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愛犬愛猫の定期健診のススメ
犬猫の健康診断は1年に1回以上は受けることが推奨されています。中高齢期以降は半年に1回程度が理想的です。
犬の場合は犬種毎の差が大きいですのでそれ以上の健診を必要とする場合もあります。
猫の場合は不調があると隠したがる生き物ですので、酷くなるまで進行するか検査しないとわからないことがあります。
動物病院で定期的に健康な状態の基礎データを記録しておくことで、病気の早期発見・早期治療につながり、愛犬・愛猫の健康寿命を延ばす助けとなります。
中高齢期以降は免疫力が低下しやすく、慢性疾患やケガのリスクも高まるため、検査項目数の多いプランがおすすめです。特にシニアではいざという時には検査も難しい状態であることもありますので、健康な時にも検査を行っておいた方がよいと思います。
幼齢~維持期におすすめ | シニアにおすすめ | とことん調べる | |
---|---|---|---|
身体検査 | ○ | ○ | ○ |
血液検査 | ○ | ○ | ○ |
血液化学検査 | ○ | ○ | ○ |
尿検査 | ○ | ○ | ○ |
糞便検査 | ○ | ○ | ○ |
レントゲン検査 | ○ | ○ | ○ |
超音波検査 | ○ | ○ | |
血圧測定 | ○ | ○ | |
甲状腺ホルモン検査 | ○ | ○ | |
歯科検診 | ○ | ○ | |
眼科検診 | ○ | ||
アレルギー検査 | ○ | ||
ウィルス検査 | ○ |
ペットドックと呼ぶこともある
動物病院毎の呼び方の問題ですが、健康診断のことをペットドック、ドッグドック、キャットドックという場合があります。
人間ドックというと人用のフルコースの健康診断をイメージするかと思いますが、ドッグドック、キャットドックの場合は特にフルコースと決まっているわけではなく、健康診断の言いかえとしての使われていることが多いように思います。
定期健診の費用
項目、年齢、犬種・猫種などで健診費用は変わってきます。
身体検査であれば2~3,000円程度ですが、血液検査や尿検査・検便を追加すると5~8,000円程度の費用が必要になるかと思います。血液検査は全身の情報を得ることができますので、異常に気付けることがありおすすめです。
その他必要に応じてレントゲン、超音波(エコー)、ペット用CT/MRI、心電図、ホルモン検査、アレルギー検査、フィラリア検査、猫エイズ、白血病など追加することが可能です。
一通り行うと2~30,000円ほどが目安になるかと思います。
特にシニアになってきたら項目を増やして健診を行うことで以前との違いを把握することができるのでおすすめです。
私の個人的な経験からは超音波検査(エコー)がおすすめ。レントゲンだけの場合も多いですが腫瘍などはレントゲンでわからない場合もあるので超音波検査(エコー)で見逃さないようにしたいものです。早期発見に繋がる可能性もあります。
検査項目
基本的な健診
問診
毎日愛犬愛猫を観察している飼い主に話を聞きます。普段気になる仕草や食欲など健康状態について確認し、診察ポイントを確認します。
定期健診の最初もしくは事前に行います。
触診・視診
定期健診の最初に行われます。全身の状態を見て触って確認します。見た目だけではなく、リンパに腫れがないか、骨格に異常はないか、しこりはないかなどしっかりと触って確認します。
聴診
心雑音、心拍数、呼吸音、消化管の音などを確認します。
身体測定
体長、体重などを確認します。
血液検査
血液を採取して検査を行います。肝臓や腎臓、貧血、血糖値など全身の健康状態を把握することができます。このため定期健診や健康診断以外でもなにか不調を感じたら血液検査がおすすめです。
血液検査をした場合、検査結果をもらうことができると思います。
血液検査の結果は症状や犬か猫かによって読み取り方が違うものもありますので一覧として書くことはなかなか難しいのですが、病院で説明を受けた際にあとから見直すため時などに参考にはなるかと思いますので紹介します。
検査項目 | 低値(L) | 高値(H) | |
---|---|---|---|
栄養状態 | TP 総蛋白 | 栄養不良、吸収不良、肝・腎疾患、出血 | 感染症、脱水、腫瘍 |
ALB アルブミン | 栄養不良、出血、肝・腎・腸疾患 | 脱水 | |
免疫 | GLOB グロブリン | ||
A/G比 アルブミン/グロブリン | 慢性感染症、慢性炎症、リンパ腫 | ||
腎臓系 | BUN 尿素窒素 | 肝疾患、たんぱく欠乏 | 腎機能障害、脱水、消化管出血 |
CREA クレアチニン | 筋肉量の低下 | 腎機能障害 | |
肝臓・胆道系 | T-Bil 総ビリルビン | 重度の貧血 | 溶血、肝障害、赤血球の破壊、肝・胆道系疾患、排泄経路の閉塞 |
ALT(GPT) アラニンアミノトランスフェラーゼ(グルタミン酸ピルピン酸トランスアミラーゼ) | 肝細胞の障害 | ||
ALP アルカリフォスファターゼ | 肝・胆道系疾患、骨疾患、腫瘍、若齢 | ||
GGT(γ-GTP・ガンマグルタミルトランスペプチターゼ) | 胆道系疾患 | ||
脾臓 | AMY アミラーゼ | ||
LIP リパーゼ | |||
