでは材質や作りについてひとつずつ解説していきたいと思います。
パッケージの素材について
ドライフードのパッケージについて話します。主に使われる素材はアルミか紙の二種類です。
ただしポリエステルなどを組み合わせてそれぞれの材質の弱点をカバーしています。
PET
PETとはポリエステルのことです。ポリエステルフィルムは強度が強く、耐熱性も耐寒性もあり、匂いを封じ込めて保つ性能も高い素材です。対して保湿性、衝撃には強くありません。
耐熱性、耐寒性が高いので、冷たくなりやすい冷凍食品や、熱湯で温める必要のあるボイル製品、そして匂いを封じ込めるためコーヒーなどのパッケージにも使われています。
PETmet
PETmetとは上記のPETにアルミ蒸着をしたものです。アルミ蒸着とは、真空容器の中でアルミを加熱して蒸発させて、対象物にくっつけて薄い膜を貼ることです。
つまりこの場合はPETに蒸発したアルミをくっつけて薄い膜をはらせたものです。
ポテトチップスの袋の内側がアルミ蒸着です。これは水蒸気透過率は低く抑えることができますが、アルミ箔(金属)ではないので超拡大すると_〇_〇_といった具合に、素材に蒸発してくっついたアルミとアルミの間が開いていて、酸素は通過してしまうため、酸素透過率はそれほど低く抑えることはできません。
※_は素材、〇は蒸発してくっついたアルミ。〇と〇の間は水蒸気は通らないが酸素は通ることができる。
PE
ポリエチレンです。ポリプロピレンよりも柔らかく、最もよく使われるもののうちのひとつです。
加工もしやすく、吸水性も低く(防水性が高い)、フィルムやシート的に強度を保つ役割もあります。
ラップなどを想像していただけるといいかと思います。
LDPE
LDPEとは低密度ポリエチレンのことです。防湿性が高く、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性などPETが苦手な部分もカバーするため、PETと貼り合わせて使われることが多いです。
アルミ箔
パッケージとしてはポリエステルフィルムと貼り合わせて使用されることがほとんどです。
アルミ箔は金属なので酸素透過率、水蒸気透過率はゼロで、外界からは最も強力なバリアとなりますが、その固さから裂けたり破れやすいため、お茶の葉っぱなど軽いものでは使われますが、ペットフードのような重いものではほとんど使われません。
重さなどに対して耐久性が低いためです。
紙
例えばクラフト紙もよく使われますが、表面だけで、内側にはPETを貼り付けてあります。
パッケージの素材に関しては各社大きくは変わらないと思います。私はパッケージ製造業ではありませんので、時々知らない素材が使われているものを見かけますが、希です。以前のシンプリーはそんなうちのひとつで紙のような素材でした。
こうしてドライフードが苦手とする耐熱性、耐寒性、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性、防湿性などを考えて素材が選ばれています。
EVOH
エチレンビニルアルコール共重合体樹脂です。
非常に優秀で重要な素材で、従来のプラスチックでは足りなかったガスバリア性を持ち、酸素透過率を低く抑えることができます。
ペットフードの袋に使えば酸素透過率をグッと抑えることができ、酸化防止に大きな力を発揮します。一方水蒸気透過率はそれほど低く抑えられないので、水蒸気透過率が低いPETmetなどと合わせるとより密閉性の高い素材にすることができます。
空気穴(ピンホール)について
海外ではパッケージに針で開けたような穴が空いている場合があります。これはピンホールと言われる空気穴です。
ペットフードは荷姿次第では積み重なって運ばれることもあります。こうした際に空気穴から内部の空気を排出することで荷崩れ、破裂を防いでいます。
因みに飛行機などの気圧の変化でペットフードが爆発したという話は聞きませんし、そこまで余裕のないパッキングはされないはずなので、空気穴のメリットは圧力による荷姿の崩れを防ぐことが一番の理由だと考えられます。
空気穴による酸化への影響
少なくとも穴が空いているわけですから、酸化の影響がないとはいえません。密封しているパッケージの方が確実です。
しかし安全面に問題があるというわけではありません。パッケージを押しつぶして空気を出した状態にした後は勝手に膨らんでくることはありません。これは空気が中に入っていない証拠でもあります。もちろん手で広げれば中に空気は入ります。
