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グレインフリーキャットフードとは?
グレインフリーキャットフードとは、穀物を使用していないキャットフードのことです。先に解説したように、猫はほとんど穀物を消化することができません。このため穀物を使用しない、より猫の生態に近づけた食事を作った結果、グレインフリーというレシピが生まれました。
動物性タンパク質が豊富
グレインフリーキャットフードの特徴は穀物の代わりに、肉原料が豊富に含まれていることです。これにより動物性タンパク質が豊富になります。猫はタンパク質からエネルギーを作り出すことができるため、グレインフリーの豊富なタンパク質と脂質から体作り、維持に十分な栄養をしっかり補給することができます。
消化吸収率が高い
ほとんど消化できない穀物がなくなったことで消化吸収率が高まり、少量でも効率よくエネルギーを摂取できるようになります。穀物入りの場合は必要な栄養素を得るために、多く摂取しなければならず、内臓の負担を招いていました。
しなやかで強靱な体作りに役立つ
猫特有のしなやかで強靱な体を作り上げるには良質で豊富なタンパク質が必要です。人も筋トレを行う時には良質な動物性タンパク質が必要ですが、猫の場合は人よりもさらに良質で豊富なタンパク質が必要になり、肉の原材料のクオリティが高い傾向にあるグレインフリーは猫にぴったりの食事といえます。
ミネラルの消化吸収に有利
例えば鉄の場合、動物性食品にはヘム鉄、植物性食品には非ヘム鉄が含まれています。ヘム鉄は還元型でそのまま活用ができるのに対し、非ヘム鉄は還元しなければ活用することができません。還元するためにはビタミンCが必要ですが、ビタミンCは銅の吸収を抑制してしまいます。
このように肉食動物にとってより自然な形で摂取するためには、できるだけ動物性食品からミネラルを摂取することが望ましいと考えられます。
肉原料が増えると価格が上がる
グレインフリーにするために穀物を使わず肉ばかりで製造すると原価が高くなり、定価が上がってしまいがちです。どんなにいいキャットフードでもあまりに高額では売れません。売れないキャットフードを作ってくれる業者はありません。そのため、製造業、販売業者はグレインフリーにする際には価格とのバランスも考えて作る必要があります。
猫の内臓の作りに合わせたグレインフリー(穀物不使用)
動物食性の猫は「穀物をほとんど消化できない内臓の作り」になっています。理由は猫の消化器官の作りが雑食の人間や犬とは構造が違うからです。
とはいえ、下記でも解説しますが、ペットフード用に加工された穀物は猫も全てではありませんが一定数活用することができると言われてきていますので、必ずしも穀物が活用できないというわけではありませんが、猫はそもそも穀物をほぼ食べないので、心に留め置く部分ではあるかと思います。
草食動物が食べた植物が胃腸内に残っている半消化した植物は積極的に食べまるようです。
猫は大腸が短い
猫は大腸の消化管が身長の4倍程度しかなく、雑食・草食動物に比べてかなり貧弱です。これによって穀物など植物が消化しにくくなります。
盲腸がほとんど残っていない
草食動物は盲腸が非常に発達していて植物由来のセルロースを分解することができます。
しかし猫には盲腸がほとんどないため、セルロースなどを消化吸収することができません。多少はすい臓で消化、吸収できますが、唾液など他で消化吸収できていないため、負担が大きくなります。
乳糖を多く消化できない
猫の内臓は炭水化物や牛乳に多く含まれる乳糖(ラクトース)は大量に消化できない構造になっています。炭水化物を多く与えると下痢や不調を招く原因になることがあります。
タンパク質からエネルギーを作り出せる
その代わりに小腸が発達し、動物性タンパク質や脂肪の消化吸収に向いている作りとなっています。さらに猫の肝臓は窒素化合物を分解する酵素の働きが非常に高く、このためにタンパク質をエネルギー源の一部として使うことができます。人間や犬は、タンパク質は筋肉の維持や成長など体の成長に使い、エネルギー源は炭水化物から取っていますね。
だから穀物が消化できなくても大丈夫なんですね。
猫は肉から必要な栄養素をしっかりと摂取できる仕組みになっているからです。
昔の日本ではごはんにお味噌汁をかけた「ねこまんま」をあげていたイメージがあります・・・
猫にとってはいい食事とはいえないかもしれませんね。でもその時代はまともなキャットフードも多く流通していなかったと思いますし、ペットに対する考え方が今とは全く違っていて、体の構造などを知っている人もいなかったと思います。
因みにα化したお米なら多少は消化できますのでその点は100%アウトということでもないかと思いますが、ねこまんまの場合は味噌の塩分が多すぎますので与えないでください。