脂質異常 | T-CHO 総コレステロール | 肝不全、甲状腺機能亢進症 | 肝・腎臓疾患、糖尿病 |
TG 中性脂肪(トリグリセライド) | 遺伝、基礎疾患が隠れている恐れ | ||
骨・筋 | CA カルシウム | ||
PHOS 無機リン | |||
体液中イオン | NA ナトリウム | ||
K カリウム | |||
CL クロール | |||
糖尿病 | GLU グルコース(血糖値) | 低血糖 | 糖尿病 |
炎症 | CRP C反応性蛋白 | ||
AST(GOT) アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(グルタミン酸オキザロ酢酸トランスアミラーゼ) | 肝障害、肝細胞の壊死、骨格筋障害、筋肉の壊死、溶血性疾患 | ||
LDH | リンパ種、白血病、溶血、肝疾患、筋疾患 | ||
CPK | 骨格筋・心筋・脳の障害 |
尿検査・便検査
尿路結石、尿路疾患を始め、糖尿病、腎臓病などについて確認できます。特に猫の場合は水を飲む量が少ない傾向にあり、全ての猫が尿路結石になるのではないかというほど(言い過ぎ?)発症率が高いですので、尿検査は多くの方が経験しているかもしれませんね。
便検査
寄生虫の有無を確認します。血便、腸内細菌についても確認します。外猫や保護犬、保護猫では必ず行います。
心電図
心拍数、不整脈、心筋症の徴候がないかといった確認ができます。血液検査、超音波検査と一緒に行うことで心臓の状態を把握できます。
血圧測定
血圧を確認します。心臓から出た血が血管の壁を押している力がわかります。
高血圧の場合血管壁を押している力が強く、脳卒中や心臓病などのリスクが高まります。
レントゲン
レントゲンで骨や歯の状態、肺、腹部、胸部の状態、心臓など臓器のサイズなどの確認、腫瘍の発見、妊娠確認など確認出来る内容は多岐に渡ります。身体全体を撮ることもでき、時間もかからないので犬猫の負担も小さくて済みます。
健康か病気かを確認して分けるスクリーニング検査としても使用されます。
超音波(エコー)
超音波検査(エコー)は犬猫に針を刺すなどの恐怖や痛みを与えずに臓器の状態を確認することができます。腫瘍の発見、確認にも役立ちます。臓器の大きさや形、壁の厚さ、弁の動き、血流などもわかります。動きが分かることもポイントです。
しかし体にゼリーを塗ってプローブという機器を体に当てて確認するため、全身というわけにはいかず、腹部や胸部で効果を発揮します。
眼科検査
威嚇反応、対光反射、眼瞼反射、眩目反射、涙液量検査などを行います。犬猫では目やに、涙やけ、白内障などを調べることも多いです。
歯科検診
口臭や歯など口内環境のチェックを行います。犬猫ともに虫歯にはなりにくいのですが、歯周病になりますので歯磨きが推奨されています。
ホルモン検査
犬は副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)、副腎皮質機能低下症(アジソン病)、甲状腺機能低下症、猫は甲状腺機能亢進症などがあります。
アレルギー検査
IgE検査とリンパ球反応検査でアレルゲンの特定を行います。食事アレルギーが多いように思いますが、意外と多いのがハウスダストです。
いずれにしてもアレルゲンを簡単に特定できるというわけにはいかず、多数の検査を複数回行う場合が多く、費用が高額になりがちです。
伝染病検査
共通
フィラリア検査、トキソプラズマ検査、歯周病リスク検査、SFTSV遺伝子検査があります。
伝染病検査(猫)
猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ・FIV)、猫白血病ウイルス感染症(FeLV)、猫コロナウイルス検査(FCoV)、猫カリシウイルス遺伝子検査、猫パルボウイルス遺伝子検査、などがあります。
伝染病検査(犬)
犬フィラリア検査、犬レプトスピラ検査、犬死すテンパーウイルス検査、犬パルボウイルス検査、犬アデノウイルス検査などがあります。
MRIやCT
人と同じようにMRIやCT検査をできる病院もあります。
MRIはあらゆる角度で脳や脊髄に疾患がないかを調べることに適しています。CTは立体3D画像が撮れるのが特徴で骨格、骨や歯、臓器、腫瘍などの把握に適しています。
しかし機器が大きく設置場所が必要になること。操作技術や診断技術を行うスキルが必要となりますので、動物病院にはまだまだ整備が進んでいないのが現状です。
予防接種も行える
定期健診、健康診断時に合わせて予防接種を行うこともできます。
人と同じで年齢を重ねるほど一度病気や怪我をしてしまうとそれを引きずってしまう場合がありますので、如何に健康状態をキープするか、予防していくかが大切です。
健康診断はペット保険が使えない
ペット保険は病気や怪我などが対象となっており、健康診断は自主的な検査にあたるため自費診療になることがほとんどです。
しかし見つかった病気に対してはほとんどのケースで保険を使うことができます。
例えばよく耳にするアレルギー検査などでも、症状が出ていない場合は保険が使えません。症状が出ていて特定のために行うアレルギー検査には保険が適用されます。
このように契約されているペット保険毎に病気や怪我、年齢などの適用範囲などもありますので確認しておくようにしましょう。