目次
ペットフードに潜むリスク
犬猫の健康に悪影響があるリスクとして、食材、製造、輸送、保管などがあります。
食材のリスク
農薬の使用
日本とEUの農薬に関する違いに残留農薬基準や使用制限があります。日本は高温多湿のため防除の重要性が高く、農地面積当たりの農薬使用量が多い国です。ネオニコチノイド、有機リン系などEUでは禁止となっている農薬でも日本では使用されており、使用制限では例えばクロチアニジンでは1,000倍もの差があります。
農薬は品質を上げ、収穫量を上げ、安定供給し、価格を抑えるためにも大切なものです。
そのためどの国でも人に問題がないように設定されていますが、犬猫に与える食材であれば少しでも農薬を使っていないものがいいと思うのではないでしょうか。
抗生物質の使用
畜産についても同様で、EUでは抗生物質は治療以外での使用が禁止され、疾病予防のための抗菌剤の使用も禁止されています。
弊社にもよく、畜産物に抗生物質は使われていますか?という質問がありますが、これは日本では使われているので心配があるのだと思います。
EUの場合は基本的に使われていないので、国による当たり前の違いを感じる部分です。
食肉のリスク
4Dミートと呼ばれる”死んでいる”、”病気”、”死にかけ”、”障害や怪我を負った家畜”の肉などはリスクがある可能性があります。
例えばBSE(牛海綿状脳症)の牛の肉や内臓を食べることで人にも障害が起こることがわかっています。
使用実績の少ない食材のリスク
メーカーにとって使用実績が少ない食材はリスクが高いといえます。
そうした食材を使う場合には犬や猫に対する無毒性量(NOAEL)がわかっている食材であれば問題は少ないと言えますが、犬猫に対する無毒性量(NOAEL)がわかっている食材は必ずしも多くなく、あくまでよく使われている食材の中から選択するという範囲に留まるように思います。
しかし犬猫に対する無毒性量(NOAEL)のデータは公開されているようなものではなく、昔に行われていた動物実験のデータ以外は、今までのペットフード製造の歴史の中で培われてきた部分も多く、それぞれのペットフード工場の研究所などが所有しているケースが多いのではないかと思います。
このため不特定多数の犬猫が食べるペットフードにおいて、食材選びには細心の注意を払う必要があります。
製造のリスク
製造では衛生環境、殺菌状態、異物混入、食材の品質などがあります。
加熱など製造時のリスク
特に加熱に関しては、よりフレッシュさを感じられる生肉の使用や低温調理、非加熱といったペットフードが増えてきたとともに、サルモネラなどによるリコールが増えてきた事実があり、改めてエクストルーダーやレトルトを用いた十分な加熱による殺菌の重要性が高まっています。
このように調理方法や使える食材が増えるのはいいことですが、それによってリスクが多様化していることも問題のひとつです。
異物混入のリスク
食材を梱包していた包材の混入や、野菜についていた虫などの混入が考えられます。
包材は混入を考慮して、麻や紙など植物系の包材をなるべく使用することで対策を行うこともあります。
野菜は何トン、何十トンという量を使用しますので、しっかりと洗って加工しても100%完全に、汚れや虫が少しも残らないかと言われればそうは言い切れない部分もあります。
どのようなことでも、リスクをゼロにすることは絶対に不可能なので、製造者は影響が支障のない範囲まで抑えられるように管理していく必要があります。
食材の配合量のリスク
例えば食塩は摂取量によって死亡する場合があるためリスクとなり得ますが、ナトリウムは必要な栄養素のひとつであり、健康に問題がないように配合される必要があります。
健康に繋がるイメージが強いビタミンも脂溶性ビタミンは体に蓄積されることから、ビタミンAやビタミンDでは上限値が設定されています。
このようにどのような食材であっても配合量は適切に設定する必要があります。
飼い主(家族)ができるリスクの排除
農薬や抗生物質の使用有無を確認する
購入者が農薬が少ない製品や抗生物質が使われていない食材を使っている製品を選ぶこともリスク排除のひとつになります。
EUは農薬や抗生物質に対する規制が厳しく、土地の残留農薬についてまで考慮されているので、土壌に農薬が溜まったり、流出しないように配慮されています。
製造方法を確認する
製造方法を確認することもひとつです。
例えばペットフードを輸入する際に製造方法、加熱方法などの確認があります。まず最初にエクストルーダーを使用しているかを確認されます。それほどエクストルーダーは前例も多く、加熱殺菌を行う上で安全性の高い重要な設備であると認識されています。
そのくらい加熱加工による安全性は重要視されています。
反対に加熱殺菌が不十分となる可能性があるものについては輸入することができません。このことからも世界中の食肉輸入の決まりに対応することができるエクストルーダーを使用することが高い安全性に繋がるものであることは理解いただけるかと思います。
オーブン方式などもしっかりと火を通していれば問題は起こりにくいですし悪いわけではありませんが、例えば低温調理などは、言葉の響きはフレッシュさを連想させて良く感じますが、上記の通り、サルモネラなどによるリコールが増えたのも事実です。
工場の管理認証の取得状況を確認する
IFS認証など、衛生環境に関する認証を取得している工場で製造しているかを確認することもひとつの指針となります。
日本ではようやく食品事業者に必要となったHACCPですが、EUではHACCPも含まれたより安全レベルが高いIFS認証の取得が基本です。IFS認証では第三者の目で審査が行われ、認証を維持、更新していく必要があります。
「法律がなくても人の管理がしっかりしていればいい」と考える方も多いかもしれませんが、法律によって守られることは小さいものではありません。
弊社工場でも定期的に審査があるため、製造ラインを止めてでも審査が行われています。
まとめ
このようにペットフードはできあがるまでにいくつかのリスクがあり、それらをひとつずつクリアすることで信頼されるペットフードを作ることができるようになります。
ご家族(飼い主)自身ができる選択もありますので、気にしてみるといいかもしれませんね。