輸送中や保管中に人の手によって広げられることはありませんので空気が抜けた後は酸化の心配はほとんどないと考えていいと思います。
ヒルズの研究によれば高温多湿の環境に一定期間保管した後に分析しても問題がないことも確認しているそうです。
空気穴がある場合の輸送方法
空気穴があるということは、パレットの上にフードを積み重ねて、業務用ラップで巻いた状態の荷姿で輸送していることが予想できます。もちろん輸送方法は各社で違いますが、ラップで巻かれた状態での海上輸送は一般的な輸送方法です。
そのワンランク上になると例えば段ボール1箱に6袋といった具合で箱に入れて輸送します。
段ボールに入っている場合は極度な圧力がかかることがありませんので、空気穴を開ける必要もありません。袋にパンパンにしない限り気圧で爆発することもありませんので、密閉したパッケージを採用することができます。
しかしその分段ボール代もかかりますし、荷姿が大きくなるため、積荷量も増えますし、段ボールのまま入庫すれば倉庫の面積も必要になり、非常にコストがかかります。
結露について
結露は空気の温度が下がると、空気が保持できる水分量が減ることで水に戻ってしまって起きる現象です。窓の外と中で温度差が激しい時、窓の内側が冷やされて表面結露を起こします。
つまり空気の量が多ければ水分も豊富に含んでいることになるので、密閉されたものの方が結露する量が少ないといえます。
ただドライフードが結露して中がびしょびしょだったということは私は耳にしていませんので、いずれにしても問題はないのではないかと思います。
空気穴があって問題がないことがわかっても、やっぱり気にしてしまうのは日本人だからでしょうか。製品に直接穴が空いているなんて日本では考えられない方法ですね。
最近は少しコストを出せば逆止弁の付いたプラスチック製のしっかりした空気穴を取り付けることもできます。海外では10kg以上の大型のドライフードではよく採用されています。
購入前にピンホールの有無の確認を
ドライフードのパッケージはとても頑丈な素材でできているので、引っ張ったりしても簡単に破けるような物ではありません。さらに空気穴程度の穴から穴を広げることも容易ではありません。
しかし万が一何かの拍子に穴が広がる可能性はないとはいえませんので、必ず確認しておくようにしましょう。
パッケージに穴が空いているかの確認方法
説明してしまうと当たり前のことではあるのですが、まずパッケージを潰してみてください。空気が抜けて匂いがすれば穴が空いています。
日本人で店頭でパッケージを押してみるということはかなり少数派だと思います。このため、この方法に気付かずに家に帰って商品を見たら穴が空いていた、という相談を受けることがありました。
空いていないパッケージは、潰してみても空気の移動があっても匂いが漏れてくることはありません。
簡単ですので是非調べてみてください。
ジッパーについて
ジップ部分もいくつか形態がありますが、現在使われているもので主流なものはみっつです。
シングルジッパー
一般的なペットフードのパッケージに使われているジッパーが一本だけついたタイプ。世界中で使用され、湿気の多い日本でも密閉することができるのでスタンダードとして使用されています。※ジッパー部分は密閉されますが、袋の素材自体の酸素透過率が高ければ酸素は通過します。
ダブルジッパー
ジッパーが上下にふたつついたタイプ。シングルジッパーに比べて密閉度は高くなります。少しでも空気に触れないことで、より鮮度を保てる構造です。難点は両方閉めるのは意外と手間なこと。両方同じように綺麗に閉じなければ片方が寄ってしまってしっかり閉まらない場合もあります。
マジックテープ型
最近流行っていて、ジッパーの場合は端からしっかり閉めていかないと最後が閉まらなくなってしまいますが、マジックテープは適当でもきちんと閉めることができ、壊れにくく、冷凍でも使うことができる非常に楽なシステムです。ただしマジックテープ型は密閉ではありません。
上記で解説した空気穴と同じ考えで、穴が空いていても空気は出ていくけど入ってはこないという考えと同じような考え方です。
まとめ
- パッケージの素材はお互いに弱点を補いあった素材を使っている
- 空気穴があるパッケージがある
- 空気穴は必ずしも酸化に影響があるわけではない
- 空気穴があれば輸送方法が予想できる
- 逆止弁の付いた空気穴がある
- パッケージを軽く押して空気が抜けて匂いがしたら空気穴が開いている
探してみると大手のペットフードから海外輸入品までいくつかで空気穴があいていることを確認できました。もし気にする方は調べてみるようにしてください。