目次
ビートパルプとセルロース
今回は原材料表示欄の似ている原材料に注意しようというお話をしようと思います。
例えばビートパルプとセルロース
ビートパルプに含まれる食物繊維はだいたい水溶性食物繊維:不溶性繊維が4:1位(20%:80%)となっており、良いバランスであるとされています。水溶性食物繊維は腸内微生物の隠れ家や餌になり、腸内壁へのエネルギー補給源としても使うことができますので、その使いやすさからもペットフード製造でよく使われる原材料です。
セルロースはほぼ不溶性食物繊維です。このため目的としては便秘改善や腸内清掃といった目的で使用されます。
ペットフードは水溶性食物繊維と不溶性食物繊維のバランスがとれていないと下痢になりやすいと言われていますので、微妙な値を整えるために合わせて使用することもあるかと思います。
じゃがいもとサツマイモ
最初に言っておきますと、サツマイモはナス目ヒルガオ科サツマイモ属サツマイモ種で、じゃがいもはナス目ナス科ナス属じゃがいも種で全く違う物です。
このためひとつにしてしまうと誤解が生まれがちなのですが、皆さんのイメージでは似ているものになるかなと思い、解説してみます。
じゃがいもは安価で豊富なエネルギー源となり、加熱しても減少しないビタミンCや食物繊維としても優れています。また、じゃがいものデンプンの糊化という性質を利用してドライフードを固めることにも役立ちます。
更にデンプンの油脂が乳化を安定させる性質もあります。料理をする人ならわかると思いますが、パスタなど乳化は味に大きな影響を与えます。反面、肉の原料に対してジャガイモが多すぎるとGI値を高める原因ともなります。
サツマイモはGI値を上げることなくじゃがいもの代わりのように使用できますが、価格が高いことや、サツマイモデンプンはじゃがいもデンプンの透明度、付着性に劣ります。
それぞれに足りない部分を補い合うことが可能です。
似ている原材料が一緒に配合されている理由
そのペットフードがなにを目的としているのかを見極めることが重要です。
毛玉ケアであればビートパルプで基本的な食物繊維バランスは保ったまま、毛の排出を促すためにセルロースを足したという考え方もできますね。
このように「似ている」と「同じ」は全く違い、その違いを補い合ったり、生かすことでペットフードが作られています。
配合量の記載順を調整するマジック!?
ペットフードの原材料欄では配合量が多い順に記載することが義務づけられています。例えば以下のようなといった原材料の表記があったとします。
鶏肉、じゃがいも、サツマイモ、動物性油脂、乾燥全卵、ビートパルプ、ニンジン
第一原材料が鶏肉のグレインフリーのようですね!
グレインフリーがグレインフリーじゃなくなる?
このとき、サツマイモをじゃがいもに置き換えて、全てじゃがいもにしたとしましょう。
すると「じゃがいもの表示位置はどうなりますか?」
もっと上に表示される可能性が出てきますね!鶏肉の上!?
その通りです。もしかしたら表示位置が変わらないかもしれませんが、上部に移動する可能性の方が高そうですね。
ということは第一原材料がじゃがいもになってしまいますよね…!これって上部に表示させないように分けて配合されているのでしょうか…
そういう可能性も考えられるということですね。
セールス的には第一原材料がじゃがいもではマーケティングが難しいと思うはずです。ではどうするか?という選択ですね。
実際には上記に説明したように、じゃがいもとサツマイモは全く違うものですから、考えられて配合されていると思いますが、レシピ作りではこうした点も考慮していく必要があります。
体に良いと思って多種多様な原材料を使うと表示順が下がってしまうデメリット
犬のことを考えて、ペットフードの主要原材料に鶏肉、ターキー、サーモン、ラム肉と色々な肉を使ったとします。
こうなると一つあたりの配合量は下がってしまうわけですから、じゃがいもやサツマイモ、エンドウ豆などの方が上位表示になってしまう可能性があります。
それを防ぐために、「それじゃターキー、サーモン、ラム肉はやめて鶏肉だけにしようか。コストも下がるし」となったらどうでしょう。
それでは本末転倒ですね…
「表示順をコントロールする」という言い方をしてしまうと悪い方ばかりに目が行きがちですが、このように良さを打ち消してしまう場合もあります。これはレシピ作りでは非常に悩ましい部分のひとつなんです。
私も色々な原材料を使用して作りたいと始めましたから、レシピ作りではこの壁にぶつかりました。何回も何回も少しずつレシピを改良して、やっと初めての納得のレシピ(ロニーキャットフード)ができた時には1年経ってましたからね…苦笑
レシピ作りも2回目以降はもっと早くなるだろうと思っていましたが、結局2作目のエリザベスキャットフードの販売までこぎ着けたのもロニーの発売から1年後でした…苦笑
配合量の記載順を配合量の多い順にしなければいけないということには、思わぬ苦労があるんですね…
このように、一長一短の部分がありますので、多角的に見てみるといいかもしれませんね。
一番優先は栄養素のバランス。理想を形にするということ
忘れてはいけないのがここ。
表示順をコントロールしたいから似ている違う原材料を入れよう!と思っても、それは決して同じ原材料ではないので、最終的な栄養バランスが崩れてしまいます。
多分皆さんも「ペットフードのレシピがこうだったらいいのに」と思うことがあるかと思います。私も全く同じ理想を持って作り始めました。
しかしレシピを作る際に以下のような状態だと「時間がかかった結果、作れない」という最悪な状況を生んでしまいます。
- 栄養バランスに希望あり
- 表示順に希望あり
- 使用したい原材料に希望あり
- コストは決まっている
ではどうするか。
私の場合はまずは大まかにレシピを作り、ひとつずつ徐々に近づけていきました。最後の最後はもう力ずく(笑)で調整し、なかには使いたかった原材料を諦めたこともあります。
ただ1年近くも同じようなことをやっていましたので、満足できるペットフードを作ることはできました。
なので、「似たものが入っているから表示順をコントロールしているぞ!」と思い込まれてしまうとそこまで簡単なことでもないので、今回の記事ではそういう手法、方法もあるんだな位に覚えてもらえるといいかなと思います。
まとめ
- 「似ている」と「同じ」は全く違い、違いを補い合ったり、生かすことができる
- ひとつの原材料を多く配合すると上位表示になってしまうので、煮た原材料に分けることで表示順を下げることができる
- 犬の健康を考えて多彩な原材料を使った場合、ひとつあたりの配合量が減ることから少なく見えてしまう場合がある
- 一番の優先順位は栄養バランス
似た原材料を使用している場合の見方を解説してもらいました!意図的に原材料表示順を調整するという悪い部分が見えるように思いましたが、その反対もありました。その商品がなにを考えて作られているのかを見定められるようになると良さそうです。