穀物も加工の仕方次第で消化、活用ができる
乳糖やセルロースなど根本的な問題はありますが、ペットフード用に適切に処理された穀物の多くは、全てではありませんが一定数活用することができると言われるようになってきました。
これは製造側からすれば以前から検証されているので穀物も使われてきたわけですが、新しく台頭してきたグレインフリーはより良い形なのかという疑問を検討する飼い主も増えたことで、一般にも表面化してきたことという流れがあります。そうした流れの中でインターネットが発達し、新しい情報でもすぐに見つけられるようになったという部分でもあるかもしれませんね。
飼い主としても今まで穀物入りのキャットフードを食べて問題がなかったのに、本当にグレインフリーの方がいいのか?って疑問を検討するわけですね。
私はこうした検討はあってしかるべきで、いいことだと思っています。当たり前だと思われていたことでも再検討は必ず必要ですよね。
そして適切に処理された穀物の消化に関しては、ペット栄養学会やロイヤルカナンの研究所でも公表されていますので獣医学的な見解として考えていいかと思います。ただ植物性タンパク質の一部はアンモニアなどに変換されることで腎臓に負担がかかるという見解がありますので、動物性食品から栄養を摂取する方が良いと考えられてきています。
例えば人間もそのままの米は消化できない
因みに人間もお米そのままの状態ではほとんど消化することができません。このため糊化することで人間も消化することができるようになります。
ペットフードではそのまま粉砕して使用するものもあれば、消化できるように一度炊いてから使用しているものもあります。他にはトッピング的な要素でお米の粒を発泡や加工したものをそのまま入れているメーカーなどもあります。どのように加工しても含まれているセルロースなど難消化性の食物繊維は消化できません。
このように猫の穀物の消化に関しては加工方法が大切です。
穀物による血糖値の上昇のリスクについて考える
グレインフリーについては上記のような点もあり、穀物の有無は飼い主によって選択すれば良いと考えていますが、血糖の部分については知っておいても良い項目かと思います。
オリジンにペットフードオブザイヤーなどの認定を行っているGlycemic Research Institue®での見解は見逃せません。「ペットフードには高血糖成分を避けるべきである」という見解が示されており、穀物はペットフードの成分としては血糖を上げる食品であるので避けるべきであると考えられています。
トウモロコシや穀物の摂取は、犬や猫だけでなく、人間の血糖値にも直接影響します。高血糖成分は血糖値を過剰に上昇させ、てんかん、甲状腺機能低下症、アレルギー、イースト菌感染症、癌および糖尿病のリスクを高めます。犬用及び猫用のペットフード中の一次(高)レベルの高血糖穀物は許容できません。これらには、小麦、トウモロコシ、米、玄米も含まれます。
出典:Glycemic Research Institute®
こうした見解もありますので、穀物については飼い主自身で使用の有無を考えられると良いかと思います。
合わせてこちらの記事もご参考いただけましたら幸いです。
グレインフリーでも芋類の含有量に注目
さらに詳しくグレインフリー(穀物不使用)について解説していきたいと思います。
穀物の代わりに芋類を配合
穀物の代わりに原材料として使われるのが「肉類」と「豆類」と「ポテト類」のジャガイモやサツマイモです。
炭水化物は猫にとって不必要な栄養素ではないと考えられているので、適量含まれている分には問題ありません。しかし猫は炭水化物を一定量は消化することができますが、多くを消化できる構造にはなっていないため、あまり多すぎると消化器官に負担をかけてしまいますので、配合量が重要です。
炭水化物の含有量には定めがない
実は炭水化物の含有量は定めがありません。あくまで私の見立てではドライフードで考えると、40%程度に抑えられていれば問題がないと考えています。
そもそもキャットフードを製造する場合、タンパク質や脂質の計算が行われますので炭水化物だけが多くなるということはありません。
それを目指して作ったなら作れると思いますが、グレインフリーキャットフードにおいては第一原料をジャガイモやサツマイモにしたものはないと思われますので心配はいらないと思います。
穀物に「豆類(大豆)」を含むか含まないかは国の認識で違う
これもまた重要な点ではありませんが世界的な定義から考えるとこんな考え方もあります。
実は「穀物」には「豆類を含むか含まないか」という2種類の見解があります。
そもそも穀物という定義がわかりにくい部分があり、日本では「穀物」に狭義では豆類を含まず、広義では豆類を含むとしており、見解がわかれるところです。
