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ビートパルプとセルロース
今回は原材料表示欄の似たような原材料に注意しようというお話をしようと思います。
似たような原材料とはどういったものですか?
例えばビートパルプとセルロースを例に話してみましょう。
セルロースは体内で分解されない完全な食物繊維として使われます。消化されないので腸内を綺麗にし、便秘改善の役割があります。また水を含むと膨らむことから満足感をアップさせる効果もあります。
ビートパルプも基本的には同じです。可消化エネルギーを含み、微生物を利用して多少吸収することもできるものです。そうした理由からもセルロースより負担は少なく、高機能な原材料と考えられています。
両方とも「原材料として悪いと言われてしまうビートパルプ。でも実は高機能で優れた食材だった!?」で勉強しました。
このように似たような原材料が表示されている場合にはその意図を読み解いていきましょう。
ビートパルプとセルロースが併記されていた場合の意味
もし原材料にビートパルプとセルロースの両方が書かれていた場合どう感じますか?
両方入っているんだなということと、なぜひとつにまとめなかったのかが気になります。
その通りです。「なぜひとつにまとめなかったか」が大きなポイントです。まとめないのには大きな理由があります。
例えば鶏肉、じゃがいも、さつまいも、動物性油脂、乾燥全卵、セルロース、ビートパルプ、ニンジン、といった表記の原材料があったとしましょう。
今まで勉強してきた内容から考えると、第一原料が鶏肉で、穀物は入っていないのでグレインフリー。動物性油脂がどういった動物性油脂なのかと、セルロースとビートパルプの含有量が気になるといった感じですね。
その通りです。しかし最初の疑問の通り、例えばビートパルプをセルロースに置き換えたとしましょう。すると「セルロースの表示位置はどこになりますか?」
え!そうなるともっと上に表記される可能性が出てきますね…!!
その通りです。もしかしたらそのままかもしれませんし、乾燥全卵の上かもしれません。動物性油脂の上かもしれませんね。
もしかしてセルロースやビートパルプを上に表示させないために分けて配合しているんでしょうか…
そうした理由も考えられるということです。もちろん何かしらの理由を持って入れているメーカーもあると思います。
どちらにしても今回の場合は少なくとも何個かは上にあがることが予想できますね。
ビートパルプやセルロースを配合しなければ多くの食物繊維は稼げない
原材料のバランスをコントロールするために必要な配分について勉強してみましょう。最近は肉原料を多く配合する流れになっています。例えば第一原料が乾燥肉30%のキャットフードがあるとしましょう。
よく見かける数値ですね。
この場合は肉原料を第一原料にするためには、他原料が30%を超えてはいけません。では食物繊維はどんな食品に多いでしょうか。
サツマイモは食物繊維が多いとよく聞きます!
芋類も豊富ですね。実際にレシピを作ってみるとわかるのですが、ビートパルプやセルロース、ビートファイバーを入れない場合は、まずはひよこ豆やエンドウ豆などの豆類で補うことになります。
豆類を使わない場合は?
豆類を含まないとなれば次点でサツマイモやジャガイモなどの芋類です。しかし芋類は豆類に比べてずっと食物繊維は少ないので、多く配合しなくてはいけません。
他には食物繊維を一番豊富に含んでいるキクラゲや干しシイタケ、海藻類で補います。ただこれらは栄養素の面からも豆類や芋類と比べると補助的な原材料となり、多く配合ができません。
ビートパルプの代替は豆類、芋類、きくらげやシイタケ、海藻類になるんですね。
しかしこれらのどの材料を使っても、食物繊維はおおむね3%程度です。
もしグレインフリーでなければ大麦、オートミール、トウモロコシなどは芋類よりも食物繊維が豊富です。
つまりビートパルプやセルロース、穀物などの食物繊維を使わなければ、あまり多くの食物繊維は稼げないのです。
これは肉原材料が30%での話なので、もちろん肉原料を少なくしたり配合次第で増やすということは可能です。
このように飼い主(愛猫・愛犬)がペットフードに求めているものが、食物繊維の配合量が大事なのか、ビートパルプやセルロースが使われていないことが大事なのかをしっかりと考える必要があります。
サツマイモとジャガイモは似ていて違うもの
他に似ているものと言えばサツマイモとジャガイモはどうですか?
サツマイモはナス目ヒルガオ科サツマイモ属サツマイモ種、じゃがいもはナス目ナス科ナス属じゃがいも種で全く違うものです。
似たような使われ方もしますが、栄養素も違うのでバランスを考えて配合されています。
エンドウ豆、グリーンピース、ひよこ豆などの豆類
豆類は主に植物性タンパク質と食物繊維を考慮して配合します。特にひよこ豆、えんどう豆、あずき、大豆、きな粉、そら豆、いんげん豆は食物繊維が豊富で、上位ふたつのひよこ豆とえんどう豆はキャットフードの原材料によく使われます。
ひよこ豆とエンドウ豆が併記されているキャットフードを時々見ますね!
ひよこ豆とエンドウ豆は栄養成分は大きくは変わりません。このためそれぞれを別々に配合することで第一原料にならないように配合することも考えられます。しかしひよこ豆とエンドウ豆の両方を大量に使用するとないと思いますので、例えば以下のような意図で分けて配合しているかもしれません。
ひよこ豆にはエンドウの13倍近い葉酸が含まれています。貧血や精神疾患の予防、高齢犬猫の消化器系の疾患による下痢にも効果があると言われていますので、エンドウ豆とひよこ豆を分けて配合します。
似ている原材料でも多くは意味があって配合されている
肉を第一原料にしたい場合、わざわざ複数種類の肉を使用すると一種類当たりの配合量を稼ぐことができません。
鶏肉やターキー、サーモン、ラム肉などわざわざコストをかけて様々な種類の肉を配合しているのは、本当に犬猫のことを考えてなんですね。
多少の調整は行いますが、食物繊維以外の原材料は栄養素とコストのバランスを見て選んでいます。
なんでも似ているから原材料の表示順を下げるためだとは考えず、こうした考えもあって配合を決めているということも知っておくといいでしょう。