目次
セレンとは
セレンとは1817年に発見された元素です。体内で合成できない必須微量元素であり、食品から摂取する必要があるミネラルです。
体内の細胞を酸化から守ります。ビタミンEと一緒に摂取することで効果アップが期待できます。
セレンは毒性があるという点が注目されがちですが、ペットフードではコントロールされていますので市販のキャットフードを与えていれば問題が起こることはありません。
セレンの働き
有害物質の無毒化
セレンは水銀、鉛、カドミウムなどの有害ミネラルを無毒な化合物に変化させ、排出する作用があります。
抗酸化作用
セレンは抗酸化酵素の構成成分であり、老化の原因となる過酸化脂質の生成を抑える働きがあります。ビタミンEと一緒に摂取することで効果アップが期待できます。
甲状腺ホルモンの代謝を助ける
甲状腺ホルモンの代謝に関わる酵素の構成成分です。
癌を抑制する
前立腺ガン、肺ガン、結腸直腸ガンの発生を抑えます。転移も防ぐと言われています。
セレンを含む食品
水や土壌に多く含まれるため、魚介類や植物に多く含まれています。
マグロ、ワカサギ、イワシなどはよく言われており、アサリ、ワカサギ、カレイ、タラ、ウニ、ししゃも、ブリ、うなぎなどにも含まれています。
全粒穀物、ネギ、トマトなどの植物にも含まれています。
土壌のセレン含有量に影響を受けやすく、普通に食品を摂取していれば人でもセレンを気にすることはほとんどないかと思います。
魚系キャットフードではセレンの添加をしない商品もある
魚類にはセレンが豊富に含まれていることから、魚系のキャットフード・ドッグフードではセレンを添加せずに製造することができる場合があります。
このあたりは使用している原材料次第ですのでどれでもということではないですが、例えば弊社のサーモンを使用したエリザベスキャットフードではセレンの添加は行っていません。
ペットフードとセレン
セレンは水や土壌に多く含まれる有機質セレンの他、化合物の無機質セレンとしてセレン酸ナトリウム、亜セレン酸ナトリウムなどが使用されています。
セレンは過剰症と欠乏症の両方があるにも関わらず、上限値と下限値の幅が狭いため、調整が難しいミネラルです。
有機質セレン
魚やレバーなどに含まれた有機質セレンの方が吸収率が高いというメリットがあるが、内容量が不安定で、かつ自然の影響を受けやすく、汚染物質の蓄積などが懸念されています。
無機質セレン
化合物である無機質セレンは安定的であるものの、毒物と指定されているため、含有量に制限を設けることで毒物から除外されることとなっています。
- 亜セレン酸ナトリウム〇・〇〇〇一一%以下を含有する製剤(フード1kg当たり1.1mg)
- セレン酸ナトリウム〇・〇〇〇一二%以下を含有する製剤(フード1kg当たり1.2mg)
乳幼児にはセレンを添加する必要性が唱えられている
日本では亜セレン酸ナトリウムは未指定で、その他のセレンを含む添加物も使用が認められていないため、乳幼児では潜在的なセレン欠乏の可能性があり、体重増加不良、脱毛、心電図異常、心疾患、爪の変化などのセレン欠乏症が報告されています。しかしアメリカ、EUでは乳児用調製粉乳やフォローアップミルクへの添加が義務化されています。
日本の土壌はセレンが豊富であると言われ、食事をとれる年齢になれば欠乏症が生じることはほとんどありませんが、自分でセレンを摂取できない乳幼児では添加の必要性が唱えられています。セレン欠乏にはセレンの補充によって症状の改善がみられています。
無機質セレンの方が排出が早く蓄積性が低い
無機質セレンは有機質セレンに比べて吸収率が低く、排出されるまでの半減期も短く、蓄積性が低い。
AAFCO 栄養素プロファイル キャットフード
成長期と繁殖期の最小値 | 成猫の最小値 | |
---|---|---|
セレン | 0.3mg/kg | 0.3mg/kg |
キャットフードにおけるセレンの含有量に最大値の定めはなく、最小値のみ幼猫、妊娠期、成猫のどの期間でも0.3mg/kgを最小値に定めています。
上記の毒物制限では亜セレン酸ナトリウムの場合だと1.1mg/kgが最大値と定められていますので、日本ではペットフードもこの1.1mg/kgに収まっていなくてはいけません。
AAFCOの最小値の0.3mg/kgは亜セレン酸ナトリウムに限った話ではありませんので一概には言えませんが、ざっくりとした範囲では、日本で販売されているペットフードのセレン含有量は概ね0.3mg/kg~1.1mg/kgということになります。
セレンは加熱で栄養有効性が低下する
牛肉を加熱することでセレンの栄養有効性が低下する可能性が考えられています。
ペットフードのような工業製品の場合は安定性が非常に重要であり、できあがったペットフードごとに栄養素に違いができないようにしなくてはいけません。
こうした事情からも添加して安定性をはかる必要があります。
逆に「有機質セレンを使用していますが、製品によってバラツキがあり、栄養が足りていないものもあるかもしれません」では安定性に欠け、また安定性にも欠けるフードとなってしまいます。
銅の時にも紹介しましたが、犬猫は人間の乳幼児と同様に考えられて原材料選びが行われている側面が感じられます。
まとめ
- セレンは必須微量ミネラル
- 体内で合成できないため、食品から摂取する必要がある
- セレンは食品にも豊富に含まれていて欠乏することはほぼない
- 乳幼児などミルク食の場合に欠乏症が見られ、アメリカ、EUでは添加が義務化されている
- 日本では添加が認められておらず慢性的なセレン欠乏がみられるため、添加の必要性が唱えられている
- 化合物である無機質セレンは毒物指定されているが、決められた含有量以下であれば毒物から除外される
体内で合成できないセレン。それでも必須であるため必ず食事から摂取する必要があります。市販のペットフードでも添加が行われていますので欠乏症、過剰症になることはありませんので、追加でサプリなどは摂取しないようにしましょう。