しかし世界的には穀物に豆類は含んでいません。このため多くのグレインフリーといわれているキャットフードには豆類が使われています。しかし豆類を使用していても、大豆は使わない商品は多いです。
使われている豆類はほとんどエンドウを使用
例えばグレインフリーと宣伝しているジャガー、ニュートロ ナチュラルチョイスの穀物フリー、オリジン、ウェルネス コア、NOW(ナウ)、go!、アカナ、ヤラー、ティンバーウルフ、ソリッドゴールドもグレインフリーとして販売されていますが、豆類が含まれています。
そしてそのほとんどがエンドウを使用しています。豆類の中でも大豆はアレルゲンになりやすいので注意が必要ですが、エンドウは低アレルゲンで豊富なタンパク質を含んでいるためです。
アレルゲンとしてはエンドウより鶏肉などの方が強い
低アレルゲンでもアレルゲンだと考えた場合ですが、むしろ鶏肉など主原料のアレルギーの相談の方が多いです。
三大アレルギーの大豆アレルギーと、エンドウアレルギーは全くの別物。エンドウ豆は乳児でも食べられる食材です。豊富なタンパク質、食物繊維として配合されていることがほとんどです。
肉が多いグレインフリーはリンの配合量にも注目
肉原材料にはリンが多く含まれているため、グレインフリーの場合はリンの量は確認してもよいと思います。
総合栄養食の場合は規定があるため、グレインフリーだからリンが多いということはありませんが、規定内で若干多めの設定になっているものもあるかもしれません。
グレインフリーで穀物アレルギーを避ける
グレインフリーを選ぶ理由にアレルギー対策や嘔吐改善があります。
穀物アレルギー対策
穀物が原因となるアレルギーは決して多くありませんが、中でも小麦はアレルギーの元になる可能性がやや高めです。アレルギーの原因はタンパク質なのでそれだけタンパク質が豊富な食材とも言えます。
キャットフードなのにアレルギーが出ることがあるんですね!
人間も穀物やそば、シーフードなどでアレルギーが出る方もいますので、食べられるからアレルギーが出ないわけではないのは猫も同じです。
注意してほしい点はグレインフリーだからアレルギー対策になるわけではないという点です。
アレルギーはタンパク質が原因のため、穀物よりも猫本来の主食である鶏肉や魚でアレルギーが出るケースの方が多いです。更にいえばノミや花粉などの方が食品アレルギーよりも多くなります。
上記からもあくまで穀物アレルギーを疑う場合はグレインフリーキャットフードを活用してみてください。
嘔吐改善
原材料に穀物が使用されているキャットフードはグレインフリーキャットフードと比較して摂取量が多くなる場合がほとんどです。
単に食べる量が多くなるので胃腸に負担をかけたり、刺激して嘔吐に繋がっていたということもあります。
ミネラルなどは動物性食品から摂取がおすすめ
またミネラルなどは動物性食品から摂取した場合はそのまま活用できるものが多く、植物性食品の場合はビタミンCなどを使用して違う成分に変換しないと活用できない場合があります。そもそも猫科の動物は肉食がメインですので、こうした栄養素の活用という面でもグレインフリーのキャットフードは適切であると考えられます。
おすすめのグレインフリーのキャットフードは?
ズバリ!おすすめのグレインフリーキャットフードを教えてください!
日本で手に入りやすいグレインフリーのキャットフードは数が少ないのが現状です。私がオススメするなら当たり前ですが、弊社のグレインフリーキャットフード、ロニーキャットフードとエリザベスキャットフード進めたいところではあります(笑)
身近で手に入りにくいものも含めるとハッピーキャットのラ・キュジーヌのカニンヘンはちょっと変わったウサギ肉と牛肉レシピです。ジウィピークのエアドライ・キャットフード NZグラスフェッドビーフも牛肉をメインに使用したグレインフリーですね。
豆類を含まないグレインフリーのキャットフードは少ないんですね。
一応グレインフリーというものの理解のために紹介をしただけですので、豆類に関して気にする必要はないと思いますが、豆類を含まないものもありますよ。例えば今紹介したハッピーキャット(約6,000円/1.8kg)、ジウィピーク(約3,000円/400g)など価格に幅がありますので、色々なグレインフリーキャットフードを見て、選んでみるといいと思います。
まとめ
- グレインフリーとは猫の内臓の作りに合わせたレシピ
- 動物性タンパク質が豊富
- 消化吸収率が高い
- しなやかで強靱な体作りに役立つ
- ミネラルの消化吸収に有利
- 血糖値上昇のリスクに配慮
グレインフリーのキャットフードがまだまだ多くはないという点が驚きです。穀物の血糖値を上げてしまうという点については考慮してみてもいいのかもしれません。